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2005/10/13

地獄に流すぞ

 『地獄少女』というアニメがある。ご存知だろうか? スタジオディーン。地上波配信は東京MXテレビと毎日放送のみ、ただし、CS波ではギッズステーションとアニマックスの2局配信なので、CS・ケーブルテレビ等を利用する方なら、全国どこに居ても試聴可能という、いかにも2005年のアニメ事情を象徴するようなアニメの一本である。
 ちなみに、漫画版の雑誌連載は『月刊なかよし』。だが、月刊誌に隔月連載という、何か微妙な熱の低さというものをそこはかとなく感じてしまう作品。

 しかし、これ、なんか凄く作画が頑張っている。割と好みの絵が動いているのだ。しかし……。

 いくらなんでも、2回見ただけで結論を出すのは早すぎる事は判っている。判っているのだが、あえて云いたい。この『地獄少女』いくらなんでも、お話しがちょっとナニである。

 お話しは単純。閻魔あいという謎の美少女が毎回登場し、世間のあちこちで、いじめやストーキングに苦しめられている人に成り代わって、罪人共を地獄に送るというお話しなのだ。
 第1話は、クラスのお金を落とした事を黙っておく代わりにネチネチといじめを繰り返すクラスの女王様の話。第2話はストーカー警官の話。どちらも、気の弱い少女が苦しい立場に追い込まれ、藁をもすがるつもりで午前零時だけ開いているWebサイト『地獄通信』に書き込むと、閻魔あいが現れて、黒い藁人形を渡して行く。
 この藁人形に巻かれた赤い糸をはずせば契約成立。ただし、人を呪わば穴二つ、契約を成立させた以上、その娘たちを苦しめていた罪人たちは地獄に送られるが、契約を交わした娘たちも、やがて地獄に堕ちるさだめとなる。
 で、骨女輪入道一目連といった仲間と共に、閻魔あいは、罪人を地獄に流す。
 ラスト、将来の地獄行きと引き換えに、つかの間、この世の生き地獄から開放された少女の胸元には、契約の証の紋が、鮮やかに浮かび上がっていた……。

 てな感じ。
 似たようなものは、既存のテレビエンターテイメントの中に、大きく別けて2種類ほどある。ひとつは『京極夏彦 巷説百物語』『ゲゲゲの鬼太郎』といった、人外のモノがなす障りを人外のモノがただして行くようなお話し。いわば『妖怪退治モノ』という言い方が出来ようか。今ひとつは、『必殺仕事人』『Weiβkreuz(ヴァイスクロイツ)』といった、法で裁けぬ悪人を闇で捌く、『闇仕事モノ』である。

 しかし、なんっていうかなぁ、この『地獄少女』、今のところ、どっちの爽快感も無いんだよねぇ。理由を挙げると以下のような感じかな?

1.理不尽に苦しめられていた被害者が、結局、地獄に堕ちる(らしい)こと。
2.閻魔あい御一行は、妖力のようなものが使えて、罪人たちより超絶的に有利。
3.結局、何の権限でこんな事をしているのか、いっさい謎であること。

 たとえば、仕事人は、闇の仕事なので、法的に何の権限も持っていない。しかし、悪人に対する怒りから闇仕事に走る。無論それは悪人たちの裏を掻くワケだが、反撃も受けるし、奉行所から見れば単なる殺人犯。捕まれば即お縄という危険をかい潜って晴らせぬ恨みを晴らしてやり、彼等は対価に大金をせしめる。

 しかし、閻魔あいは、何を対価にせしめているのだろうか? 何か仕事上の危険に身をさらしているのだろうか?
 彼女が恨みを晴らす代わりに死んだら地獄に堕ちる契約をさせるのは、サラ金地獄のまっただ中に闇金業者がやって来て「うちがお金を融通しましょう」と菩薩顔で囁き、後で内蔵を売り払うのと、どこが違うのだ?

 妖力を使う仕事人で、自分は絶対安全圏から罪人と被害者を地獄に流すだけというのは、お話しとしてどうよ?

 最初は、何かアクシデントがあって、「被害者との契約とは関係ないところで悪人が捌かれる事になったから、アンタの魂は取らねーよ」みたいな成り行きで、被害者に平穏が訪れるという話かと思っていたのだ。しかし、そうではなかった。

 教訓=悪い奴に対し、復讐してもロクなことはない。

 いや、まぁねぇ。そりゃ、社会ってモンは、実際にはそう出来てますけどさ。そういうコトでは、物語のカタルシスというか、ドラマの決着が、なんか妙に据わりが悪い。折角、若くして人生の辛酸を嘗めさせられている各話の主人公たちの目の前に、この世の外からのスーパーパワーが現れたって云うのに、結論が「長いものには巻かれとけ、お前が弱いんだから辛抱しろ」では、残尿感アリアリである。

 ま、とはいえ、まだ2話しか放映されていないのだ。今後、こういう地獄に落とされる事が決まっている契約者が何人も溜まったところで、こういう人達を横に繋いで大きな物語が動き出すという事は、充分に考えられる。
 いや、そうでなくては、ちょっち、辛いのである。絵が物凄く気に入っているだけに、このシナリオは……。

 それともこれは何かね、東京都のお金を出しているMXTVだから、「イジメすると地獄に行くよ」「イジメを短絡的に解決しようとしても地獄に行くよ」と、ちょっとしたことで切れ易い、突発的に人命に関わるような事件を起こしてしまい易い、今の中高生に対し、教育でもするつもりなのかね?

