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2004/05/10

大統領が爆殺されたぞ

 ちょっと、あまりの荒っぽさに愕然としている。チェチェンで大統領が爆殺された件だ。大統領・国会の議長、ロイターの記者など、今のところ7人が死亡。怪我は60人以上と云うから、いくら一塊に人が集まっていた場所での爆発とはいえ、「漏らさないように大きな爆弾」で、回り中を巻き込む事をいとわずに吹き飛ばしたのだろう。
 チェチェンというのは、不勉強な神北でも知っているぐらい、独立運動と阻止派の対立の激しいところだ。というのは、黒海とカスピ海に挿まれたこの山岳地帯は、それ自身埋蔵資源の宝庫であり、かつまた、中東からの石油パイプライン等が通る場所として、旧ソ連時代から、ロシアの生命線の1つなのである。
 当然、ロシアは自国内に留めたいし、仮に独立しても連邦という枠の中で完全に監督下に置きたい。しかし、その重要度故にソ連時代からの圧政が厳しく、住民達は、特に宗教活動として弾圧を多く受けたイスラム教徒を中心として、自主独立を望む声が強い。その中で、ロシアは兵を出し、チェチェンは内戦状態となっている。何年か前にモスクワの劇場で観客を人質に取ったチェチェン解放派の破壊活動は、この、ロシアの動きが行き過ぎであるとして、故郷を守る事を標榜するグループによって行われたものだ。
 ここでもまた宗教だ。
 しかし、1つ間違ってはいけないのは、本来、イスラム教というものは、特に戦闘的な宗教ではないのだ。また、このチェチェン問題に留まらず、宗教的な理由から戦争が起こる事はないのだ。
 例えば十字軍。これは、豊かな通商国家であるペルシアに貧しい国から山賊が攻め入って、暴れ回った以外の何物でもない。これは、豊かな穀倉地帯をどちらが押さえるかと云う事で争われた、フランスとドイツのアルザス・ロレーヌ地方の取り合い合戦に見られる、隣の柿を掠めるような地続き感覚の戦争ではない。全く経済的に別の系まで出向いて、利をかっさらうと云う、大規模な広域経済侵略なのだ。
 簡単に云えば、「金のために戦争を始める奴は多いが、神様のために戦争を始めようと考える奴はごく僅かだ。ただ、戦争が始まった後、神様は、いい旗印になる」ということだ。
 たとえば、近年の宗教活動の多くは、経済格差や文化の差異をちゃんと解決する道を取らず、宗教の差というカタに当てはめ、その上弾圧したことに起因する。反動で、押さえつけられた側が立ち上がったというのが、現状に一番近い。イラン・イラクを中心に、宗教意識がばあっと高まった背景には、対ソ拠点としてのこの地域を手なずけようとして、云う事を聞かない連中を宗教を理由に差別する事を煽ったCIA等の工作があると、多くの政治学者・軍事学者・ジャーナリスト等が指摘している。この、仮に宗教と云う理由付けをされただけの経済的対立が、本物の宗教対立として動き出すのに20年から30年掛かったが、納まるのにはどのぐらい掛かるのか。
 爆殺されたチェチェンの大統領というのは、ロシア寄りというか、ロシアの傀儡政権の領袖だった。その、他の宗教を禁じる共産主義教マルクスレーニン派と、地場のイスラム教徒との宗教対立に見せかけようとするフィルタを外してみると、この戦争も、自分の国の地の利で商売をしたい人と、それが羨ましいから横取りに来る人と云う、十字軍以来つづく、広域経済戦争の構図から、一歩も外に出ていない事が判る。
 しかし、テロは容認するわけにはいかない。ましてや、回りを巻き込む事が容易に予測できる爆殺などという方法を平気でとるというのは、明らかに常軌を逸している。この方法は返って自分たちから正義を失わせる行為であって、敵を利している。反政府活動・独立運動をするものは、そこをもっとよく考えるべきであろう。
 だってそうだろう、ヒトラーやムッソリーニのような熱狂的カリスマではなかったのだ。傀儡政権の顔など、替えがいくらでも利く。周りの人を巻き込んで自分たちの評判を落としてまですげ替える程の価値はないのだ。こんなことで、無差別爆破犯・犯罪テロ集団に落ちていては、独立を世界から認められる日は来なくなってしまう。
 このケンカの下手さが、あんたたちが負け込んだ本当の理由じゃないのか?

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