相手は自分の鏡だぞ
2004年8月7日の土曜日は駒八会だった。駒八秋葉原店の地下店舗に潜っているうちに、サッカー日本代表がアジアカップの決勝戦を3-1で制していた。
神北は、サポーターではなく単なるにわかサッカーファンなので、顔を見てもそんなに選手の区別もつかないしましてやそれがどんなにスゴいひとたちなのかも良く知らないが、やはり、勝てば嬉しい。
サッカー日本代表チームとしての抱えていた課題やその解答・今後の展望に関しては、朋友橋本純のBLOGの日本が3-1で中国破り、3度目のV アジア杯サッカーという記事に詳しいので、ご覧戴きたい。あの勝利が日本代表にとって何であったのかが、シロウトの我々にもよく判るように、平明にして端的に書かれている。
がんばれ、日本代表。
生命の危険を感じるような大変な状況下で、応援に出かけ、声を枯らしたサポーター諸君と、その声援に見事に応えたイレブンに、拍手と感謝を捧げよう。
ただし、注意しておきたい。
中国のサポーターによる国歌斉唱への不敬、日の丸焼き捨て……等々の国辱行為についてだ。
たしかに、この行為は、国際マナーにもとる、愚劣極まりない行為だ。主催団体、開催国政府は、責任を持って再発防止をすべきであり、そうでなければ、今後、安心して国際試合・国際大会など、開催出来るものではない。
しかし、我々日本人は国対国と云う意識において、外国に対する、ちゃんとしたマナー感覚を本当に持っているのであろうか? 無論、サッカーの試合で応援に来る国々の選手やサポーターを攻撃しようと云う人は、まず居ないだろう。そんな稚拙な国際感覚では、先のワールドカップ日韓共催などまともに運営出来た筈が無い。しかし、サッカーを離れ、スポーツの世界の外に出た時、我々は、今回見た中国のサポーターの体たらくを、嗤い、非難するだけのちゃんとした国際感覚を持っているのだろうか。
北朝鮮によるミサイル開発や拉致事件が明るみに出た時の、朝鮮学校の学生、特に女学生に対しいくつか起こったチマチョゴリ切り裂き事件を考えてみて欲しい。その実行犯はもちろん、言語道断の暴漢でしかない。が、このニュースを聞いたとき、貴方はどう思われただろうか? 貴方の周りの方はどう言う反応を示したであろうか? 被害者少女への心配とは別に、どこかで残酷な心の動きは無かったか? 「仲間がやられたのだからやり返せ」というような稚拙な敵討ち観を一切持たずに、徹頭徹尾犯罪者を憎めたろうか?
我々日本人も、今回の中国のサポーター達と同じようにその心の中に、冥い獣性を飼っている。国と、その国出身の人々をどこかで混同する稚拙な国際感覚を持っている。
いや、日本人に限らない。それが、同胞意識の悪い意味での発露だとすれば、間違いなく、人間の普遍的な考え方・感じ方であろう。
しかし、そういう地域的な同胞意識を他者排撃に繋げるメンタリティーは、現在の狭くなった世界で発現させるには、物騒過ぎる。同胞愛と他者排撃を連携させない自覚。それが、今、東アジアには必要なのだと思う。もちろん、欧州にも、北米にも、世界中の全ての地域にもだ。
かつて、その必要なものを欠いた日本の軍隊がアジアを席巻した。それを理由に、全く同じように自覚を欠いている中国のサポーター達は、それと同じことをしている。彼等が自覚を欠いたまま続けるなら、その先に待っているものは、かつて日本の軍隊の先に待っていたものと同じだということを、ちゃんと考えてもらいたい。もちろん、日本人もそれについて、もう一度ちゃんと考えるから。
それが、21世紀の流儀だろう。
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コメント
内容が整理されていて非常にわかりやすくてよかった
自分も気をつけたい
投稿: tumanimo | 2004/08/08 21:30
アジア杯の決勝戦、凄かったですね。試合内容もさることながら、中国人サポーターの狼藉もたいしたもんです。もちろん、神北さんが書かれているように、これは他山の石にしないといかん話ではあるんですけどね。日本人も、以前、「ドーハの悲劇」直後、イラク大使館に侵入して国旗を引きずり下ろした前科がありますし。
ただ、今回の一件で私が感じたのは、「中国共産党が、民衆を制御できなくなっているんだな」ということ。15年ほどまえ、1ヶ月ほど中国を一人旅したことがあるんですけど、その当時は中国共産党の民衆支配は完璧といってよい感じでした。もちろん、そのなかでも人々は、隙間を見つけては面白い商売をしていたんですけど。
中国にもネットが普及して、政府が制御できないまま、ニュースなどが流布されている状態なのでしょう。
いままでは中国共産党の出方だけを気にしていれば良かったのですが、そろそろ中国民衆、一人一人を考えて行動していかねばならんのだ、と思いましたわい。
投稿: 安達裕章 | 2004/08/10 09:39
tumanimoさん、安達さん。どうも。
SHANGHAI QUEEN 日中文化交流情報サイトと云うサイトは、いわゆる二カ国翻訳BBSで、日本人と中国人が交流出来るようになっているのですが、そこに変なスレッドが立っています。
http://jp.shanghai-q.com/jcbbs/read.php?b=his&t=3753&p=1
どうやらこれは、「日本人が中国をシナと呼ぶのは、我々に苦痛だ」と云う主張をする中国の人と、「そう思うなら、日本人にIKE-MENなんていう罵声を浴びせるな。間違っても今度の北京のサッカーの決勝戦で選手にIKE-MENなんて言うなよ」という日本の人が、ワイワイ(? ギスギス?)やっている所です。
英語のチャイナ、フランス語のシノワについては何の問題も提起せず、その日本式発音であるシナに過剰に反応する中国人の心情は、私にはよく判りません。が、それにしても「そうか、そんなに日本人が厭がるなら、何回でも言ってやるぞ、IKE-MEN、IKE-MEN、IKE-MEN……」なんて書いている稚拙さを見ると、この中国の人、北京から南膳キロも離れた地方都市の中学生かなんかで、ネット以外で外につながる手段を全く持ってないのでは……と思ってしまいます。
日本の厨房と、中国の厨房(こりゃ、「中房」って呼ぶべきですかね)が、最新の言語解析学の成果である翻訳チャットを使って、ネット上で一番目につく低レベルな口喧嘩を続ける。寒い時代です。
こういうものに対応出来ない事に関しては、中国共産党だけでなく、日本政府も極めて情け無いと言うか、リテラシーがないというか、適応力が無い上に判断がかならず頓珍漢ですから、なかなか、スパッと綺麗な解決と云うのは難しいでしょうね。
まあ、生半可な知識は持っているものの、遊び半分で、やっていい事と悪い事の区別がつかないのが厨房ってものなんですがねぇ。
投稿: 神北恵太 | 2004/08/10 11:10