言い換えるぞ
国立国語研究所という組織がある。国語のいろいろな問題を検討しているが、ちょっと大丈夫かと言う時空自在(ユビキタスの言い換えと云う触れ込みの珍造語)なぁんて言葉を提案して来る、どうにもこうにも税金の無駄遣いにしか見えない、随分不思議な団体だ。
もちろん、国語の研究でちゃんとした定量計測を行う為に雑誌「太陽」に着目して、全文DB化の為に著作権者を探すなんて言う、親方日の丸でなければやってられないような面倒そうな仕事もしているようだが、やはり時空自在だからなぁ……。
とりあえず、第一回(2003/4/25) 第二回(2003/11/13) 第3回(2004/6/29)の3つのページに、50音順で言い換え用語が出ているので、見てみて欲しい。
みなさん、この言い換え用語を見て、どう思われたであろうか。もっともだ、どんどんこの調子でやれと思った方は意外と少ないのではなかろうか。
どうも、おかしな語が多い気がする。
今回の第三回分の言い換え語だけ見ても……、
アカウンタビリティー 説明責任
そうか? 開示義務のほうが相応しいんじゃないか? 言いわけかも知れない「説明」じゃなく、ありのままの「開示」が、行う事の意義としては正しいんじゃないのかと思う。
イニシアチブ 主導/発議
イニシアチブは、素直に主導権で良いんじゃないかな? 会議でも、スポーツでも、たいていの場面でそのまま主導権という言葉で言い換えられると思う。
ガバナンス 統治
「統治」という言葉は企業や組織に向かない気がする。それは、統治者と云うのが搾取をすることを前提にした日本的な「代官」のイメージに繋がるからなのかも知れないが。
単にこのガバナンスの言い換えは、運営とか組織運営でいいんじゃないのか? これも、ルールを作り、周知し、徹底した運用をすると云う意味では同じだし、日本語には馴染み良い気がする。
ツール 道具
別に、言い換えても良いが、言い換える要があるのか? 道具と言い換えるのも良いが、「ツール」や「ツールボックス」「ツールパレット」といったパソコンのソフトで使われる用語を言い換えることは、かえって混乱を呼ぶように思うぞ。このまんまの「ツール」で困る人が居るとも思えないし。
デジタルデバイド 情報格差
これはアカラサマに略し過ぎ。単なる情報格差はどの新聞を取っている・取っていない、知る権限の有無という事でも起こる。ここでいうのは「電子情報の」格差なのであろう。ちゃんと「電子情報格差」と呼ぶべきだ。
ドメスティックバイオレンス 配偶者暴力
父親が子供を殴るのは、思春期の子供が親を殴るのは、入らないのか? 「家庭内暴力」という言葉がちゃんとある中で、こんな新語の必要性がどこにあるのか判らない。
ブレークスルー 突破
これまた厄介なものだ。基本的に「ブレークスルーが起こった」というよりは、「そこに、ブレークスルー(ポイント)があった」という方が多いように思う。であれば、「突破」ではなく意訳ではあるが「糸口」だろう。
……てな感じだ。
よく判らないモノの代表は、上記の「ツール」だ。パソコンをはじめとする情報機器等のことを、使いこなすという意味合いも込めて情報ツールと呼ぶのを、道具に置き換えると「情報道具」……うぷぷぷ。笑える。情報と言うモノと道具という言葉の持つ単純明快な大工道具や茶道具といったイメージと、どうしてもミスマッチ感がある。その上、日本語に言い換えようが、外来語のままだろうが、2音節・3文字の言葉であることに変わりがない。
あまり、言い換えるメリットが見つからない。
それより、フォーラムという言葉の言い換えを断念したのがよく判らない。こいつは、単に懇話会でいいんじゃないか? テーマについて突っ込んだ討議をする場のことだから、オープンな場にせよ、クローズな場にせよ、固いテーマにせよ、気楽な雰囲気の談話にせよ。共通して懇話会と呼んで問題はないと思う。
国立国語研究所ではこの大三回言い換え用語に関して意見募集もしているので、良ければあなたも、明日から自分が使うことになる言葉に対し、意見を出して欲しい。
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