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2004/09/19

納涼船に乗ったぞ

 東京湾納涼船と言う東海汽船の船を使った日ごとのイベントがある。7月1日から9月20日までの間、毎晩19時15分に竹芝桟橋を出航。約2時間で、東京湾の奥の方をコリっと回って来るミニクルーズだ。デッキに簡易なテーブルや椅子を満載し、生バンドやダンサーを乗せ、早い話が、水上ビアガーデン。
 2004年9月18日。もうあと3日で今年の航海も終わりと言う、どん詰まりの納涼船に乗った。有り難いのやら罰当たりなのやらよくは判らんが、9月も半ばを回ったのに、まだ日中30度の夏日が続き、この日も、風に心地よい乾きを感じつつも、もうお馴染みになった摂氏30度を超える熱さに身悶えると言う、平成16年の九月らしい日だった。絶好の納涼船日和と言わずして、何と云おうや!
 乃木坂で従妹の結婚式に出席し、銀座まで出て一息付いた後、神北夫婦は竹芝桟橋を目指した。
 桟橋まで着くと、納涼船を目指す善男善女の列が、もう何百人も並んでいる。とりあえず、G-con東京企画局の中核で、納涼船の首謀者、辻堂くんに連絡する。程なく迎えに来てくれて、みんなと合流。
「全部で19人。大所帯ですよ」
「場所取りは大丈夫なのか?」
「雑魚寝用の二等船室が宴会座敷になっていて、一角押さえてありますから、場所はバッチリです。あとは食い物は場所取りの為の最低のオードブルしか用意してないので、各自で……。飲み物は、ビールもソフトドリンクも、フリードリンクですが、これも各自で取りに行かないと行けません」
「どっちにせい、中入ってからだな。」
 結局、神北家の参加費は、先週の秋葉原ワシントンのホテル代と相殺ということになる。
 しばし待つ内に何人もの参加者が。とりあえず、一塊になって、遅れているメンバーを待っている。
「よし、じゃ、後は案の定遅れている武田警備隊長以外全員ですね」
「並ぶか」
「並んでいてください。僕は、今、ゆりかもめで駅まで来る武田隊長を捕まえに行って来ます」
 だが、既に千何百人の待ち行列が出来ていて、うねうねと広場中に、のたくっている現状、とても、列の最後尾を探しに行けるような状態じゃない。列のノタくるカーブのところで、最後尾がやって来るのを待つ事にする。10分程流れて行く人を見ていると、武田くんがやって来る。
「あれ、辻堂は?」
「いま、電話で話しましたよ」
「それできみを迎えに駅まで行ったんだけど」
「え?」
 武田くんが電話して、もう自分はこっちに来たからと伝える。が、なかなか辻堂が戻って来ない。おかしい。
「辻堂どうしちゃったんだ? もっぺん電話してみそ」
 電話で確認してみると、辻堂は既に船に乗っているとのこと。
「何がしたいんだ? ヤツは……」
「さあ……」
「まあいいや、あと二うねりほどで最後尾だから、その後に着くぞ」
「OK」
さらに10分ぐらい掛かってやっと列に入り動き出す。と、改札口が近付いて来たところで武田くんが聞いて来る。
「で、ぼくのチケットは誰に持っていていただいてるんですか?」
「辻堂だろ」
「入口で待っててくれるのかな?」
「彼奴のことだから、中入って、寛いでるんじゃないか?」
「ええ?」
「電話してみそ」
びぽば……。
「うわぁ、ツナガラネぇ」
「またかい!」
 辻堂の電話は、繋がらないと、やたら長い留守電録音を促すメッセージの入った留守録センターに取り次がれてしまうのだ。
 仕方ないので、武田隊長を改札前に残し、残りのメンバーで乗り込む。長い乗り込み用通路を歩いている中で、辻堂を呼び出す船内放送が。船に入ったところに辻堂が居た。
「おい、武田をどうするんだ?」
「みんなと合流したって言うので、一緒に乗船するよう云いましたが、何か?」
「何かじゃねぇ。お前が武田のチケット持ったまま入っちまったから、彼は改札の外で置いて来た」
といったとたん辻堂の顔色が一変。
「改札まで行って来ます」
「当然じゃ」「走れ」「たわけ」
 罵声を背に人波を押し分けて走って行く辻堂を見送った我々は、取り敢えず船室へ案内される。高校の修学旅行で乗せられた昔の客船の二等船室って言うのは、艦内図で壁として描かれているのが、手すり程度の高さまでの欄干のようなもので、がーっと広い場所を形式上区切っただけだったのだが、二等船室と言う認識を改めた方が良いみたい。この船のは一応ちゃんと区切られた独立した部屋になっている。
 とはいえ、部屋はあるものの、とりあえず、場所確保の為に辻堂が買っておいてくれたオードブルだけでは、あまりにも貧弱。
 まずは、フリードリンクをある程度取って来たものの、肝心の辻堂が戻って来ない。
 「もう待てネェよ」
「じゃ、乾杯の練習っちゅうことで」
 まずは乾杯。う〜〜。なんだか、船がターンを切っているのか、船室がナナメになっているぞ。ま、いいや。
 しばらくすると、やっと武田隊長を連れた辻堂が戻って来る。当然乾杯。
 しかし、どう考えても、食い物も少ない。
「千円か二千円づつ集めて、買い出し部隊を編制してだな……」
「わかりました。じゃ、千円づつあつめ……て、一万円しか無いや……」
「つ、辻堂先輩。ごちそうさまです」
「あー、えー、くそ。おごるよ、奢りゃ良いんだろう」
「有志からも集まった幾ばくかを持って、辻堂買い出し部隊出動。

