また安藤忠雄かっ…だぞ
今年の日本SF大会の会場になった、長良川国際展示場。今週、陸続とネット上に掲載された50あまりの大会レポートの殆どが、使い辛い事を指摘しているこの厄介な建物。意味も無く曲面や斜めの配置を用い、空間を無駄に消費する、とっても複雑でまともに役に立たない今そこにある産業廃棄物みたいなものだった。建築に関してはシロウトの神北が見て、これだけ欠点の見える建物を認可した岐阜の役人は、全員クビにしろと言いたい。
行きたいところに行けない事、自分がどこに居るのかよく判らない事に関しては、増設に増設を重ねた温泉旅館に勝るとも劣らない。自分が知事なら、この設計プランを持って来たその日に、県民侮辱罪で投獄してやりたくなるような典型的駄目建築だ。
パンフレット等に誇らしげに書いてあるものを読むと、このスカポンタンな建物は、安藤忠雄とかいう名前だけはよく聴くが、その建物に関しては、いい評判を一切聞かない、ありがたい一流建築デザイナー様の手になるモノらしい。ちなみに、日本全国をマヌケ時空に引きずり込む安藤忠雄の建築物に関しては、ココに詳しい。都道府県別になっていて、それによると、有り難い事に神北出身の三重県や、現在居住している埼玉県は、タダオに穢されてないらしい。ホっと一安心である。
ちなみに、岐阜の長良川国際展示場の問題点は、ざっと見に以下のようなものがある。
1.無意味な昇り降りがやたら多い
平屋でない以上、階段がある事は致し方ないが、各階がフラットな構造になっておらず、途中で1段だけ段差があったり、階段を数段だけ上がったり下がったりしたところにトイレがあったりする。もちろん、全てのトイレは、最初から設計されていたものであって、途中から必要が在って増設したが、構造上、水回りの気候を床下に収め切れずに止む無く高床になったようなものではない。
2.曲面がやたら多い
意味も無く、曲面の壁がある。別にどちらかに曲面を必要とする部屋がある訳ではない。どちらかと云えば壁のどちら側も曲面になっていない方が有利である場合が多く、変な形に曲面の壁を抱えて収納力の無い倉庫や、無意味に踊り場だけ広がった階段等、曲面壁の所為で建物内にムダが溢れている。
3.廊下が異様に狭い
建物内の無駄な面積のしわ寄せが、廊下に来ている。ホワイエ構造以外の廊下は、表動線裏動線の別なくどれも狭く、常に混雑の要因となる。しかも、それに輪をかけるのが、完全解放でも90度しか開かない会議室の扉。180度開けば開放も楽だが、90度しか開かないということは、廊下の幅の半分を会議室の扉が塞いでしまうということ。つまりこれは、人通りに耐えられない廊下なのだ。
4.デザイン優先の危ない構造
3階まで吹き抜けになった2階珈琲ラウンジから3階会議室群へ直行するための、階段とそれに続く細いテラス様の空中回廊には、手すりが付いている。この手すりが10メートルほど伸びているのだが、腰高のガラス板の上にアルミ円筒状の手すりが乗った形をしている。パッと見に縦の構造材が無いので、手すりが自力で浮いているような、とても格好の良いすっきりしたデザインに仕上がっている。が、この手すり、軽く手で押すと、ガラスがたわみ、10センチ以上ガクガクと揺れるのだ。珈琲ラウンジで何か企画をしているのをここに鈴なりになって覗き込む人を想像して、寒気を感じた。
市民ギャラリーの1階から4階まで抜けたやたらと高い吹き抜けの、4階部分にある意味の無い円形回廊が、立ち入り禁止で眺めるだけに指定されているのは、同種の手すりが使われているため、会館側が運用で事故防止のために制限しているのではないかと想像される。
5.案内板の欠如
かくも複雑怪奇な構造にも関わらず、現在位置を示したり、行き先を確認するための館内図や地図が、極めて少ない。こういう掲示は運用と思われるかも知れないが、複雑な構造を作った以上、設計段階からこうしたヒューマンエラー回避策としての掲示スペースや表示板が各所にふんだんに盛り込まれていてしかるべきだ。
この無茶苦茶な建物は、当然、公共施設である。県民の税金で建てられている。岐阜出身の友人に聴いたところ、こんな事を言って溜め息をついていた。
「これを建てる時期の知事が、ハコモノ行政、大好きだったから……」
ウチの女房が、一言で切って捨てた。
「ハコなら、四角く造れ!」
けだし、名言である。
