« ハウルを観て来たぞ | トップページ | えぐられたぞ »

2004/11/25

史上最大スクリーン数だぞ

 昨日神北は、指の怪我で通院した女房が半日休暇で済まない程病院で時間を食われたことを奇禍として、平日に夫婦で映画を観に行くだなんて、なんだか反社会的な行動をとった訳だ。もちろん、病院で時間を取られたのは、女房の怪我が重かったためではなく、5分の診療のために2時間以上待たされる日本の診療システムの劣悪さに起因する訳で、神北が怪我をした女房を無理矢理連れ回した訳ではない。
 が、感想を書いた後、いつも拝読させて戴いているいくつかのブログを巡回していたら、作家の朝松健さんも、同じ日に、同じ『ハウルの動く城』をご夫婦で鑑賞された由。まあ、日本史上最多のスクリーン数を誇る大人気映画となれば、同じ日に観に行った夫婦なんて、全国で掃いて捨てる程居るのだろうが、逆宇宙ハンター以来のファンとしては、無理矢理にでもシンクロニシティを感じてみる。
 苦止縷得宗のおかげ様である。(ホントか?)

 しかし、史上最多スクリーンとは言うものの、100人〜150人ぐらいしか入らない小さな上映館が増えている昨今のシネコンブームの中で、たしかに今年のどの作品より多くの人が見ている計算かも知れないが、小さな小屋でも300人とか500人とか平気で入った30年も昔の映画館のかき集めた人数と比べると、動員人数的には、どのぐらいのモノなのであろうか?
 人数でなくスクリーン数で威張っているあたりに、裏面になにか、アヤシゲなキナ臭さを感じずにはいられない訳だ。

 しかし、映画は高い。
 もちろん、ある一定量の収入が無いと、映画会社も新作を作れなくなるし、上映館も小屋を維持出来なくなる。そこは判る。しかし、敢えて云うと、今、新作映画を映画館で見ることに、それほどまでの対価を払う価値があるのかという気がする。
 40年も前の、まだ、映画というものは封切館の上映を終えたら、二番館・三番館へとフイルムが流れていた時期。その上映期間内に観ないと、次は名画座に掛かるまで、その映像と会うことはできなかった。もちろんその後、テレビでは洋画番組が大流行りする。30年ぐらい前には1週間各曜日、21時台に殆どどこかの局で名画を放送していたものだ。また、夏休みや冬休みになると、午前中には子供向けの怪獣映画放映も多かった。世の中にビデオテープと言うものがあって、放送局などでは画像を保存しているのだと言うことは確かに知識として知っていた。だが、家庭用のビデオはまだ存在しない。映画を所有するとなると、一般市民には高嶺の花だった。そういうことは、自宅に上映室を持ち、フィルムを買い取るだけのコネやカネのあるブルジョアな趣味人、いわゆる高等遊民の優雅な遊びでしかなかった。

 その頃と比べると、25年程前に出現したホームビデオ以降、世の中は一変した。映画を所有し、好きな時に観ることが出来るのだ。更に、ここ数年は、DVDの発達で、それに輪が掛かった。また、映画を多数放映する有料チャンネルも多い。
 事ここに至りDVDソフトとして、誰でも知るような名画ばかりか、全世界でも何人が見たがっているか疑わしいようなショボい三流カルトムービーまで、ありとあらゆる映画が売りに出されるようになった。ジョン=カーペンター監督の怪作スペースオペラ『ダークスター』のDVDが3,800円。ジョージ=ルーカスの『スターウォーズ』第4〜6部三作まとめて約10,000円。ポピュラーなものからレアなものまで、かなりの作品が今、一般市民の手に入るようになっている。版元品切れしてたって、ヤフオクとアマゾンのユーズドがある。

 この状況を簡単に言い換えれば、今の封切り映画がライバル視すべき対象は、自分より前に発表された全ての映画だということだ。
 たとえば、考えてみて欲しい。今、多くの封切り館は入れ替え制をとっている。一般1,800円〜指定席2,500円の映画をカップル2人で観るのならば、同じ値段でDVDが買えてしまうのだ。
 駄作かも知れない新作スペースオペラを封切りで観るより、絶対何度も観れる面白さの『スターウォーズ』の方がお買い得ではないか?
 しかも、今高い金出して一期一会の出会いをしたその映画、まず間違いなく一年以内に、下手をすると半年以内に、もっと下手をするとアメリカ版なら封切り前から、DVDソフトになって売り出される。

 このご時世に、普通に大人1800円とか掛けて観に行かせるだけの価値を映画に感じる事は、もはや難しい事なのではないか? ジェームス=ディーンの名画DVDが定価1500円で、海のものとも山のものともつかない未知の映画が入場料1,800円。もちろんそれでも入る人は入る訳だが、万人に訴求し難いのはお解り戴けると思う。
 いっその事、映画会社は、DVDのみで儲ける構造に、完全にビジネスシフトして、小屋掛けしての映画館上映は宣伝と割り切って、今までと逆に、映画館に動員人数1人当り幾ばくかの報奨金を支払ってでも、入場料を500円とか800円に下げてみたらどうだろうか?
 映画館に人が戻って来れば、パンフレットやグッズの売り上げなど、様々な二次売り上げは増やせるのだから、意外とやって行けるんじゃないかな?

|

« ハウルを観て来たぞ | トップページ | えぐられたぞ »

コメント

映画は大スクリーンで見るもの、といわれています。たしかに、20インチ程度のTVでは画面が小さいので、映画館での迫力はないでしょう。しかし、昨今では40、50は当たり前の薄型TVに5.1chサラウンドとなれば、一昔前の場末の映画館なんかよりよほど鑑賞環境は良いかもしれませんね。
実際、ロードショーを見逃しても、昔ほど悔しくなくなりました。なにせ「どうせ、そのうちDVDが出るから」と思ってしまうのです。
しかしまあ、我が家では、まだ大迫力鑑賞環境にはないので、しばらくは映画館に足を運ぶことになるでしょう。

投稿: 八潮 | 2004/11/25 14:32

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 史上最大スクリーン数だぞ:

« ハウルを観て来たぞ | トップページ | えぐられたぞ »