 今回、岐阜からは、研修があって出て来ていた加藤くんとともに、実質上企画の中核としてふんばってくれた森田くんも来てくれている。陣容を見るに、かなり本格的なご苦労さん会だ。まあ、うちの嫁や佐々木家の家族など、直接企画には関係していない参加者も多いが、基本的に関東勢で企画のMLに呼ばれた人が中心ということか。
 ネット上のレポートなどを読む分に、なんとかG-conも参加者からは比較的良い感想を貰っているようで、ここに集まった人たちの尽力が、その何割かを支えた訳だ。神北個人としては、企画こそ2つ持ち込んだものの、企画局としての手伝いはあまりしておらず、目につくところでは、どちらかと言うと事務手伝いのような仕事が多かったが、まあ、何かしら手伝った大会が何とか終わってご苦労さんと言う集まりに出られるというのは嬉しいものだ。

 いつも、SF大会で警備を担当している武田くんが、2006年の大会では企画部長を務めると言う。実は、神北は、しばらく前にこの人事を聞いたときから、非常にいぶかしんでいる。何故かと言うと、彼は、ゲストと交渉して企画を作り上げたことも、企画担当者として司会して企画を回したことも、企画張り付きとして企画番をしたことも、ほとんど無い筈だからだ。もちろん、フロア長として各担当者をコントロールして何本かの企画を並行管理したことも、多量の機材の調整をしたことも、ゲストの管理をしたことも、タイムテーブルをいじったことも、何一つ経験していない。なぜなら彼はずーっと、1992年以来十何年間連続して警備担当を勤めて来ていて、準備作業を手伝ったことはあっても、中核になって企画を組んだり、ましてや当日に回したりした経験は無い筈だからだ。
 SF大会の企画を纏めるというのは、大変な労力と、ノウハウと、判断力と決断力、そして責任能力が必要となる。
 まず、企画一本一本を組み上げる能力。これが必要だ。むろん、素人でも、コケの一念さえ在れば、年に1本2本の企画であれば組み上げることも出来よう。準備期間も潤沢に取れる。しかし、日本大会ともなれば、大会実行委員会側で50本〜100本程度は企画を用意しなければならない。日本大会の企画局員の多くは、こうした企画を5本から10本、多い場合は30本近くも、1人で抱え込む。電話で連絡を取るだけのことでも、ゲストをはじめとする企画協力者全員との信頼関係を構築しつつ企画数本分の電話を掛けるとなると、それだけでも相当の時間を取られるし、それぞれの交渉内容を管理するためのメモやリストを作っていれば、実際に話をしている以外にも、どれだけでも時間はかかってしまう。しかも、日本SF大会は、専属のプロイベンターがやっている訳ではない。普通に仕事を持っている人間が、日々の仕事を終えてから、または休日に、少ない時間を使って活動しているのだ。更に、企画局員にも経験差があるから、慣れた企画局員は、経験の浅い新人にノウハウを教えながら、自分も多くの企画を担当することになる。当然、この時、「教えるより自分でやった方が速い」と言っていては人は育たないから、手慣れたベテラン企画局員というのは、いろんなノウハウを抱え込んだ上で、二歩も三歩も先読みをしつつ、「ああやってみたらどうだ?」「こう対応してみたら良いんじゃないか」とアドバイスを入れて行く。普通の日本SF大会の企画局というのは、局員全体で20人〜40人程度、その中で中核になる何度も大会を経験しているベテラン局員が5〜10人。それ全体を纏めるのが、企画局長ということになる。
