我を呼ばうる声がする……だぞ
TBSラジオで、サタデー大人天国!宮川賢のパカパカ行進曲!!という番組がある。どんな番組かと云うと、「◯◯で△△しちゃったバカ大人」というのを募集する企画が中心の番組だ。たとえば、「ITで取り返しのつかないことをしちゃったバカ大人」なんかだと、……スナックで、「IT関係に勤めているんだ、普通に使うパソコンなんて簡単さ、シロートの悩みの99%は俺から見れば初歩以前だよ」と威張って言ったら、美人ママさんに「ウチのパソコン見て」と声をかけられた。喜んで家に付いて行った、と、そこには、ヤのつく自由業とおぼしき怖そうな旦那さんが居て、「頼むぜ、先生」と低い声で……。でも、その家のマシンはiMac、どうしてもおかしくなっている理由が判らず、いつまでもケーブルを抜いたり挿したり……なぁんていう、おマヌなエピソードを電話で募集し、本人に喋って貰うのだ。
このパカパカで昔あった話で、「花粉症なのでマスクをしている。痩せようとゴム引きのサウナスーツを着てジョギングしていたら、暖かい日だったので朦朧として来た。と、目の前で、自販機の前の男と話していた女の子がこけそうになっている、助けようと寄って行ったら、そこで脚がもつれて倒れ込んでしまった。そのまま気が遠くなる。悲鳴を上げられたような気がする。やがて警察が来て、「おまえなんだろ、わかってる、判ってるんだよそうなんだろ?」といいながら、パトカーに乗せられた。」という話。結局この人は、暑い日にフードをかぶってマスクまでし、女の子に襲いかかろうとしたチカンとして逮捕されかかっていたらしい。そういう痴漢がこの辺りに出没していたのだ。お巡りさんも、てっきりこの人がその常習犯と思い、「おまえが、あの事件やこの事件の犯人なんだろ、わかってる、判ってるんだよそうなんだろ?白状しちゃえよ」と言っていたのだそうだ。結局、無実だという事は理解してもらえたらしいが、女の子は「ゼーハー荒い息をしたマスク男が覆いかぶさって来た」といい、少し離れたところの自販機でジュースを買おうとしていたらしいカレシは殺してやると息巻いているらしい……という話があった。
怖いのは、この朦朧とした中で、「お前なんだろう」という曖昧な問いに彼が思わず肯定していたら、「お前が犯人なんだろう?」「はい」と自白した事にされていたという事だ。
話は変わるが神北は、17〜18年前、不思議な体験をした事がある。残業で終電近くになって職場から戻り、実家の自室に帰り着いた時に起こった。ババっと服を脱ぎ捨てて、寝間着に着替え、ベッドにバタンと倒れ込んだ。と、何か部屋中がぐるぐる回っているような目眩を感じた。部屋中が、大の字に寝た自分のヘソあたりを中心とした大きな渦になって、下向いて引きずり込まれるような不思議な沈降感だった。目が回る事、立ちくらみ、金縛り、そうしたものに付き物の振り回されているような感覚がない。ただただ、体が回転しながら沈んで行くような印象だった。
こういう感覚は始めてだったので、何か面白くなって暫く身を任せていると、どこからとも無く、切迫した若い女の声で、「判ってる? 判っている?」と訊いて来た。もちろん、何の事か明確には判ってないが、なんだか、判っているさと云ってあげたい懐かしさがあった。全てはゆっくり回りながら沈み込む夢の中のような世界での出来事だ。
でも、何か気になるところがあってこう答えた。「判らない、判らないよ!」
神北としては、説明を求めたかったのだ。判る事なら判ってやろうと思ったから、今自分がよく判ってないことを伝えたかった。すると、その自分の声で、スっと夢から覚めるように、現実界に引き戻された。
自分の声で結界が裂けでもしたように、スッと状況がクリアになり、そこは一瞬にして、不思議な回転する世界から、日常通りの自分の寝室に戻っていた。
取り残されたのだな……と判った。なんだか、行きそびれてしまったらしいのだ。それ以来、十数年経つが、ついぞ「御呼び」は掛からない。
「お前が犯人なんだろう?」の「はい」ではないが、もし「判ってる」と答えていたら、今頃自分は、どこで何をしていたのだろうか。ちょっと「惜しかったかな」と思わなくもない、休日の昼時である。
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