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2005/09/29

大王烏賊だぞ

 昨夕から、就寝を挿んで今日の昼前まで、ずっと書いていた『修羅鏡 白凰坊伝綺帖』の書評が、スっ飛んでしまった。このままあきらめては、今ごろ苦止縷得宗妖術修羅偏在で、一気呵成に次回作を押し込んでいる朝松さんに申し訳が立たないので、書評に関しては、またおりを見て書かせて頂くこととしよう。
 てわけで、朝松さんと言えばクトゥルフ神話。クトゥルフと言えば、イカ・タコということで、イカの話題。 

 大王烏賊、ダイオウイカをご存知だろうか。深海まで潜るマッコウクジラの胃袋等から巨大なイカの足が見つかるのは昔からあったことで、船を海中に引きずり込むクラーケン(海魔)として存在を噂されつつも、今まで一例も生きたまま捕捉されたことがなかった謎の生物(ってイカだけど)である。
 映画好きの方には、『ジョーズ』原作のピーター=ベンチュリーが自らの原作を基にメガホンを取った『ザ・ビースト』を思い出すかも知れない。
 残念なことに、このダイオウイカ。8メートルから20メートル近い巨大なものまで居ると言われつつも、深海生物ゆえ、生きている姿をキャッチされたことが無かった。
 それが、2005年9月28日のCNNに掲載された『巨大イカを世界で初撮影 日本人研究者チーム』という記事によると、ついにダイオウイカが生きて泳ぐ姿が撮影されたらしい。

東京(AP)
 生態がよくわかっていない巨大イカ(ダイオウイカ)の生きたままの姿を、日本人研究者たちが世界で初めて撮影した。深海で獲物を追う様子をカメラに収め、英科学雑誌に発表した。
 国立科学博物館の窪寺恒己氏が率いるチームが、日本の沖合の深さ約900メートルの深海で、全長約8メートルのダイオウイカを撮影した。

 うーむ。これは、凄いな。昨年10月に遠隔操作のカメラで捉えたというだけなので詳細は判らないが、有線観測器を降ろしたか、自力航行式のロボット潜水艇を使ったのだろう。「ダイオウイカは動きが比較的不活発だと信じられてきたが、我々が映像に収めたイカは、巨大な触手を使って活発に獲物を追いかけていた」という説明が、この映像が如何に画期的な観測であったかを語っている。
 うーむ。基本的にイカの補食活動は活発なものだが、ダイオウイカもそうなのかー。なんか、全長8メートルのイカが俊敏に獲物を襲うのって、もはや怪物かもね。

 ちなみに、好事家のために付け加えておくと、深海の圧力に対抗するため、ダイオウイカの身体には多量のアンモニアが含まれており、臭くて食用には適さないんだそうである。スルメ一生分とか、超巨大イカトックリを夢想した諸氏は、反省すべし。

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コメント

アンモニアを体内に持つのは、深海の圧力に対抗するためではなく、浮力として使っているのです。
一般的に、軟体動物は海水より重く、泳いで揚力を得るか、海底で棲息します。深海に棲むダイオウイカも、そのままでは沈んでしまうため、海水より軽いアンモニアを体内に蓄積するのです。

投稿: 八潮 | 2005/09/29 15:27

八潮 さま

 あー。ちゃんと書いてなかったすね。すみません。「空気の入った浮き袋では圧力でへしゃげて役に立たない深海なので、空気の代わりに水より軽いアンモリアを……」ってなコト書こうとしてたんですが、はしょり過ぎました。

投稿: 神北恵太 | 2005/09/29 18:18

画像、ニュースで見ましたよ。
30秒おきの画像なので、超中抜きの動画状態でしたが、口の手前(足の先側)からの画像で、引っかかった腕を外そうと、十本の足を開いたり閉じたりともがいていました。

が、対象物がないので、あまりその画像から大きさの実感はなかったですが、引き上げられたちぎれた腕の太さと吸盤のでかさは流石でした。

でも、ゲソラほどでかくはなくて、ちょっともの足りないよーな。(爆)

投稿: かざま | 2005/09/29 20:53

 こんばんは。
 撮影はナイロン糸に餌とカメラをぶら下げて行ったそうです。

>ダイオウイカの深海での生態…国立科博チームが初撮影
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20050928i405.htm

 簡単にいえば一本釣りですね。
 ダイオウイカは図体がデカ過ぎるので、クラゲのように動きが不活発と考えている生物学者が多かったようです。でもマッコウクジラなんかに吸盤の跡が残っていた例もあるらしい。
 深海水族館みたいなものができて、生きているダイオウイカが生で見られるようになると、うれしいんですがねぇ。

投稿: 東部戦線 | 2005/09/29 21:02

深海生物の場合、浮力を得るのに浮き袋が使えません。
脊椎動物は油脂を浮力剤に使います。鯨油なんかがこの例です。
一方、無脊椎動物の場合は、油脂の蓄積がありません。全て消化吸収してしまうか、分解します。有機化合物のバラストはその新陳代謝(変温動物)からできないのです。そこで、一番手軽にできるアンモニアを使うようになります。
ちなみに、イカの養殖に難しさは、このアンモニア問題なのです。神経を研究するためにイカの養殖に成功した理研の市川博士は、生物学の分野からも注目をあつめました。

投稿: 八潮 | 2005/09/29 21:42

かざま さま

 うーむ。ゲソラみたいなダイオウイカがここ何年かの日本海のエチゼンクラゲみたいに、日本海溝で大量発生して、食い物を求めて浅海に出たついでに、海中で足りない餌を地表に求めるようになって、沿岸地方を荒し回るようになると、ちょっと嫌なので、その想像は止めておきましょう。(^_^;)

東部戦線 さま

 ああ、お手製のシステムなんですね。900メートルのナイロン糸で、ダイオウイカの生態が撮れるのか。凄い創意工夫でしたよね。
 ちなみに、イカがイカの形状して海中に居る以上、ダイオウイカも、わりと素早く積極的な補食をするのではないかと云う気はしていたんですよ。シロート考えでも、当たることはあるようです。

八潮 さま

 貝類は随分養殖されてますが、親類筋の筈のイカは意外と難しかったんですね。知りませんでした。

投稿: 神北恵太 | 2005/09/29 23:08

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