 次に、資源管理能力。持込企画の立案者にはあまり必要ないが、大会で企画を纏める立場になると何より大事なのが、この能力だ。例えば、会場。部屋数は有限だ。ということは、ある時点で行なえる企画の上限は自ずと決まって来る。しかも、この企画はこういう特質の部屋でなければならないということも多いから、単に割振れば良いというものではない。次に機材。最近ではビデオ機材を必要とする企画も多いし、ホワイトボードひとつ取っても全企画に行き渡らない場合だってあり得る。また、クイズ企画の早押し装置など、企画によっては特殊な機材を必要とするので、どこかで借りて来るなり自作するなりと云う調達法を含めて機材をコントロールしなければならない。造るとしたら誰に頼むか、借りるとしたらどこから借りるか、という人脈も重要になる。そして、お越しいただくゲストをはじめとする企画出演者。こうした様々な条件を勘案し、最も効率よく、もちろん同一出演者の出演企画がバッティングすることないように、タイムテーブルを組み上げなければならない。更にこれに、会場の電力容量や、機材移動・人的移動の動線の勘案。伸びそうな企画は後の時間枠を空けておくような配慮、仲の良いゲストはお互いの企画を覗きに行くことが多いから、バッティングは避けた方が良い等と言う、書かれただけのデータリストには顕われ難い、肌で感じて憶えなくてはならない経験則等まで含め、数多くのことを逐一チェック・判断しながらタイムテーブルを組む能力が必要となる。更に云えば、企画全体のバランスや、同じ方向性の企画が出来うる限り重ならず、ストレス無く好きなものが見に行けるように、企画内容全部を把握した上で傾向を考慮することも必要になる。
 無論、これは、すぐに出来るようになる話ではない。
 たとえば、準備段階の話をすれば、5本程度の企画を立案し、インスパイアするだけでも、大変な労力がかかる。普通の企画一年生では、このぐらいがどんなに頑張っても、行き着ける限度となろう。次に、何人かの面倒を見るようなベテラン企画局員。知る限り最も早い例で、スタッフ二年目でここまで到達した友人も居るには居るが、普通は四〜五年は日本大会や地方大会で企画担当の経験を積んだ人たちが多い。また、こういったラインスタッフに情報を提供するゲスト管理・機材管理・タイムテーブル管理等のバックアップ・スタッフの仕事もある。総数200人程度の小さな地方コンベンションならともかく、日本大会規模となると企画数も規模も大きく、パッと見に全体が見渡せないから、企画局内で情報を整理整頓して管理し、企画局員に広報するための企画事務という部署すら必要になる。そうした組織全体を見渡し、組織の中で遅れている部分を確認しては、その仕事を分割して負荷を軽減する等の、全体を見通した判断と処置を行なう管理も必要となる。
 実行委員長というのは、存外簡単な役職で、こんな大会をやりたいという強固な意志と、それのための方法論さえあればすぐにでもできる仕事だ。事務局長というのは、ちゃんとしなければならないことを理詰めで理解出来ていて、事務能力があれば、できない仕事ではない。アドバイスをくれる人さえ居れば、社会人を数年経験している人ならば、たとえ突然スタッフになったとしても何とかできる仕事だ。しかし、現在の日本SF大会の企画局長というのは、他に類のない仕事だし、経験してみないとどうしても読めない膨大な仕事量がある。また、当然ながら、状況を説明出来るプレゼンテーション能力と、様々な事態に対して(出来れば瞬時に)解決策を考えて指示を出す指導力と、その後ろ盾となる豊富な経験も必要だ。一種、職人の頭領のようなものである。理屈や理詰めで何とかなるものではなく、相当量の経験と時間が必要となる。
 こう云われても、どんなものやらよく実体は判らないかも知れないが、とにかく一朝一夕に到達出来る境地では無いということは、お解り戴けることと思う。
 スキンヘッドの警備隊長として有名な武田くんが、前々から企画をやりたがっているという話は、聞いているし、その意気は非常に買う。買うのだが、ほとんど未経験から突如として企画局長と言う人事で回せる部署とは思えない。彼が云うには、来年は警備も担当しつつ、少し企画を受け持って経験を積むのだと言う。しかし、少しで大丈夫なのか?

