2012/01/02

年頭のご挨拶

今年は昇竜の気で皆様幸せでありますことを、心から願います。

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2011/10/03

ヒーロー中のヒーローだぞ

「あの中には、まだ彼の一部が、彼のエッセンスが、囚われているんだ。連中が彼から作り出したあの男の中に、バッキー・バーンズの人間性の欠片が残ってるんだよ」スティーブ・グラント・ロジャース(キャプテン・アメリカ)

『キャプテン・アメリカ:ウィンター・ソルジャー』エド・プルベイカー/スティーブ・エプティング 翻訳:堺三保(小学館集英社プロダクション 2600円+税)

 畏友堺三保くんより、献本を頂戴した。休眠を挿みながら70年近く続くアメリカン・コミックの中核的ヒーロー『キャプテン・アメリカ』の最新翻訳版だ。献本に感謝しつつ、むさぼるように読ませて頂いた。

 第二次大戦中からのキャプテン・アメリカの宿敵であり、元ナチスのエージェントだった、レッド・スカルがニューヨークで射殺された。彼は既に自らの肉体を捨て、キャプテン・アメリカことスティープ・ロジャースの細胞から作ったクローン体に自らの意思を転写して生き延びていたのだが、兇弾はその不可侵の肉体を易々と貫き、レッド・スカルの息の根を止めていた。
 S.H.I.E.L.D.の司令官ニック・フューリーは、それをソ連時代から噂されていた絶対証拠を残さない幻の暗殺者「ウィンター・ソルジャー」の仕業と断定。しかも、複数の目撃情報・古い捜査資料の中に眠っていた監視カメラ情報まで、S.H.I.E.L.D.の持つ膨大な資料を徹底的に再検索した結果、「ウィンター・ソルジャー」は、第二次大戦末に死に別れた筈のキャプテン・アメリカの相棒、バッキーことジェームス・ブキャナン・バーンズである疑いが濃厚になって来た。
 

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2011/09/14

モリサワPasport2011始末記だぞ

 Macintoshで使っているモリサワのフォント年間ライセンスシステムMORISAWA PASSPORTを、2011版にアップデートした。
 しかし、初夏に旧マシンから新マシンへ、移行アシスタントを使って環境を移行していたため、モリサワに登録してあるマシンと、今使っているマシンが違うため、思わぬ手間を食ってしまった。
 今後のために、詳しい記録を残す。

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2011/08/05

今度は侵略戦争だぞ!

(はい、地球は狙われています。私は彼らチルゾギーニャ遊星人の侵略を阻止するために地球に来たんです)ジェミー

『MM9―invasion― 』山本 弘( 東京創元社1700円+税)

 前巻ラストの、巨大少女怪獣ヒメと、神話伝承から推定される以外では初めて観測されたMM9規模の巨大怪獣クトウリュウとの戦いから5年の歳月が流れていた。ヒメは人間サイズに戻った後、以前同様筑波の気象研で暮らし始めた。
 しかし既にヒメは20メートル級まで巨大化することが判明している。この身長20メートルの巨人型といえば、想定体重100トンを越え、MM5クラスである。法規では、普通に歩き回るだけで都市に被害を与え得るこのクラス以上の怪獣は、発見次第即刻排除することになっている。しかし、ヒメは会話こそ出来ないが、人間の幼児程度の知能を持ち、かつ人に懐いており、さらにクトウリュウ撃退の立役者でもある。世論、専門家の意見、国会の論調、すべてが二分されたまま平行線を辿ったが、戦いから3ヶ月ほど後にヒメは全身を分泌年液で覆い、ミイラのような姿で仮死冬眠クリプトビオシスに入ってしまった。そして次にクトウリュウ級の神話怪獣が人類に害を及ぼす何百年か先まで眠り続けるのではないかと推測されたまま、現在に至る。「今のところ害は無い」という判断が大勢を占め、ニスを塗った木彫か蝉の抜け殻のようになって固まったまま、ヒメは気象研に保護されていた。このヒメの観察・研究のためもあり、案野悠里(あんのゆり)は気特対から気象研に移動していた。
 しかし、いかに研究が行き詰まっているとしても、かつてヒメを攫ったCCIのようなカルト・テロ集団がヒメを狙うことは今後も考えられる。ヒメは、より安全で、万が一突然目覚めても周囲に被害を及ぼす心配の少ない、北海道の自衛隊基地へ遷されることになった。
 しかし、そのヒメを載せたヘリが気象研から大型機に積み替える中継基地の百里に向かう途中、霞ヶ浦上空で隕石と衝突して消息を絶った。しかも、目撃者によるとそれは宇宙から落下して来た隕石とは思えぬ低速でヘリと衝突している。
 気象庁特異生物対策部部長、久里浜 祥一の脳裏を「宇宙怪獣」という不吉な語がよぎった

