『ゴジラ ファイナルウォーズ』を観たぞ
2004年12月6日月曜日。ゴジラ映画最終作と喧伝されている『ゴジラ ファイナルウォーズ』を観に行って来た。当然のように有楽町の日劇である。
ちなみに、神北のゴジラ映画に対するスタンスを言っておくと、一作目の1954年の『ゴジラ』ほど見事なSFになるのならともかく、ビオランテ以降の「怖いゴジラを描こうとしたんだけど、怪獣対決もやりたくなっちゃいました。そうするとゴジラの方が人類の味方でいてくれないと、それより強そうな新怪獣が出し難くって、気が付いたらゴジラがどっち付かずの上に、設定とシナリオが破綻してました」というような中途半端な作品より、怪獣総進撃・怪獣大戦争のような、「がんばれゴジラ!地球の平和を守り抜け!」型の怪獣プロレス行け行けドンドン映画の方が好きである。
その目で見て、今回の作品『ゴジラ ファイナルウォーズ』は、大成功の傑作であった。時間いっぱい、驚き、喜び、怒り、笑える。とにかく楽しいぞこれは!!
■■—————————————ネタバレ—————————————■■
技術文明の暴走が生み出した環境破壊。そのツケは、怪獣という形で世界各地に顕現していた。事ここに至り、人類は、人類同士で争い合っていられなくなった。文明を、そして人類そのものを、怪獣の脅威から護るための軍隊、地球防衛軍の発足である。
地球防衛軍は、世界中から精鋭が集められ、超兵器で武装した、対怪獣精鋭集団である。その中でも、ミュータントによって構成されたM機関は、対怪獣戦闘のためのエリート部隊である。
数年前に、怪獣王ゴジラこそ、地球防衛軍の海底軍艦轟天号の奮戦によって、南極の氷河内に氷漬けにして閉じ込められていたが、地球防衛軍、中でもM機関の活動は、今も止む事は無かった。新建造なった新型轟天号はダグラス=ゴードン艦長の下、怪獣マンダとの激しい闘いの末、ノルマンディ沖深海底にこれを葬り去る。ただし、その果敢にして恐れ知らずな指揮の結果、ゴードン艦長は軍法会議を経て懲罰房に入房させられてしまったが……。
そんなある日、乗艦たる轟天号の修理を待ちつつ、日々訓練に明け暮れるM機関の尾崎真一に、訓練施設の熊坂教官から命令が与えられた。「発見された古代怪獣の遺体調査のため来日する分子生物学者を護衛せよ」。
年寄り学者の相手はゴメンだと云う尾崎の前に現れたのは、若く美しい天才学者、音無美雪であった。尾崎を伴った音無が訪れた防衛博物館で見たのは、北海道沖の海底から引き上げられた1万2千年前の怪物であった。防衛博物館の古生物学者、神宮寺八郎は、それは半分生物・半分機械のサイボーグ怪獣で、遺伝子構造体にM機関のミュータントたちと同様の五番目の塩基配列、M塩基を持っていると云う。
その時、尾崎・音無・神宮寺の三人は、唐突に別の場所にテレポートされてしまう。洞窟の中。空間を越えて三人を呼び寄せたのは、二人の小美人であった。そこはインファント島。小美人達は、防衛博物館に運び込まれた怪獣は、宇宙からやって来たガイガンという怪獣で、1万2千年前に地球の命運を掛けて、モスラと死闘を演じ、これを破り破壊の限りを尽くしたのだと告げた。また小美人達は、尾崎の中にもそのガイガンと同じように邪悪なものの血が流れていると告げた。しかし、自らが何になるのかは自らで決めるのだと言い、インファント島のお守りを渡した。短い邂逅の後、また一瞬の内に防衛博物館に返された三人。その眼前に、ガイガンと云う名の一つ目サイボーグ怪獣は、無言で佇んでいた。
それから程遠くないある日、突然、地球各地に怪獣が出現した。太平洋上で国連事務総長機を襲撃したラドンがニューヨークに、アンギラスが上海に、キングシーサーが沖縄に、カマキラスがパリに、クモンガがアリゾナに、巨大海棲爬虫類ジラがシドニーに出現した。
修復中の轟天号こそ出撃しないものの、地球防衛軍の誇る三大空中戦艦、火龍・ランブリング・エクレールが、それぞれ上海・ニューヨーク・パリに出動。尾崎も一旦音無美雪の元を離れてM機関の戦闘員として、東海コンビナートに出現したエビラ撃滅のため、出動した。
だが、尾崎達がエビラを追いつめた時、火龍が、ランブリングが、エクレールが、それぞれ目標怪獣を撃破しようとしたその時、天空に怪光が走り、怪獣達を掻き消してしまった。そこには、巨大な飛行物体が浮かんでいた。
世界に散っていた飛行物体は、地球防衛軍本部直上にて合体。強硬なる侵略と判断した防衛軍司令官波川玲子の指揮の下、最終戦に備える兵士達。しかし、そこに現れたのは侵略者の軍団ではなく、太平上でラドンに襲撃されて死んだと思われていた日本人初の国連事務総長、醍醐直太郎その人であった。