 まさか、ね。

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コメント

この作品どうも「巷説百物語」に似てるような気がしてなりません。
まあ、それはいいんですが……。

これたしか26話予定でしょ。
最後の方には、地獄に堕ちた依頼者たちが
集まって裁くのを手伝うようになるとかいう
話になるんじゃないかと期待してるんですが。
期待しすぎですか、そうですか……。

依頼者が女の子ばっかりでいくならすごいなと
思っていたら次回もう違うみたいだし(^^;

投稿: 大外郎 | 2005/10/13 05:36

「スカイ・ハイ」でしたっけ、
この世に恨みを残したまま死んだ人間の魂に
選択を迫るお姉ちゃんの物語。

再生の道を選び天国に行くか
この世に留まり永遠に彷徨うか
誰かを呪い殺して地獄に落ちるか

こっちの方が分かりやすいけど、
今の子供達は
「自分に代わって」「誰かがおしおき」してくれる世界を
願っているのかも知れません。
作者と編集者の意見がそこで合ったのでは?

投稿: ちょま | 2005/10/13 08:25

大外郎 さま

> 最後の方には、地獄に堕ちた依頼者たちが
> 集まって裁くのを手伝うようになるとかいう
> 話になるんじゃないかと期待してるんですが。

 私もそれは考えました。というより、あのまま「死んだら地獄に堕ちる候補者」ばかり増えて行くというのは、意味がなさ過ぎ。なんとか彼等に救われる唏会があってもらいたいと思います。だから、まだ第2話までで結論を出せない、出すべきではない、とは思うんですよ。
 僕らは、『ダメおやじ』が、「毎回主人公がズタボロになる、PTAが目の敵にするへんなギャグ漫画」から、何年もかけて「人生の真実を求める、くたびれた男のドラマ」になり、「うんちく漫画のさきがけ」として幕を閉じるのに付き合って来た訳だから、まあ、辛抱強い方だと思います。
 でも、なんか、第一話を見た時の映像的なカッコ良さと、それに反するキャラクターの浅さ・物語のご都合主義が、結局上手くお話しに繋がるコト無く最終回まで続いた、『仮面ライダー555』とか『ガンダムSEED Destiny』とかを見ていると、どこまで信用していいのやらという危惧も感じるのですよ。
 今の、とにかく悪人を地獄に流して、依頼人に地獄堕ちの烙印を付けて回る話から、一歩先に抜け始めるのはどこか。今、一番楽しみにしているのは、そのポイントが何話目に来るかという事と、その先話がどう転がって行くかというところですねぇ。

ちょま さま

 スカイ・ハイは、特生自衛隊員・家城茜こと釈由美子の出自の謎とかを大回しにして、「満たされないけど救われる道」「救われないけど満たされる道」そして「そのどちらでもなく、誰も手を貸さないが拘束もされない道」の3つを本人に選ばせるというパターンで、亡者が「救われる道」を自ら決めています。
 でも、毎日いじめやストーキング、ハラスメントを受け続けている被害者に「後の事はともかく、一時は楽になる」のと「このまま生き地獄」とどっちがいいと選ばせるのは、上にも書きましたが、「周りが見えなくなっている借金苦の人から、さらに金をむしり取ろうとするウラ金業者」と同じではないでしょうか?
 いや、もちろんそういう姑息な事をしてでも、自分の目的のためのチーム要員を増やすようなキャラクターが在ってもいいんですよ。『週刊少年ジャンプ』連載中の『アイシールド21』や『魔神探偵脳噛みネウロ』なんかは、そういうキャラクターが大きなキーマンになってお話が回っています。
 しかし、主人公の閻魔あいは、「閻魔」を名乗るぐらいですから、公平でなければなりません。多分にミスリードを誘うような「悪い状況」と「もっと悪い状況」どっちがいい? というのは、ここまで語られた物語世界の中では、依頼があって初めて動けるという枷はあるものの、万能の裁定者にして刑執行人であるトコロの彼女が、立場上最も仕掛けてはいかん、「姑息な罠」ってヤツではないのでしょうか?

投稿: 神北恵太 | 2005/10/13 15:09

私もこれは『スカイ・ハイ』の方を連想しました。で、比べて、こちらの方が出来が悪いと感じた。
まずなによりも、「人を呪わば穴ふたつ」が、いささか間違って使われているというのが気になる。この作品の作りかただと、
「いじめられていても、加害者を呪うと、自分も呪われちゃうよ」
と受け取れる。それはそれで正論ではあるのだが、じゃあ、どうすれば良いのか? という事が示されないのはイカンだろうと(笑)。
閻魔あいの正体がわからない為、彼女がここで、公平に問題を取り扱わなくてはいけない、という意見は私は保留する。そのかわり、なぜ閻魔あいがかような行動をとるのかということは、なるべく早いうちから示唆していってほしいものだと思う! でないと、作品に納得がいかないから。

投稿: とら | 2005/10/13 15:37

とら さま

 いらっしゃいまし。
 30分という枠の中で何を語って行けるのかという事は、非常に難しいようです。最近、長編映画を放映時間単位にただ切って並べたような、一話ごとの起承転結もウリも何も無い話が増えてしまっているのは、作品全体の流れを決める構成部署はともかく、そういう才能を持った各話の脚本家の人材不足に起因しているのか、DVDボックスとかで売る事のみを考えているので、受け手は続けて見ると計算しているのか、その両方なのかよく判りませんが、そういうちと辛い(イタい)シナリオが横行している気がします。
 この地獄少女も、視聴者にどこまで辛抱させるつもりなのかよく判らないのですが、このまま行くとちょっとキツいですね。出来れば4話以内の放映開始からひと月弱、間違っても8話の2ヶ月以内に、なにか謎が解き明かされるような話が入らないと、先に何が待っているにせよ、イタい作品に認定しちゃいそうです。
 絵が気に入っているだけに、辛いなぁ。

投稿: 神北恵太 | 2005/10/13 16:14

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