 待望のMM9(エムエムナイン)第2部が、東京創元社から登場。今度は宇宙からの侵略である。

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2011/08/03

伝説の男が40年ぶりに浮かび上がって来たぞ

 ダン・クーパー事件と云う伝説的ハイジャック事件があった。今のところ犯人逃亡のまま未解決に終った世界で唯一のハイジャック事件として知られている。

 1971年11月24日、ワシントンD.C.発シアトル行きノースウエスト航空11便(ボーイング727機)が、経由地のオレゴン州ポートランドを午後4時35分に飛び立った際、ダン・クーパーという偽名で搭乗した男が客室乗務員に「爆弾を所持していることと身代金20万ドルとパラシュート4つを要求する」旨の書かれた脅迫状を手渡し、隣席に座らせた。別の客室乗務員が機長に連絡、爆弾の存在を訝しがった機長はダン・クーパーの席まで来て真偽を確かめようとしたが、爆弾らしき赤い管と導火線と覚しきものが入ったブリーフケースの中身を見せられて、管制官にハイジャックを宣言。

 午後5時45分にシアトル・タコマ国際空港に緊急着陸。身代金およびパラシュートと引換えに、犯人は乗客全員と客室乗務員2名を解放。午後7時45分にシアトルを離陸したハイジャック機は、ダン・クーパーの要求でネバダ州リノに向う。高度1万フィート(約3000m)に維持したうえで車輪を出し、フラップの角度を15度下げて飛行させたダン・クーパーは、離陸後30分と経たない午後8時11分ごろに、機の後部昇降用階段を空中で開き、パラシュートで現金と共に脱出した。

 追尾していたF-106 デルタダート2機は、夜間で視界が利かず、パラシュートは追えなかったが、降下地点から考えて、犯人はポートランドの北約50km、アリエルの郊外に降り立ったと推測された。しかし、当局による18日間の捜索にも拘らず、ダン・クーパーの足取りは杳として知れない。
(Wikipedia情報より神北が補筆・要約)

 事件から8年と少し経った1980年2月13日、ワシントン州バンクーバー郊外のコロンビア川付近にキャンプに来ていたある家族が、その時の身代金の一部(20ドル紙幣290枚分)を発見、犯人は川に着水して溺れたか、寒さで死んだのではないかという説が囁かれた。また、用意された4つのパラシュートの内一つは開傘しない地上訓練用ダミーだったので、犯人は墜落死したという説もある。

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2011/07/27

『時空改変空母 越後』だぞ

「……内閣総理大臣、田中角栄閣下。我らが帝国海軍第一機動艦隊は、ただ今を持ちまして閣下の指揮をお受けいたします。どうぞ、何なりとご命令下さい」帝国海軍第一機動艦隊 小沢治三郎中将

『時空改変空母 越後 大和の帰還』佐原晃(学研 歴史群像新書 933円+税)