醍醐は、彼等に命を救われたと説明、その異星人との話し合いに立ち会って欲しいと、波川司令官と国木田少将を伴い、転送ビームを受けて再び巨大宇宙船の中へ。
その日から世界は一変した。地球人には彼等の母星語が発音出来ないからとX星人と名乗った彼等がもたらした、驚異的な情報が伝えられたからだ。それは、宇宙の深淵から地球を目指して迫り来る巨大遊星ゴラスについてであった。X星人司令官の弁によれば、確かに未曾有の脅威ではあるが、地球の持つ全ての軍事力を、既にX星人達の算出したある時点、ある場所に集結して一斉攻撃を加えれば、ゴラス撃破は可能であると云う。
もはや国際連合の時代ではなく宇宙連合の時代だ、宇宙への扉は開かれたと説く醍醐と並び、テレビに映ったX星人は、地球全土から絶大な歓迎を受けた。
だが、それに疑念を抱く者も居た。音無美雪の姉でニュースキャスターの音無杏奈である。彼女は、妹の美雪とその警護員の尾崎に、宇宙船から帰還してからの醍醐が瞬きをしないと指摘。醍醐は既に宇宙人によってすり替えられていると断じた。危機を感じた尾崎は地球防衛軍波川指令官に面会し、それを告げようとするが、波川もまた瞬きをしないことに気付く。巨大宇宙船に入った時に、波川もまたすり替えられていたのだ。
一方、防衛博物館の神宮司博士は、X星人の指摘によって人類が観測し始めたゴラスが、全て同じ映像であることに気が付く。ゴラスはX星人の欺瞞工作による架空の天体だ。その目的は人類の兵器を一カ所に集約し、一度に殲滅することに相違ない。
国連事務総長も、地球防衛軍司令官も敵の手に落ちた今、誰を信ずれば良いか? 尾崎には、絶対に信じられる人物が一人だけ居た。「絶対にX星人に乗っ取られてない人物」、未だに懲罰房に暮らす防衛軍の野生児、ゴードン大佐であった。
実は、この作品、そう期待していたわけではない。漏れ伝わって来る話をどう聞いても、整合性のある設定やストーリーには至らないからだ。実際に観てみても、ストーリーの穴は多々見受けられる。
また構成にも首を傾げる点がある。非常に動きを重視したスーツメーションの怪獣を多々導入したにも関わらず、膨大なシーンの中で、へたをしたら各々が一本の映画になるような大看板同士の対決が、あっさりと流されてしまうのは如何なものか?
仮にもゴジラ映画最終作として、通過点ではなく、少なくともあと何年かはもう作らないピリオドとして作られるものならば、もっとゴジラの雄々しさや狡猾さ、力強さや怒りの現れるバトルを丁寧に描き、それを破綻無きストーリーの上に収めて、強固な設定で抑えてやる。そうあるべきではないかと思っていた。実際に映画を観るまでは。
しかし、違うのである。違ったのである。
この映画は、区々たる戦闘を精妙に描くものではなく、つじつまの整合性を競うものでもなかったのだ。考えてみて欲しい。結局、1954年の初代『ゴジラ』を除く全てのゴジラ映画とは、整合性とは程遠いものではなかったか? かつての怪獣プロレスを離れ、ゴジラとは何であるかを滔々と謳おうとした1984年以降のゴジラ映画ですら、その面で綺麗に収められたものは、皆無と云って良い。みな、どこまで行っても、ご都合主義の映画なのである。
なら、ご都合主義を極めちゃえばいいじゃん!
そういうことである。要はそういうことなのである。最近のゴジラ映画の多くが陥っていた、ピタリとハマるような見事なSF設定やストーリーを作ろうとして、馬脚を現すご都合主義よりは、この際理屈はこっち置いておいて、こんなのも、あんなのも、そんなのも、ほら、こんなにてんこ盛りの大サービス。楽しいでしょ? というのが、この映画のスタンスだ。
環境破壊が怪獣出現の源と断じているが、別に環境保全を訴えたりしないもん。だって、怪獣を出すための単なるゴタクなんだもん。
地球防衛軍司令官ともあろうものがあっさりと騙され過ぎだけど、別に構わないもん。単なるすり替えの明示の為だもん。
X星人の計画の端々が甘過ぎるけど気にしないもん。だって、簡単に化けの皮がはがれてくれないと、ホントにやりたいシーンにハデハデに入っていけないもん。
X星人が、武器を横に起き拳を構える地球人に対し、自分も武器を捨てて対等勝負を挑むなど地球人を家畜と見なしているにしては行動が変だけど構わないもん。だって、ゴッツいバトルが撮りたかったんだもん。
偶然そこにいたミニラと、孫を連れた猟師の老人が出会い、三人仲良くなるけど、富士裾野に唐突にミニラが居たって平気だもん。だって、子供とミニラは理屈抜きに仲良くならなかったらダメじゃん?
