もうちょっとだぞ
DVDが発売になったので、スタジオマガラの『惑星大怪獣ネガドン』を見た。
たしかに、テイストはよく出来ている。話も、短いながらもわりかし面白い。まあ、全ての怪獣少年に捧げたくなる気持ちも良く判る。
が、まあ、シロウト作品だなぁというか、監督若過ぎという感じ。残念ながら、昭和30〜40年代の空気感を真似しようとして、カスっている所が多い。
江戸時代の人間が、現代の時代劇を見せられたら、こう感じるのかもしれない。何とも云えない「そうじゃない」感が残った。
こういう感覚を持つのも、2005年4月14日に『アンバランスゾーンだぞ』のタイトルでこの日記に書いた、荻窪東宝さんの『ウルトラQ 「盗まれた時間」』という名作があるからだ。
また、空気感ということにおいては、中村犬蔵さんの『デンキネコ』シリーズも、非常に良く時代感を出していると思う。
このお二人と、粟津順監督の差は何かというと、残念ながら、多分、年格好ということになるのではなかろうか。2002年に専門学校生という話だからまだお若く、その時代を全く知らないのが、このジャンルに切り込む上での非常に大きなデメリットになっているように感じる。
いや、大したことではないのだ。しかし、「ああ、今の若い人が時代錯誤を起こすと、こうなるか」というコトが、いくつも散見されて、悲しい。
たとえば、昭和30年代の人間の考えた(映画に出て来る)昭和100年って、ああはならんのじゃないかと云うこと。
民家の建ち並ぶ町並みが木造在来工法の日本家屋で変化していない点は別に良い。しかし、迎撃に出るジェット機が、なんかF-104スターファイターなのはどうよ? もっと未来っぽいデザインというか、ムーンライトSY-3号テイストの単座機になるんじゃないかなぁ。
また、ディスプレイ上の文字表示が、英数半角文字が非常にありがちなドット文字、漢字が出ると急に美麗な極太ゴシックというのも、ナンダカナァという感じ。ファミコンもテーブルテニスも何もなかった昭和40年頃、まだ、日本人はドット文字というものを知らなかった時代。だから画面に出るテロップ文字として日本人がイメージしていたものは、ああではない。折角作り込んでいても、その文字一つで時代の空気観がガラガラと壊れてしまう。
同じような感覚を持ったのが、劇中で若い研究者が口にする「ヤバい」。んー。チンピラやヤクザでなく、研究者が口にする言葉として、どうよ? 女性アイドルまで「ヤバい」を連発するような普通の若者言葉になった今では信じられないだろうが、ついこないだまで「真っ当な職業に就いている人が公の場で口にすることの無い裏社会の隠語」だったんだぞ。
さらに、主人公ロボのMI6(みろく)二号のコクピットの無線機用のマイク。昭和50年代の学校の職員室に置かれた校内放送用マイクじゃないんだしさ。プラにせずに、もっと古い形のものを使って欲しい。ここいらへん、今から見ると古そうなものなのかも知れんが、あの「昭和100年」にはちょっとねぇ。
重ねてもう一つ、爆発である。スターウォーズあたりから定番になっている、光のリングがばぁっと拡散するヤツ。しかも、鮮やかなグリーン。むー。最近はゴジラ映画でも使っている一種の記号だけどさ、この表現は元来、旧き良き日本の特撮の爆発表現ではないんだよなぁ…。
ただ、まあ、不満は多いものの、これだけのものをコツコツと作り上げたということは、称賛に値すると思う。この監督の次回作に期待大だ。
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コメント
>昭和30〜40年代の空気感
やはり、今は「ALWAYS 三丁目の夕日」しかないでしょうね。
いや、 がメインの映画じゃないんですが :-)
投稿: 長田 | 2005/12/16 23:35
長田 さま
アレはねぇ。山崎貴監督ですからねぇ。別格ッス。
2004年の日本SF大会のスタッフにくっついて行って一度お話しさせていただいたことがあるんですが、我々世代のSFファンの右代表のような人です。で、作品に対して本当に真面目。まあ、これは僕が云うまでもなく、『ジュヴナイル『や『リターナー』のSFマインドを見れば、どのぐらい、「真っ向勝負」の「正面突破」をやっちゃう人か判るでしょうがね。
投稿: 神北恵太 | 2005/12/17 00:55