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2004/06/15

ネットは社会そのものだぞ

 今日、ネットを回っていて読んだ、fowlesさんの徒然なるままに適当に、あるいは読書日記というBLOGの書籍の影響についてという記事に、 こんな記述があった。

長崎佐世保のカッター少女事件ではある小説の影響が取り沙汰されたけど、それって言い換えれば「読むと人を殺したくなる呪いの本」がある、と言ってるのと同じことだよねえ。オカルトの域ですよ。

 うむ。確かに。
 こうした事件の起こるたびに、「何が彼(彼女)をそうさせたか?」という、「遠因探し」に奔走するのが、マスコミの恒例となっている。しかし、本当に、人生のミスリードを誘うようなワナが、アニメや小説、マンガなんかの中に入っている、ネットの深奥に潜んでいると真剣に考えている人がいるかというと、そうは思えない。

 これに関しては、石黒直樹さんの歯車党日記本質を捉えられないマスコミ、それに踊らされるネットの厨房が、奇麗にまとめている。

 ネットというものは、人と人を繋いでいるのであって、結局そこにあるのは社会そのものである。ネットの中に何かを書くという事=社会に何かを発表する事であり、そこには当然、発表者としての責任が発生する。そして発表された物の影響は波紋となって広がり、発表者の企図したものであれ思惑を離れたものであれ、何らかの反応と云う形で発表者に返って来る。
 しかも、ネットは別にリアルな通常社会と隔絶されている訳ではなく、それは一体になって繋がっているものだ。なぜなら、双方の構成要員は同じだからだ。リアル社会はネットに影響を与え、ネット社会はリアルに影響を与える。たしかに、ネット社会に存在していない人はいても、リアル社会に存在していない人はいない(筈だ)から、正確にネット=リアルとはいえないが、ここまで多くの人、多くのマスコミがネットとリアルを繋いでいる以上、その人自身が双方に繋がっていなくても、影響を受けずに棲む訳ではない。また、ネットを制限しようという事も、実は無意味だ。だってそうであろう? 禁じられるモノこそ面白いのだ。

 それを考えたら、本来すべきはネットの制限ではない事は、誰にでも判るだろう。ネット=社会であるならば、そしてそれが一体のものであるならば、影響を途絶するためには、ネット社会と共にリアル社会とも縁を切らなければならない。そうしなければどこかで還流が返って来るからだ。
 しかし、リアルな社会と縁を切って生きる事は出来ない。そんな人間は存在しない。
 であれば、ネットを使う以上守るべき、ネットリテラシーや、マナーといったものを、ちゃんと解説する事はもちろんのこと、ダークな面も含めてネット社会と云うもの(=社会そのもの)との付き合い方を、遠喩や安易なカテゴライズで言葉を濁さず、正面切って教える教育を用意すること、それこそが重要ではないか。

 まず、人間は酷いものだ。残酷なことを言うし、訳も無いカテゴライズをしておいて、自分をその中で優位なカテゴリーに入れて優越感に浸ることが好きだ。……ということを理解する。その上で、優越カテゴリーに入っていると安心した時、既にその人は馬脚を現していること。言葉を発する方は、受け手が感じるほどのインパクトを企図していないので、酷いことを言われたとしても真面目に聞いてやる必要はなく、聞き流しておけばよいこと。……という処世術を身に付ける。それだけで、ネット社会だろうがリアル社会だろうが、かなりの場でへこまされずに渡って行くことが出来る。
 世間を丸く纏めようと云う道徳教育、もっと有り体な言葉で云うとネットマナーの習得などというものは、この世間との間合いの取り方を憶えた上で、始めて役に立つことだ。

 そういう基本が判ってない人たちが、子供にネットを使わせようとすると、べからず集のようなマニュアルを作りたがる。もちろんそれはそれで、実現出来れば良いネット社会が作れるかもしれない。しかし、それに従わない無法者メンバーが居た時に、非常避難としてどうすれば良いか、自分が被害を受けずに済むかという、本当に重要な事は書かれていない。
 キッズgooに、インターネットを安全(あんぜん)に利用(りよう)するための、ぼくのわたしの「7つのルール」がある。これはかなり良く出来た指針ではあるものの、上で上げたような、無法者に対する防御までは踏み込めてない。あらゆることに「最終的には親か先生に相談」という形で、大人に判断を仰げとはしてあるものの。これでは一次ショックを受けることから子供をカバーできていない。
 柔道を始めて真っ先に教わることは、礼儀としての礼であり、安全策としての受け身だ。それは、試合の場に於いて相手と自分は互いに敬意を抱き合う対等な立場であること、自分の身を最低限自分で守ること、の二つを真っ先に教えられるという事でもある。
 べからず集に陥ったマニュアルの編者は、この観点が不足しているのではないだろうか。

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コメント

トラックバックありがとうございます。顔が見えないネットだからこそ礼儀正しくありたいものです。

投稿: fowles | 2004/06/15 17:37

fowlesさんいらっしゃい。

 「読むと人を殺したくなる呪いの本」の喩えが、あまりにも的確で判り易く、マクラに使わせて頂きました。有難うございます。

投稿: 神北恵太 | 2004/06/15 18:41

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