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2005/09/30

宇宙へ一歩だぞ

 MYCOM PCWebのニュースに、2005年9月28日、『上空を舞う気球より伸びるケーブルで、宇宙エレベータのテストに初成功!』という記事が載った。

 「軌道塔」ではなく、あくまでも「軌道エレベータ」である。太平洋赤道上のポイントから静止軌道の向こうに向けて、10万キロメートルものカーボンナノチューブ製のエレベーターケーブルを張り渡し、その上を自律式のエレベーターケージが上下するという計画だ。

 米LiftPort Groupは、同社が独自に開発を進める、地球と宇宙空間を結ぶエレベーター「LiftPort Space Elevator」の、初の上空での昇降テストに成功したとの発表を行った。今秋中にも、次なるテストを実施して、さらに開発を進めていく方針が明らかにされている。

 LiftPort Space Elevatorは、ロボットタイプのリフター「Robotic Lifter」を用いて、地球と宇宙空間を結ぶカーボン・ナノチューブ製のエレベーターケーブル上で、スムーズな昇降を可能にするとされており、第1号機では、太平洋上の赤道付近に建造される海上プラットフォームから、約62,000マイル(約10万キロメートル)上空の宇宙空間を目指すとのコンセプトが明らかにされている。完成時のRobotic Lifterには、1度に7人が乗車できるようで、1日に最大で5トンの資材を運搬する能力が備えられるという。

 スペースシャトルが約28トンの積載量を持つことと比較して、この1日5トンという積載量は割と小さく感じられるかも知れない。しかし、静止軌道を遥かに越えた10万キロメートル彼方まで運ぶのである。シャトルの28トンは、精々が高度250キロメートル程度まであり、高度450キロの国際ステーションに運び込める資材はもっともっと少ないのだ。無論、静止軌道の向こう側までなど運べるものではない。空荷のシャトルですら、そんな高度まで行ったことはないのである。それを1日5トンなどという大質量でやってみせるのだとしたら、宇宙開発にとって、ちょっとばかし大きな一歩になるだろう。

 とはいえ、第1回目は高度150フィート(約45.7メートル)まで、第2回目は高度 550フィート(約167.6メートル)まで、そして、第3回目には高度約1,000フィート(約304.8メートル)に達するレベルでの昇降テストが、無事に終了したとアナウンスされている。という程度の実験成功でしかない。リフターは、現状の33万倍の距離を登り降りし続けなければならないのだ。また。計画の謳う10万キロメートル(せめて、遠端側に錘りを付けて距離を稼いだとしても5〜6万キロメートル)の長さのエレベーターケーブルが製造・維持出来るかという問題や、テストの上昇距離の延長。実物サイズのリフターの性能テスト等、通り抜けるべき難関は数多い。

 しかし、なんとかこれ出来ねーかな〜。

 この7人乗りのリフターに、ガイドを兼ねる操縦担当技術者、シェフ、ウェイターと、4人ほどの客を乗せて、静止衛星軌道の向こう側に抜けるのだ。ピンと張られたカーボンナノチューブの静止衛星軌道の向こう側は、地球の自転による遠心力によって、外側が(体感上)下になる。半日掛けて登って行き、真上に地球を眺めながら、優雅にディナー。そして、半日掛けて降りて来る。わりと面白い見せ物に出来るんじゃないかと思うんだが…。

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コメント

せんせー、これは糸電話に使えますか?

投稿: 森野人 | 2005/09/30 15:19

森野人 さま

 はい、いい質問ね。一応真面目にカーボンナノチューブ内の音速がね、タテ波が13.8km/sで、ヨコ波が5.7km/sという数値をネット上で見つけたのよ。見つけたんだけど、早い方のタテ波で送れたとしても、10万キロ先までは、約7250秒。ヨコ波だと約17550秒ほど掛かって、電話が届くのね。タテ波で2時間チョイ、ヨコ波で5時間弱かかるのね。
 先生、これじゃあお返事待っていられない気がするの。
 しかも、リフターのいる位置によって、どのぐらいで返事が返って来るのかもどんどん変わるわけよね。そうすると、「もしも〜し」って言ったものの、「はいは〜い」っていうお返事を聞き逃しちゃうこともあると思うの。そうすると、タチの悪いワン切り電話(このお返事書いている間にも、ちょうど一本かかって来たわ)みたくなっちゃうわけ。しかも、タテ波で既に話したことがヨコ波でもう一度後から伝わって来たり、手の込んだイタズラ電話見たくなっちゃうと思うのよ。
 だから、あまり糸電話にはお奨め出来ないって言うのが、正直な感想ね。

投稿: 神北恵太 | 2005/09/30 16:23

静止軌道に5トンの投入重量ということは、同2トンのH-IIA級ロケットのほぼ2倍半の能力ということになります。
すんげーおーざっぱな数字だが、静止軌道まで持って上がれるのは低軌道へ投入可能な重量のほぼ5分の1だと思ってくれい。低軌道の軌道速度から、静止軌道、あるいは地球脱出速度への加速に、自重のさらに4倍の推進剤がいるってことだ。

軌道エレベーターが建設可能な素材があれば、単段式宇宙機でもなんでもたいていの航空宇宙の夢は実現可能になるってあたりがちょいと問題だけど、でも、今のところ一番確実に宇宙を目指す手段であることは間違いない。なにせ、実現すればロケットどころか電車並みのコストで軌道にものを投入できますからな。

投稿: 笹本祐一 | 2005/09/30 16:51

笹本祐一 さま

 まあ、意味の無い計算ですが、「電車並み」という言葉が出たので、面白がって3万6千キロの電車運賃、いくらになるかちょっと調べてみました。(つまり、意味の無い蛇足です。)
 JR一筆書き乗りのページで見た数字で、そのページの作者が自作した運賃計算プログラムで計算すると「全行程11158キロで、運賃は大人90820円、有効日数は57日」(2004年3月現在)だそうです。静止軌道まではこの3.4倍なので、単純計算で3.4倍して、31万円ほど。往復60万円チョイで人一人と手荷物を静止軌道まで上げて、降ろせるとすると、なんか「宇宙旅行も身近になったわねぇ」ってな感じがしますねぇ。

最長片道きっぷの経路を求める [付録2-1] 2004年3月版(経路編)
http://www.swa.gr.jp/lop/lop_a021.html

投稿: 神北恵太 | 2005/09/30 18:08

ふむ。糸電話は無理か。
じゃあ、軌道エレベーターいっぱい並べて、それぞれ所定の位置にカーゴ止めてでっかい弦楽器に・・・無理か。
風は軌道エレベータにどんな共振を起こすかな。極低周波の騒音公害とか起きないかしらん。

>電車並み
軌道エレベーター内で酔っ払いに絡まれている女性を助けた特殊な趣味の青年が・・・(略

JRの運賃って高度差も考慮してあるのだろうか?
もしジオイド面に投影した距離だとすると運賃は只になるのか、それとも地球の回転分を考えてとんでもない額になるのか・・・あ、そもそも鉛直にならんか。

他にも軌道ヨーヨーとか、軌道足にバネのついたキツツキがケーブルつつきながら降りて来るアレとか、地下軌道エレベーターとか思いついたけどどれも多少難有りですなあ。

投稿: 森野人 | 2005/09/30 21:50

森野人 さま

 うーむ。キツツキいいなぁ。降りて来て、だんだん空気が濃くなって来ると、鈴が鳴り始めるのな……。

投稿: 神北恵太 | 2005/09/30 23:19

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