怪獣映画好きとして一番燃えるのが、X星人に呼ばれて宇宙からやって来たボスキャラ怪獣モンスターX。その登場直後のシーンで既に、特徴的な2本の尻尾が見え、肩口にくっついている2つのモノが何か判ると、もう正体はミエミエなのに、それでも肩の2つと合わせて3つの首が持ち上がり、巨大なコウモリ翼を拡げ、カイザーギドラに変身すると、こいつぁなんと四つ足なのである。いや、この歳になって、こんなに怪獣に燃えたのは久しぶりだわ。
良いよこの映画!
一事が万事、そうなのである。怪獣も、メカも、キャストも、シチュエーションも、台詞回しも、み〜んな、「だってカッコいいじゃん」「だって出したかったんだもん」のオンパレードなのだ。そしてまた、それが面白いのである。
醍醐事務総長の「これでも昔は百発百中と云われたものだ」とか、佐野史郎の「旧きものどもが蘇る!」とかのセリフも、一瞬しか登場シーンの無い可哀想なヘドラも、中尾彬の初代轟天号艦長もその隣に控える上田耕一の副長も、全て、これ、見たかったでしょ、聞きたかったでしょ? というサービス精神。
古き良き、明るく楽しい東宝映画とは、こうではなかったか? この俗悪さこそ、大衆映画の神髄ではないのか? そう思わせる図太さがこの映画には詰まっている。
まだ観てない人は、是非、映画館に飛んで行って、楽しんで貰いたい。ゴジラ史上最高のバカ映画の誕生だ。ゲラゲラ笑いながら、おうおうと喜びながら、感情の赴くままに酔い痴れて欲しい。
これを見ずしてゴジラを語るなかれ。正に2時間5分のパラダイスである。
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コメント
はじめまして
まだ、見に行ってないんですけどね、映画の内容は想像できるから、ついつい読んじゃいました。
>古き良き、明るく楽しい東宝映画とは、こうではなかったか? この俗悪さこそ、大衆映画の神髄
いいですねぇ。
安心して見にいけます。
いやぁ~~楽しみです。
投稿: バウム | 2004/12/07 13:47
はじめまして。ゴジラ、ネット上でも賛否両論ですね。
私はすごい楽しめたので、yahoo!掲示板や2ちゃんねるをみて回っていたのですが、神北さんの記述が一番しっくりきました。
最近のゴジラはネタ切れで行き詰まり感があったと思うのですが、今度のはゴジラ映画の可能性を一気に広げたように思います。
これで最後とは残念ですね。
投稿: bros | 2004/12/07 20:16
バウムさん、brosさん、いらっしゃい。
ネットの中には『FW』に否定的な方が多いようで残念ですが、確かに、焦点がどこにあるのか絞り切れなかった感があるので、一般的な評価が低くなるのは仕方ないのかも知れません。
絞り込んで収斂されたストーリーではなく、盛り込まれたディティールの多彩さで楽しませると云うこういう映画は、ノリが合うか反るかというところで評価が真っ向分かれてしまうのでしょう。
まあ、来年からしばらくは無いにしても、いずれゴジラ映画は帰って来るでしょう。その時も、このファイナルウォーズと同じぐらい盛り上がれる映画になって欲しいものです。
投稿: 神北恵太 | 2004/12/07 22:00
再び、お邪魔します。
brosさんの言うとおり、賛否両論ですね。
ワタシは、神北さん派、brosさんの言うとおり行き詰ってもいましたね。毎年1本ていうのに無理があるんです。
ゴジラ・シリーズに比肩できる海外の映画シリーズは、「007」シリーズだけだと思いますが、あちらは、3~5年に一本でしかないのですから。
でも、ゴジラは、必ず帰ってきますよ、brosさん。
でなければ、賛否両論になるわけないんですから。
ちなみに、明日、見に行く予定です。
感想は、自分のとこで(^^;;
投稿: バウム | 2004/12/07 22:14
あえてここを見ないようにして、昨日やっと見てまいりました。
で、さすが神北さん。おっしゃるとおりでしたね。
私としては「よくもまぁ、こんなに金かけてパロディ作りましたね。ああ、楽しかった」でした。
ゴジラ映画の歴史に着いては全くの不勉強なのですが、少なくとも、初代のあとの「ゴジラVS怪獣」映画は「これでチャラ」でいいや、という感じです。(笑)
富士山バックの咆哮、一度はみんなやりたかったんでしょうねぇ。(笑)
投稿: かざま | 2004/12/24 01:36
かざまさん、ども。
昨日、友人が電話を掛けて来て、最近どんな映画見たとか言う話をしていて、結局、ゴジラで盛り上がってしまいました。やはり、ゴードン大佐は人気高し! ドン=フライ最高! という話になりました。
かつての、未消化のまま終わっていった幾多のゴジラ映画が見えない障碍となっているのか、この映画の人の入りが今イチ、ノッていないと云う話で、少々心配ではありますが、少なくとも、見に行った怪獣少年の何割かが、十数年先に立派な怪獣青年になって、「オイラの子供の頃に、こんな面白い怪獣映画があったんだ」と、目を輝かして語れる力作だったことは間違いありません。
「記録はともかく記憶に残る」とはこのことですね。
投稿: 神北恵太 | 2004/12/24 08:20
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新世紀スタッフ
投稿: 新世紀 | 2008/07/10 14:44