 結局、もし日本大会で企画というものをちゃんと回そうと言うならば、何年もかけて、何度かの一般参加を挿みつつ、企画スタッフ。企画群責任者。企画事務。等を歴任して、ひとつづつ仕事を憶えるしか道はない。
 しかし、もう武田くんには、2006年大会までの二年弱の時間しか残されてない。これを何とかする方法は2つしか無い。
 1.武田くんが企画局長を辞して適任者を据え直す。
 2.武田くんが猛烈な勢いで修行して適任者に成長する。
なんか究極の選択をしいているように思われるかも知れない。だが……、
 3.武田くんがこのままたいして成長もせずに企画の中核に居座って、結局、企画局が回らない。
……という最低の結果は避けて欲しいのだ。過去の例で実際にそのようなことが在ったのだ。それを同じ大会のスタッフとして傍で見ていた1人でもある武田くんが、最後にどういう判断をするのかは重要だ。
 その、企画がガタガタになって大騒動になったという過去の大会の事例を引いて、同じことを繰り返すなよというコトを、折角の機会なので企画のキモをわきまえた何人かの企画系スタッフとともに、武田くんに話をした。

 で、どーなったかというと、神北は、「なんでこんな場所まで来て、湾景を楽しむでもなく、いつもと同じような話ばーっかりしてるかなぁ、この人たちは」と女房に呆れられたのであった。
 マイッたなぁ……。

 あ、しまった。辻堂から相殺分の残り金額を取りっぱぐれてるじゃネェか!

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コメント

あー、忘れてた。
参ったなあ。そのML入って無いから駒八での情報しかきませんでしたよ。
忘れるに決まってるじゃないすか。そんなもん。

投稿: しおぺー | 2004/09/20 17:19

 いや、オイラも、駒八で誘われただけだよ。
 そんな、君、辻堂くんがちゃんと漏れの無いようにキッチリ人を誘うなんて、夢みたいなこと期待してちゃいけません。
 で、アタクシ的には、なんで塩ちゃん居ないんだろーなー、多分、辻堂くんが誘い忘れたんだなー……と思っておった次第ですよ。
 ま、視察はバッチしなので、来年は、もちぃっと計画的に乗ってみませう。

投稿: 神北恵太 | 2004/09/21 04:21

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