 1974年6月10日、オイルショックや公害問題に揺れていた日本に地震が起こった。しかし、それは我々の知る地震とは大きく異なり、日本全国が一斉に揺れ、その後、湧き出した叢雲が外の世界との連絡を妨げてしまった。
 そして、6月22日、海上自衛隊の護衛艦〈はるな〉は、「あ号作戦」(マリアナ沖海戦 1944年)からの帰途にある連合艦隊と接触した。
 30年の時間を越えて、太平洋戦争まっただ中の西太平洋の日米両軍と、1974年日本が出会った。時の宰相田中角栄は本国と連絡が付かなくなっている国内の米軍基地を急襲・懐柔し、強制接収した兵器を次々と日本の勢力に組み込んだ。かくして、米軍空母ミッドウェイは、越後と名付けられた。

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『帝国亜細亜大戦』だぞ

「タイは失われた領土を回復したい。我々はその領土を通る援蒋ルートを切断したい。つまり利害は一致しているわけだ」参謀本部第八課謀略班班長 門松正一中佐

『帝国亜細亜大戦 紛争勃発!』高貫布士・高嶋規之(経済界リュウノベルズ 933円+税)

 1940年夏。バリでヒトラーが暗殺された世界が舞台。日独の軍事同盟は成立せず、日本は英国との同盟を維持したものの、ドイツを介しヴィシー政権と交渉して仏領インドシナに軍隊を派遣し、中国国民党軍の命脈「援蒋ルート」を絶つ作戦は頓挫してしまう。このまま泥沼のような中国戦線に戦力を取られて行くわけにはいかない軍部は、亜細亜でまったく新しい作戦を展開する。しかしそれは、日本軍を直接動かすものでもなければ、日本の戦争でもなかった。

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2011/07/25

息子達の物語だぞ

 数日前、ある友達が Facebook で、久々に『グーニーズ』を観たと云う日記を書いていた。その中で、「息子達の世代の話を作るっていう話があったがどうなったんだろう……」と言う話があった。
 あれ、子供達が成長して親になってからの話、あったんじゃなかったっけ?……と思って気がついた。それは違うお話だった。マンガ『SOS大東京探検隊』(大友克洋 1980年)とアニメ『新SOS大東京探検隊』(監督:高木真司 キャラクター:大友克洋 2007年)だ。
 そもそものマンガは昭和50年代に、マンホールから地下に入って、都市化の波のせめぎ合いで東京地下に造りはしたものの、そのまま利用法も無く放置されている地下道や地下空洞に住み着いている不思議な人たちと交流する話である。このマンガをベースに、それから二十数年後の2006年の夏、オヤジ(マンガ版の主人公。今は、美少女フィギュアとかを人に変わって綺麗に作る仕事で食っているダメオヤジ)が小学生時代に書いた「大東京探検記」という、マンガ版の冒険の後に記録したノートを見つけた息子達が、再びマンホールから地下に入って行くというお話。

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2011/02/19

書評『コップクラフト』だぞ

「ファルバーニ王国とユナイテッド・ネーション国の協約に基づき、ミルヴォア騎士および準騎士はドリーニ世界での正義の執行を保証されている。いと高きフィエルを保護するため。貴君らには私の探索を手伝っていただきたい。ファルバーニ王の名のもとにこれを要求する」ティラナ・バルシュ・ミルヴォイ・ラータ=イムセダーリャ・イェ・テベレーナ・デヴォル=ネラーノ・セーヤ・ネル・エクセディリカ

『コップクラフト DRAGNET MIRAGE RELOADED』賀東招二(小学館 ガガガ文庫2009年11月23日発行 600円+税)
『コップクラフト2 DRAGNET MIRAGE RELOADED』賀東招二(小学館 ガガガ文庫2010年06月23日発行 590円+税)
『コップクラフト3 DRAGNET MIRAGE RELOADED』賀東招二(小学館 ガガガ文庫2011年01月23日発行 571円+税)

