ドイツ版『老人Z』じじいだぞ
初出1991年の劇場公開作だそうなので、この神北情報局の若い読者の中には、そんな作品見たことも聞いたことも無いという方も居られるかもしれないが、大友克洋×江口寿史のコラボレーション作品として一時代を開いたアニメがあった。『老人Z』。
ソニーミュージックからDVDも出ているし、ネット配信業者でも、バンダイチャンネルをはじめ、幾つかのところで取り扱っているので、今のところ、観ようと思えばいつでも観られる「現役アニメ」だ。
全自動介護ベッド試作品、Z-001号。小型原子炉を動力源に、あらゆる介護作業と娯楽とを集結させた、独居寝たきり老人対策の切り札であった。
が、高沢老人を乗せたまま、このベッドは、文字通り暴走を開始する。「海が見たい」という老人の願いを叶えるために。なんと、この介護ベッド、計画未採用となった米軍の自動戦車のCPUと基礎ソフトがそのまま流用されていた。そのため、あらゆる妨害を積極的に退けて走り続ける。高沢老人と妻の思い出の海へ向かって。
看護学生で、ボランティア実習として高沢老人の介護をしていた晴子は、仲間の協力を受け、老人救出のため、行動を開始する。
1990
年代初頭、ソ連崩壊の衝撃さめやらぬ頃、日本はバブルの絶頂と崩壊、社会のひずみの生み出した独居老人問題、そして、まもなく来ると噂されていた老老介護
の問題など、社会問題に事欠かない状態にあった。(無論、それから約15年間、その一つとして解決していないどころか、問題は増える一方なのだから、た
まったものではない。)
そんな時代の空気を巧みに取り入れ、いかにも近い将来ありそうな自動介護用ロボットベッドに、どんな予算をひっくり返してもあり得そうにない軍事技術の
流用というエッセンスをチョチョイと振りかけただけで、大暴走映画に仕立ててしまう大友克洋のセンスと、軽妙洒脱な江口寿史のキャラ達が、実に活き活きと
している。ぜひ機会があったら見てみていただきたい。
……て終わったら、単なる映画紹介になってしまう。これは、ニュースの話である。exciteニュースの世界びっくりニュースに2005年7月27日、『ドイツの高速道路を電動車いすで走る老人、保護される』というニュースが載った。
[ベルリン 25日 ロイター] ドイツで、高速道路を走るトラック運転手たちがショックを受けた。彼らが目にしたのは脇を車いすでのろのろ走る80歳の年金生活者だった。
東部の街ゲルリッツの警察広報が火曜日に述べた。
「彼は、高速道路のサービスエリアに買い物に行こうとしたのです。最高時速6から10キロの電動車椅子で、路肩を走りました」
うーむ。この爺さんは、別に「海が見たい」訳ではなかったようだし、ベッドが勝手に走り出したワケでもないのだが……。
ちなみに、この暴走車椅子爺さん、高速を降りたところで警官隊にトッ捕まった。ちなみに連れ戻された先は、数キロ離れた養老院。ということは、電動車椅子(といっても、最高時速6から10キロってことは早足か、軽く走っているぐらいのスピードなんだろうなぁ)でそれだけの距離を踏破したってこと。並みの徘徊老人じゃないよこれは……。
残念なことに、記事は、この爺さんが何を買いたかったのかは伝えていないが、チョイと知りたいかも。
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コメント
「老人Z」懐かしいですね。 (笑)
横山智佐のデビュー作だと聞いた事があります。
(ホントがどうかは未確認(^_^;)
あアニメは妙な面白さがあって好きでした。
江口寿史の絵も好きだったし。 (^_^)
投稿: 牛丼仮面 | 2005/07/29 07:52
宇宙艦まるごと養老院にしてる映画もあったねえ。
ところで万博に行くと下り坂を高速でコーナリングしていく馬鹿者の車いすと、
必死で追い掛ける介助者という図が見られるそーです。
投稿: 森野人 | 2005/07/29 08:43
自動車の自動走行機能&運転者認証の開発が進むと、とんでもない距離を徘徊する方が増えてしまうのでは、と自分で考えていて恐ろしくなりました。
「運転に必要な身体能力が明らかに無くなっている」高齢者による事故が多くなっているのに、温い対応に留まる現状を見れば、免許制度の改正が技術のスピードに追いつかないのは目に見えてますし。
「ふと横の車を覗くとぶっ飛んだじいさんが……」って展開で、『サイボーグ爺ちゃんG』の方が出てきた私はたぶんマイノリティ。
投稿: omata | 2005/07/29 10:50