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コメント
以前下見に行ったときに入らせてもらいましたが、4Fの円筒形部分は、そこは螺旋階段になっていて、屋上庭園に上がれるようになっていますが、危険防止のため立ち入り禁止にしているとのことでした。
投稿: 池田武 | 2004/08/28 17:17
運用で立ち入り禁止にせねばならん程、意味の無い設計ということですよね。一事が万事の安藤忠雄設計の欠陥性を示す、ナサケナい好例でしょう。
太陽光が入るギャラリーというものが欲しかったのだろうということは想像出来ます。たしかにそれは気持ちのいい空間です。ですが、1階がかなり天井の高い造りになっているので、別に2階まででもかなり背の高い空間が取れており、ギャラリー展示の実用上は、ほとんど問題ない高さを得られています。
使い勝手を考えるならば、不要な回廊とかを取り止めて、2階まで、もしくは、一歩譲って3階までにギャラリーを留め、その分、3〜4階に会議室が増えていたら、同じ容積の建物でも、随分と使い勝手の良いものが出来上がっていたのではないかと、想像します。
ちなみに、この施設には他にも、出来上がった瞬間には格好いいものの不要に摩滅や傷を気にし続けなければならない、木製床や木製階段等を多用した、使い勝手の悪い部分が多見されました。摩耗する木材を随所に用いる事で、年を経る毎に風合いと歴史を感じられるように……といえば、コンセプトとしては非常に聞こえは良いですが、実際の運用に際しては、「あそこは木製床なので、アレはするな、コレは止めろ」の連続駄目駄目攻撃で、結局運用がし辛いだけと言う、トホホ状態でした。
ただしこの施設。大ホール『だけ』は、極めて良い出来で、これで会議室さえ多ければ、よいコンベンション会場になれるのにと思うと、更に惜しい気がします。
結局一言で言って、こういう会館を使った事の無い世間知らずが、思い込みだけで設計したということなのでしょうか。
今、大ホールを持った日本のこういう施設の殆どが、会議室が小さい・少ない等、コンベンションに向かない妙な使い勝手の悪さを持っています。昭和中期のものは、そういくつも文化施設を造れない時期でもあり、意外と高い複合集積度を持っているのですが、ここ20年ほどの新しい施設ほど、その方向性が顕著です。見映えのする大ホールは気合いを入れて造るが、会議室などの、実用時上必要でも地味な要素は、お座なりと云う施設ばかり目につきます。
ですが、その上道に迷い易い施設というのは、どんなものでしょうか。こんなものが世間に通用していると勘違いされ、次の世代にもっとタコな施設が増えてしまう事を防ぐためにも、もう少し、公共施設を使う人間は、ユーザとして「コイツの設計はタコだ」「使い勝手の悪い、駄目施設」ということを、直言しておくべきだと思います。
実際に、施設職員に「危険だから立ち入り禁止」と云われた池田さんは、こういう、基本的に何が必要なのかを疎かにしたままのタコ施設に対して、どうお感じになりましたか?
投稿: 神北恵太 | 2004/08/28 18:58
何と言うか、便利さということが完全にないがしろになっていたのが印象的でした。
私の場合は自分の日記にも書いている通りLANを引くというイレギュラーなことをしたわけですが、とにかく機器を固定することが非常にしづらい会場で、マグネットや吸盤、自作金具を使用している私に対して職員の方が自分の責任ではないのに申し訳なさそうにしていたのが印象的でした。
投稿: 池田武 | 2004/08/28 21:48
G-Con スタッフ加藤%岐阜県民です。
「箱なら四角く作れ」けだし名言だと思います。
記事中「これを作った当時の知事」とありますが、今でも現役です(泣)
加えていえば、会場へのアクセスも分かりずらいですよね。
県民の私でもよく迷います。
投稿: 加藤隆史 | 2004/09/04 10:20
> 記事中「これを作った当時の知事」とありますが、今でも現役です(泣)
リコールだ。リコールするんだ!
ちなみに、会場へのアクセス。本当に市民と訪問者のために何とかする気があるのであれば、岐阜市のバス路線全体を見直さないといけなさそうです。路線規模が遥かに小さいくせに、東京の地下鉄なみに出来が悪いです。
投稿: 神北恵太 | 2004/09/04 12:00