 15年前、太平洋上に突然現れた超空間ゲートによって地球は、別の世界と繋がった。『レト・セマーニ』。中世期のような封建社会を持ち、魔術が存在し、人間の他に妖精などが棲む、天動説的な平らな世界。そう惑星ですらなかった。空を巡る陽や月や星はあるが、我々が知る衛星や恒星ではない別の物らしい。セマーニは人類の科学や論理が全く通用しない世界だったのだ。
 ゲートから僅か60マイル程の太平洋上に突然誕生したカリアエナ島は、かつてはセマーニ世界のファルバーニ王国南部のカリアエナ半島だった物が、ゲートを超えた地滑りをし、地球側へ出てきた物だ。
 この島に作られたサンテレサ市は、両世界からの移民200万人で成り立つ国境都市である。
 しかし両世界が繋がることによって、セマーニからは魔術の産物を、「レト・ドリーニ(蛮人の地)」と彼らが呼ぶ地球からは化学薬品やハイテク機械を、こっそり運んで儲けようと言う密輸業者が後を絶たない。
 さらにタチの悪い国連安保理によるセマーニ国家間の争いに対するPKF派兵により、ゲートを超えて逃げ出してきたセマーニ人難民(あまりの異質さに「宇宙人」という侮蔑のスラングが生まれた)が発生した。

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書評 『うちのメイドは不定形』だぞ

「あなたにお会いするために、あなたのためだけに永久凍土の下からはせ参じました! どうか末永くおそばに置いてください!」テケリ・リ・テケ・テケ・リ・ル・テケリ・テケ・リ・ラ・ル・ラ・テケリ・テケ・テケリ・リ・ル・ラ・リ・テケリ・リ 『うちのメイドは不定形』静川龍宗 原案:森瀬繚(PHP研究所 スマッシュ文庫2010年06月23日発行 514円+税)  新井沢トオルのもとに、南極に調査に行っている父から突然送られて来た荷物には「荷物の中身をお湯につけて三分間待つこと」と書かれていた。その通りにすると、お湯の中からエメラ...

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書評 『這いよれ!ニャル子さん6』だぞ

「……分かんないんだよ、自分でも。お前が好きかどうかなんて。まだ会って二週間くらいしか経ってないし。でも嫌いじゃ、ない、と思う。何だかんだで、僕を守ってくれてるし」八坂真尋 『這いよれ!ニャル子さん6』逢空万太(ソフトバンククリエイティブ GA文庫2010年12月31日発行 600円+税)  ニャル子さんもついに6巻目。驚くべきことに今回、騒ぎの張本人に、今まで出て来なかった邪神やら何やらの新種族キャラが登場しない。そのかわり、クー子の従姉のクー音が八坂家にやって来る。クー音はさすがクー子の従姉だけあって、強烈なス...

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書評『博物戦艦アンヴェイル2 ケーマの白骨宮殿』だぞ

「おれはウルサールの道化だもの。なんでもしていい代わりに、何も持てないことになっている。お金も、家も、名誉もね」金鈴道化師ジェイミー・ティンクティキ 『博物戦艦アンヴェイル2 ケーマの白骨宮殿』小川一水(朝日新聞出版 朝日ノベルズ2010年11月30日発行 1000円+税)  ラングラフ王ウルサールの命により、太古の博覧王メギオスの伝説を追って1万アクリートの彼方まで航海し、誰も知らなかった未知の土地を踏査し、伝説に語られたメギオス驚異「金毛氈」を王港レステルシーへと持ち帰った戦艦アンヴェイル。しかし、宿敵オノキア...

