モナ・リザで焚火だぞ
Microsoft Internet Explorer(IE)がらみの話題が続く…。
SleipnirというWindows用のソフトウェアが在る。……ていうか在った。いや、もっと詳しく云うと、今も使っている人は多い。
これはどんなソフトかと云うと、IEの表示コンポーネント(正式に、ユーザに提供されている)を使いタブブラウジング可能にした、いわゆるタブブラウザである。タブブラウザと云っても、IEユーザには知らない人も多かろうが、今や、これは世界標準。IEがスカタコな3大理由のうち1つは、2004年にもなってまだ、自分ではこのタブブラウジングに対応していない点にある。(ちなみに、残りの2つは、こうだ。勝手な拡大解釈でHTMLとして駄目駄目なコードを無理矢理表示しまうことで、HTML的に不正で他のブラウザ等では表示出来ない屑ページを量産させている点。これは逆に、ユーザをIEに縛り付ける囲い込みという点で、他のブラウザを不当に追い立てている。最後の1つは云うまでもなく、勝手なおせっかい機能を満載し、それでユーザのセキュリティーをパーにしている点。)
今、IEだと、別のウィンドウで新しい表示をさせて行くと、次々と開いて行った結果、いつの間にやらディスプレイ上が重なり合うウィンドウでわやくちゃになってしまう。これを、ウィンドウの端に切替用タブを付ける事で、一つのウィンドウ内に収めてしまおうと言うのが、タブブラウジング。それを実現したブラウザがタブブラウザだ。
たったそれだけ? 別に、ウィンドウ1枚に収めなくてもいいじゃん? と思っている人は、猛省すべし!!
書き物とか探し物の最中に、ネットで情報を検索し、アレやコレやを探し出すケースを考えてみて欲しい。例えば神北は、平均5〜10個ぐらいのWebページを並行して眺めながら、情報を取って来る。もちろん、昔はそれをするにはマシンパワーが足らなかったから、一個ずつ読んでは必要部分をテキストコピーしておいたり、ブリントアウトしたりという事前準備をしっかりしてから、しかるべき後にそれを脇に置いて仕事をした。しかし、今はそれが、画面も広くなったし、CPUパワーも、メモリ容量も、回線速度も格段に増したので、調査対象をナマで開きながら、その場で並行して仕事ができる。気になったらその場から確認に行ける。場合によっては、検索で引っかかったページを30〜40と一斉に開いて、端から確認して行く事も在る。
ウィンドウ2〜3枚程度なら、並行して開いていても構わないだろうが、10枚も開いていると、かなり鬱陶しい。しかも、ブラウザだけを開いている訳ではない。テキストエディタも開けば、自分で作ったデータベースも開く。モノによっては計算機やEXCELだって必要だし、確認のためにメモソフトを開く事も在る。こんな中でブラウザのウィンドウが開いているページ分一つひとつ開いてしまうのは面倒臭くて仕方ない。
かくして、ネットでものを調べる人にとってタブブラウジングは、極めて有効。一度使うと、一枚ずつ別のウィンドウを開いているような非効率的な環境には逆戻り出来なくなる。ということは、今、普通にWebページを見ている全ての人にとって、タブブラウジングは有効ということだ。
で、Sleipnirである。これは、IEの表示部分のプログラムをそのまま流用し、タブブラウジングに対応した、新進気鋭、期待のWebブラウザだ。……いや、だった。
というのも、個人開発者によるシェアウェアだったのだが、開発者のパソコンが、ソースコードの入ったハードディスクごと盗難にあったと、幾つかのニュースが報じている。中には、開発継続断念とまで報じているものもある。
もちろん、ソースが盗まれたからと言って既にネット上に流れているものまで無くなる訳ではない。ユーザのマシン内に既にインストールされているプログラムは、もちろん今もそこに在るし、ちゃんと動く。
しかし。しかしである。昨今のセキュリティーホール騒動(IEの脆弱性を突いて、ユーザのシステムに侵入し、情報を盗んだり、破壊したりするソフトウェアの流行。過去何度か在り、その度にマイクロソフトは対応版を出して来たが、その度に対応版に新しい脆弱性が発見されると云う堂々巡りが続いている。)を考えると、Sleipnirの現行最新版に組み込まれているIEの表示部分のコードが、いつまで現役で居られるかは、極めて怪しいと云わざるを得ない。
これが、転売を考えたパソコン泥棒だった場合、既に、HDDを消去し、中古屋に売り払われているかも知れない。シリアル番号等で盗品を確保出来ても、HDDの中身が残っていない可能性はかなり高い。云ってみれば、ルーブルからモナ・リザを盗み出して来て、火をつけて暖を取るような行為である。悲惨としか言いようが無い。
逆に、これがSleipnirのソース欲しさの強奪だったら?
考えたくはないが、こちらの方が悲惨である。
神北とはプラットホームが違うので、直截使う機会が無かったソフトだが、一世を風靡したソフトなので、残念だ。一抹の寂しさと憤りを感じる。
もちろん、パソコン泥棒が捕まり、反っくり返って来るのが一番望ましい。だが、もし、失われたソースが還らなくても、開発者の方には、速くショックから立ち直り、別の、あらたなソフトの開発に邁進していただきたい。
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