« イラストレーターCSが落ちる時……だぞ | トップページ | 池袋に勤労青年を見たぞ »

2004/01/25

高嶋くんの新刊が出たぞ

『蒼き星のメリクリウス』著:高嶋規之/イラスト:赤井孝美(集英社スーパーダッシュ文庫)571円+税 発売。
あわせて、作家の 〜物書き屋・高嶋規之のホームページ〜 もオープンしている。
 前作の『オービタルレディ』から一年半以上待たされた人。本屋さんへ走れ!

 さて、『……メリクリウス』だ。
 本人はただの高校生のつもりでいるが、実は星間帝国の王子のひとりだった主人公の元に、従姉の王女が押し掛け女房。帝国転覆を狙って暗躍するテロリストにも命を狙われ、戦闘集団が学校に襲来。日本の小さな街は突如、世界、いや銀河系中から、注目されることに! 全くのマイペースの従姉と、騒動を面白がっている級友たち、自分はさっさと皇位継承権を放棄して外野から息子にエール「だけ」を送る無責任親父。様々な思惑に翻弄される主人公、伊吹悠(高校一年生、15歳)の明日はどっちだ!
 ……と書くと、夜中過ぎに民放でよく放映されている類いの、大きなお友達御用達の願望充足設定アニメのようだ。あっというまに、銀河中の各皇家王家から、8歳から25歳までの年格好も容姿も様々なフィアンセが12人現れて、普通の一戸建てにむりやり雑居生活をはじめそうな気がする。皇帝陛下から高校卒業までに誰かひとりに絞れと命じられたり、酔った年上のフィアンセが裸同然の格好で家の中をうろつくのに困りながらテレたり、一番若いフィアンセと二人で捨て犬をめぐる大騒動に巻き込まれたり、クリスマスイブの夕刻に偶然本命のフィアンセとイルミネーションの街を散策することになって、後で残り全員と関係ない級友たちからさんざん責め立てられり……。そんな話が延々といつまでも展開しそうである。
 しかし、そこはそれ、高島規之という作家である。そちらの方向に転がっては行かないから、ご安心を。
 ハチャメチャな大騒動の奥に、少年文学(ジュヴナイル)として、必要不可欠なものがちゃあんと詰まっている。大騒ぎの衣を一枚剥いでみると、最近多いそうしたアニメよりは、『都市と星』や『銀河市民』『スターキング』といった、古典SFの方に遥かに近い。自分が何者なのかを知らされた時に、少年は何を望み、何を決断するのか。その一点に修練して行くクライマックスは、前半のお気楽極楽ぶりを否定するものではないが、それだけでは終わらない力強さがある。
 赤井孝美の描く清楚なキャラクターたちも、よいイメージを与えている。
 ちょっと飛ばし過ぎていて、もっと話を膨らませてやって欲しいキャラクターが散見するのが勿体ないが、もし、ラブコメというシチュエーションが嫌いでなくて、面白い小説をお探しなら、損はさせない。是非お読み戴きたい。

|

« イラストレーターCSが落ちる時……だぞ | トップページ | 池袋に勤労青年を見たぞ »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 高嶋くんの新刊が出たぞ:

« イラストレーターCSが落ちる時……だぞ | トップページ | 池袋に勤労青年を見たぞ »