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書評 『《呪肉》の徴 グウィノール年代記1』だぞ

「トリナさまは私を助けて下さいました。ですから、今度は私がトリナさまをお助けする番です」メルグリナ・ディオレイド 『《呪肉》の徴 グウィノール年代記1』縞田理理(中央公論新社 Cノベルズファンタジア2010年11月25日発行 900円+税)  人を初めとする動物、野菜等の植物など、ありとあらゆる生き物に「呪肉」と呼ばれる表皮の突然変異が多発しているダルモリカ公国は、二脚竜に乗る剣士達が守る中世の国だ。そして、中世期にありがちなこととして謎の奇病呪肉は忌み嫌われ、畸端検査官が呪肉を宿した作物・家畜を検査し、必要に応じ...

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書評『もののけ本所深川事件帖 オサキ鰻大食い合戦へ』だぞ

「王子稲荷には、おこんと呼ばれる狐の親分が棲んでいて、江戸の外から魔物が入って来ないように、江戸の町を守っているんだよ」先代の番頭 『もののけ本所深川事件帖 オサキ鰻大食い合戦へ』高橋由太(宝島社 宝島社文庫2010年20月21日発行 476円+税)  オサキというのは「尾裂狐」などと書く、オサキ狐、クダ狐、イヅナ等と呼ばれるが、呼称が違うだけで同じであるという説や、似て非なる物とする説等がある。日本古来の民間信仰にに根付いた、多くは小ネズミ程の小さな子狐の姿をした妖怪で、いわゆる使い魔のように使いこなす術者が居た...

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2010/11/04

汝の正体みたり!……だぞ

 図版屋と言う商売柄、友人から献本を頂戴したり、今回は関わってないが前に地図を入れたシリーズの新刊を頂戴することはよくある。本当は全てここに書評を上げねばならないのだが、どうも僕は前世がオオナマケモノ(メガテリウム)な上になまけ妖怪火間蟲入道に若い頃から取り付かれ、ヤメタランスと友誼を結ぶナイスガイなので、ついついずるずると先延ばしにしてしまうことが多い。いや、ホント申し訳ない!

 とはいえ、普通は、小説やアニメ系の本であることが多いのだが、今回珍しく研究書を戴いた。まあ、研究書といっても大学の教科書のような謎の催眠電波を発し続けるハードカバーではない。新潮新書である。

 『もののけの正体——怪談はこうして生まれた——原田実(新潮新書 720円(+税))

 歴史研究家であり、歴史の中に意図的に織り込まれた「偽史」や妖怪等を得意なフィールドとする原田実さんの近著だ。
 第一章の開幕からお題は、安永7年の江戸で評判になった見世物小屋の「鬼娘」だ。大人気で「ニセ鬼娘を置くインチキ見せ物小屋」が幾つも出来、10年も経ってから「あの鬼娘は今」式の黄表紙本が出回ったと言うから、1976年のオリバー君騒動のような大騒ぎである。(ニセ鬼娘とかいうものの、本家本元「本物の」鬼娘がいったい何であったのかは、まぁ、判りはしないのだが……。(^_^;))

 この江戸を席巻した第一次鬼娘ブーム(ちなみに第二次ブームは1981年に始まる)をもたらすほど江戸期にはポピュラーな存在になっていた「鬼」について、古書を巡り、『出雲国風土記』に始まり、「オニ」と「ワニ」は人を食うものとして同じ語源から発したのではないかと言う語源説を挿み、平安期には既に追儺の儀式で、災い=鬼を祓うプロトコル(儀式手順)が完備され、政治システムに圧力弁として組み込まれているという話へと続く。

 そしてこの鬼を筆頭に、天狗、河童、幽霊、狐狸、化猫……、と、お馴染みの顔ぶれが、日本人の精神構造や善悪観、生活の有り様を規定して行く枠組みの中に、次々と組み込まれて行く小気味良い筆運びが続く。
 また、広くは日本文化のうちでありながらも独自の文化血脈を色濃く残す琉球や蝦夷アイヌの民話にある妖怪にも話は及び、妖怪と日本人との長い長い付き合いを顥かにして行く。こうして解かれると、妖怪への理解も深まり、日本人の精神風土も、道徳観も生死観も、いっそう良く見えてくるという作り。

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