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2004/05/24

『リターナー』を観たぞ

 『リターナー』を観た。今更ながらだが、やっとDVDを買って来たのだ。

 この文章は、先の方のネタバレ警戒線から先にネタバレを含みます
 未見の方は、ご注意下さい。

SF映画的には前作にあたる『ジュブナイル』は、『NHK少年ドラマ』に相通ずるもののある少年向けSFドラマなので、結構気に入っているのだが、この2作目は残念ながらこれまで未見だった。やっと観る事が出来てホッとしている。
 お話しは、単純。小さい頃アジアのどこかの街で浮浪児だった主人公ミヤモト(金城武)は、子供を誘拐して内蔵を売りさばく手荒な仕事をしている中国マフィアの一員になっている日本人ヤクザ(岸谷五朗)に親友を殺されている。この復習のため日本に渡り、友の仇の情報を求め、ある港街で中華系裏社会の便利屋をしていた。ミヤモトは、凄腕のガンファイターであり、組同士の揉め事の解決人でもあった。ある外来の新興勢力が人身売買用の少女たちを大量に貨物船で運び込んだ。この仕事の最中遂に十数年ぶりに親友の敵ミゾグチと巡り会ったのだが、その銃撃戦の最中、不思議な少女と出会い、これを助けるためミゾグチを取り逃がしてしまう。
 少女の名はミリ。急いでイブスキ山へ行って欲しいとミヤモトに懇願。遊んでいる閑はないというミヤモト。すると少女は、ミヤモトの頸動脈あたりに小さな絆創膏のような物を貼付けると、それと同じ物を貼り付けた酒の瓶を、小さなライターのようなコントローラーのボタン1つでバラバラに爆破してみせた。それは高性能爆弾。少女の言う事を聞かないと、いつでもミヤモトの頸動脈を吹っ飛ばせる。勝手に粘着部を剥がそうとしても吹き飛ぶし、少女が死んだり少女からコントローラーを奪ったりして生体信号が届かなくなっても、同じように爆弾は作動するという。
 しぶしぶイブスキ山に向うミヤモト。しかし、ミリは、イブスキ山で、探していた物が既に運び出されていることを知る。
 失意の中、引き返す二人。ミヤモトの問いにミリーが初めて真実を語った。
 2084年、人類の版図は、チベット高地の一角だけに縮小していた。異星の侵略者ダグラとの、長い戦争の末、追い込まれて行ったのだ。記録によればこの戦争は、2002年の10月に、イブスキ山に墜落を装って侵攻した最初のダブラから始まったのだ。
 ミリは、その最初のダグラを、活動を開始する前に葬り去る事で、歴史を変えるため、過去から送り込まれた工作員だった。
 ん〜。逆ターミネーター美少女ドラえもん。まあ、簡単に言えば、それだけのことなのだが、シチュエーションの作り方、カタキ役のミゾグチ(岸谷五朗)のこれでもかと云わんばかりの狂犬っぷり。木樹希林の情報屋。それ等がピタッと納まっていて、日本でもこれだけちゃんとした映画が取れるのだなぁという感じがする。
 実は、しばらく前に、SF大会のゲスト交渉について行って、この『リターナーの』山崎貴監督とは、ちょっとだけお会いした事がある。この時のお話しから、山崎監督が、かなり濃厚なSF者の血を持ち、彼ほどSFに濃くはない周りの人たちをリードして、日本映画ではあるまじきSFべったりに仕向けて行った経緯が、見えるようで、面白い。

— — — — — — — — — ネタバレ警戒線 — — — — — — — —

 その中で、さすがに使えなかった話と、判り易くするために、SFモノの心を折ってでも入れなくてはならなかったエピソードが、1つずつある。
 1つは、ダグラの謎についてだ。謎の侵略宇宙生命体ダグラ。チベット語で悪魔を意味するこの言葉で呼ばれる宇宙人は、じつは本当に漂着者だった。しかし、墜落したパイロットは、異星生物を研究したがった科学者たちの無茶な取り扱いにより、死亡しかかっていた。この漂着者がなぶり殺された事が星間戦争の真の原因だったというのが、映画のストーリーである。しかし、本当は山崎さんはもっと上手い話を考えていたんだろうなぁという気配がある。
 早耳の中国マフィアのボスに言われて、完全武装の傭兵部隊を率いて異星技術を盗みに来たミゾグチと異星人の接触。たとえばここで異星人が死んでいて宇宙船が次の主としてミゾグチを選んでいたら、もしくは、ミゾグチの狂人的な征服欲が異星人の脳に影響を与えて同化していたら、……と考える。破壊衝動と征服欲の塊であるミゾグチを主とし、ミゾグチ流の荒っぽい征服欲を満たすために、戦い続けているのがダグラだったとしたら、徹底した殲滅戦が80年以上も続く戦争の執拗さにも納得が行く。
 しかし、「単純に敵は宇宙人という事にしておいた方が良い、子供向けだし、金城ファンの女の子たちには難しい事は判らないから」という間抜けな声があったのではないのか?……無論それは想像の域を出ないのだが……。

 あともう1つ。クライマックスの後、全てが終わって、ミッションを達成したミリが薄ぼんやりとなって消えて行く、なかなか感動的なシーンがある。この意味は深い。ミッションが終わったから自動的に帰ったとも考えられるし、新しくなった変更後の歴史ではミリは生まれなかったので消えてしまったとも考えられる。つまり、消えてしまったが世界は守ったと云う形だ。
 しかし、実はその後、ミリはもう一度登場する。というか、その後のミリだが、ミヤモトにとっては2日前のことだ。一旦未来に帰り、世界の救い主に借りを返すため、ミヤモトのコートの心臓の位置に装甲板をこっそりと仕込んで行くのだ。
 しかし、未来が変わっているならば、ミリはそんなことをしに来られない筈だ。もし、彼女とミヤモトの話に続きがあるとしたら、実際には、帰る事が出来なくて、2002年に残ったミリとミヤモトの話でなければならない。帰った(この時代から消えた)ということは、もう同じミリは居なくなった事に他ならないのだから。
 しかし、ここいらへんは、特にストーリーの中心に絡む事ではないし、その割に説明が厄介だ。敢えて、未来からもう一度ミリが来れるという事は、未来世界が安泰だという意味で理解してもらおうと云う、制作意図だろう。

— — — — — — — — — ネタバレ解除線 — — — — — — — —

 まあ、こだわるのはSFファンぐらいだろうからいいんだけど。何より、こうしたSFテイストのある作品が、ちゃんとした予算と人気俳優を使って作り続けられる。ことが、なにより重要なのだ。
 しばらく前にお会いした時の話なので、今どうなっているのかは判らないが、山崎監督は、今、新作の企画にGOサインが出そうだというお話しだった。また、SFマインド一杯の力作を撮り上げて頂きたい。

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コメント

「リターナー」が映画館で上映されている時に、「サイン」を見てしまったんですが、SF的にヘボ映画だったので意気消沈して帰ってきたのを思い出しました。
 後で「リターナー」を見て、もう一度、あの時リターナー見ときゃ良かった感を強めたもんです。
 ホント、山崎監督には今後も大注目です。

投稿: とんび | 2004/05/28 09:06

 トンビさんいらっしゃい。擬娘の権威(^_^;)に覗いてもらえるとは!
 ほんのちょっと話させて戴いただけですが、山崎さんからは、ちゃんとしたSF読みのオーラが出ていました。現在、神北の、「好きなだけお金使っていいから好きな映画を撮れと言ってみたい監督」ナンバーワンです。

投稿: 神北恵太 | 2004/05/28 10:55

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