トップは厳しいぞ
産經新聞ZAKZAKに、2005年3月7日付けで、“プレステ”久多良木副社長「降格」に衝撃 後継の目も消え…という記事が乗った。
次期ソニーのトップと目されていた久多良木さんが、思わぬ降格と云う話だ。
しかし、この時期に来るかどうかはともかく、ホントにこの降格、「あり得ない」と思っていたのなら、ちょっと脳天気過ぎるのではないかと思う。
もちろん、衝撃を受けたのが、本人達なのか、この記事を書いた記者なのかは判らない。が、予兆は誰の眼にもハッキリ見えていたのではないかと思う。
ソニーは、この冬、携帯ゲーム機PSPを手に、任天堂DSと一騎打ちを演じ、敗退した。
いや、出荷台数や金銭的な収支等,数的なことは良く知らない。しかし、ソニーは決定的に敗北した。それは、ひとえにこの久多良木さんに起因する。
日経BPの2005年1月25日の記事に「それがPSPの仕様だ」、久多良木SCE社長がゲーム機不具合騒動を一蹴というものがある。良く知らないと云う方は、一度ご覧頂きたい。
真っ先にソニーの携帯ゲーム機を手にしてくれた恩人と呼ぶべき初期のユーザたちに対し、取り出そうとしたメディアが飛び出して行くと云う、トンでもない実装と相成ったPSPのメディアドライブの件などを、「仕様です」と云ったのは、どう見ても、判断ミスだ。ここは、誰がどう見ても謝罪し、時間が掛かっても対応を約束し、開発の盲点だった不具合を見つけてくれた初期ユーザに感謝するべき状況だった。
残念ながら、久多良木さんとそのブレーン陣は、そういう読みの出来ないチームだった。斬新なコンセプトの携帯ゲーム機は既に開発費が掛かり過ぎていて、それ以上の出費が認められないというような内部的事情があったのかも知れないが、その弱点を曝け出してでも繋ぎ止めるべき、重要な顧客として、自社の新製品に飛びついてくれるソニーファンを認識していなかったということだ。
そういうユーザを味方に付けることで、初期の対応費以上の利を取ると云う王道の経営が出来ないのであれば、それを要求される、日本を代表する企業のトップに就くべきではない。だから、この冬の「仕様」発言で、この人の将来は、既に断たれたようなものだった。今さら衝撃を受けるような事態ではない。
神北はかように愚考する。あなたはどうお考えだろうか?
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
確かに
ユーザー軽視、ユーザー無視のトップでも、それがユーザーに伝わらなければ、致命傷にならない
のでしょうが、マスコミ通して宣伝するような
愚をしてたんでは 部下もたまったもんではない。久多良木氏の周辺に、まともな判断をできる人が一人でもいたら、お諌めする人がいたらと
思うが時すでに遅し。
ゲーム機もノートパソコンもデジカメも車載ナビもSONYというお馬鹿な私が言うから 間違いない。
ユーザー軽視の姿勢を毎日マスコミを通じて
トップがビジュアルに表現することを通して
食品の安全(牛乳、牛肉、卵)や車の安全
を不安にさせた会社は、終っている。
大会社トップだけでなく、コンビニの店長でも
銀行の中堅社員でも、ユーザーに対する
サービスを軽視し、輪をかけて判断ミスを
連発する人々は 落ちていく。のを見てきた。
「お客様は 神様です」は 至言です。
投稿: Iku | 2005/03/09 07:33
数量的な話をするなら、PSPはDSに勝っております。DSは初動こそよかったのですが、キラーコンテンツがないのが災いして、現在はほとんど売れていないそうです。その間にPSPは生産が機動に乗って順調に出荷しております。これはゲームメーカーの担当者に聞いたことです。もっともその会社は今PSPの「仕様」に苦しめられて商品が出せない状況です。この「仕様」はPSPの根本的な欠陥-アクセスはディスクをその都度読み込まなければならない-に起因するもののため、彼のところだけでなく全メーカーが困っているようですが。
久多良木氏がSCE専任に戻ったのは、彼の傲慢さも理由のひとつかもしれませんが、それよりもソニー社内での彼は、出井氏のぶら下がりとしてしか見られていなかったということに尽きると思います。親亀がこけたので子もこけたと。
これは穿ちすぎかもしれませんが、現状のソニーはそれでもSCEに頑張ってもらわないとグループの存続に関わります。なので久多良木氏の‘降格’を私はエースの温存と捕らえています。敗者復活の復活の機会を与えた(というか出井氏が守った)という見方もあるのではないでしょうか。
投稿: nurumayu | 2005/03/09 10:22
Ikuさま
nurumayuさま
私も、SONYの先進性は好きなのですが、先鋭的な技術開発力や設計力に対し、その実装技術が稚拙ということが原因で、不具合の多いメーカーという面も多々見て来ました。
とっても優れた住宅の設計図があるんですが、材料費をケチったのか大工がヘボなのか、トンでもなく立て付けが悪い家に仕上がってしまうんですな。
好例が、プレステシリーズです。PS・PS2・PSPどれを取っても、中核となるCPUが優秀であると喧伝される割に、内部のメモリ容量が少ないと云うケチ臭さがあります。しかもメモリーは拡張不可で、狭いメモリーに何度も何度も小分けして、少しづつデータを読み込んでは表示しなくてはならないと云う、頻繁なメディアとやり取りを強要する機械です。このため、どのゲームメーカーもゲームの面白さとは別に、細切れにリロードに次ぐリロードを如何にユーザにストレスを与えずに行なえるかと云う、職人的なゲーム作りの技術を強要されます。
また、3〜5年はとても便利に使えるが、ある日、それこそソニータイマーが効いて来たとしか云いようがない不具合が続出して、買い替えざるを得なくなるVAIOなども、典型的な部品選定のケチ臭さ、実装技術の無さと云えるでしょう。シロウトが適当に部品を買って来たマシンが10年平気で動くのに、ソニーのブランド品がその半分程度で使い物にならなくなると云うのは、寂しい限りです。
久多良木さんに対する今回の人事が、「失脚」を意味するのか「温存」なのかは、我々社外から見ているだけの人間には何も判りません。もっとも、社員・役員ですら、判って無いという方が正解かも知れません。
ただ、間違いの無いことは、このままの久多良木さんが、何年か後に帰って来たとしても、今の彼を知るユーザに対しては、あまり善い印象を与えられないであろうと云うことです。
人事と云うのは、社会人的な目線では大きなことに見えます。ですが、実際には、トップが詰め腹を切ることではなく、会社が方針を転換し、それをちゃんと広報し、その方針に従った良い製品を出して行くことでないと取り返せない名声・信用と云うモノが、あると思います。
雪印を筆頭に、このところ引き続く、三菱ふそう・NHK等の例を見れば、国民的企業と信用されていた会社・組織が、誰からも不信の眼で見られるようになるのに、時間はかかりません。トップ1人のトラブル対応の拙さで充分です。
しかし、その汚名を返上するのは、簡単ではありません。
久多良木さんが、本当に次期エースであるならば、そこのところをちゃんとクリアして、返り咲いて頂きたいものです。
投稿: 神北恵太 | 2005/03/09 13:30