あの顔は読めないぞ
昨夏、ホリエモンが武部幹事長の次男に3000万円振り込むよう社内で指示していたという話を民主党が掘り起こして来た。
中日新聞の2006年2月16日の記事『「武部氏二男に3000万円」 堀江被告が振り込みを指示 民主・永田氏が衆院予算委で指摘』では、こう報じられている。
民主党の永田寿康衆院議員は十六日午前の衆院予算委員会で、ライブドア前社長の堀江貴文被告が昨年八月二十六日付の社内メールで、自民党の武部勤幹事長の二男に選挙コンサルタント名目で三千万円振り込むよう指示したと追及した。
永田氏が読み上げたメールのコピーでは「至急扱いで処理してほしいんだけど、遅くとも三十一日できれば二十九日までに(武部氏の二男あてに)三千万円振 り込むよう手配してください。前回、振り込んだ口座と同じでOK。項目は選挙コンサルティング費で処理してね」などと記してあった。
まあ、武部さんが政治家であることはよく知っているが、息子さんが何をしている人かは知らないし、「選挙コンサルティング費」と明記しているので、この一文だけでは正統な報酬ではない等と軽々しく言うことではない。
というか、普通、政治家家族を経由した隠し献金であるならば、「選挙コンサルティング費」なんて書かないで、もうちょっと項目を考えるんじゃないかと思うでしょう?
これに関する各人の発言をTBSのNEWSiの同じく2006年2月16日の記事『「武部氏二男へ送金指示」民主議員指摘』が上手く纏めている。
「ライブドアの社内でやりとりしたメールをご紹介したいと思います。堀江前社長が、社内で社員に対して指示を出したメールであります。武部さんの二男に3000万円を振り込めと、そういう指示なんです」
「(武部幹事長が)わが息子ですと持ち上げた人と、実の息子が3000万円のやりとりをしているという指示が、堀江被告からのメールに書いてある。お金のやりとりがあったから、選挙の応援に行ったのではないでしょうか」
(民主党・永田寿康議員)
「そのメールの写しを持っているだけで、公の場でこれだけのことをおっしゃるのはいかがなことかと思うのですが」
(二階俊博経産相<当時の自民党選挙担当>)
「予算委員会の理事が私の息子と連絡を取り、そういう事実はまったくないということですので、そのことだけ明確にしておきます」
(自民党・武部勤幹事長)
「武部さんの幹事長の資質というのは非常に大きな問題がある。自民党の幹事長ですから、その任命権者である小泉さんの責任も含めて、党を挙げて一生懸命に、この問題については追及していきたいという風に思いますので」
(民主党・前原誠司代表)
「ガセネタをもとに、委員会で取り上げるのは、おかしいと思いますけどね。(Q.根拠がないというのは?)武部幹事長がそう言ってましたよ」
(小泉首相)
「弟、息子」と持ち上げてから半年と経たぬ間に「騙された」という無責任ぶりは、この際、ワキに置いておく。
「党として公認しなくてよかった」発言も、自民党側が公認したがっていたのだが、堀江側がライブドア社長職を退くわけにはいかないのでと断っていただけだという話も、まあ、このさい置いておこう。
たしかに、個人の口座の取引内容は、ヒョイヒョイと見せてよいものではない。国民の範たる政治家ともなれば、そういうことを軽々しくすべきではないという意向もあろう。しかも、民主党の指摘によると振込先は、本人名義の講座ですらない。息子とはいえ別人格、一市民であるのだから、誰かが「見せろ」と云うのもおかしなことかも知れない。
しかし、武部さんが、自らの身の潔白、(本当の)息子の身の潔白を証明するためには、息子さんと図ってその指示された口座番号とやらを確認し、通帳の該当部分のコピーなり、銀行からその前後の取引の記録を取り寄せれば済むことではないのか? 武部さんも、息子さんも、こんな疑惑に何日も曝されているより、8月26日〜31日、場合によっては(振込が遅れた可能性を考慮して)後何日か分を見せて、パパっと終わらせてしまう方が、よほど建設的に感じる。
謎なのは、二階さんの発言。公の場で言わなければ、どうしろというのだろうか? 怪文書としてマスコミ各社にでも流すのか?
相手は「秘密の情報源からそういうメールの記録を入手した。事実はどうなんだ?」と問いただしているのであって、「武部幹事長が息子を通して献金を受け取っている」と明言しているのではないのだ。問題ないのなら、問題ない証拠を見せて「それはありません」というだけで良いのに、永田議員や民主党への過剰な人格攻撃とも取れる発言をされるのは、それこそ如何なものか。
また「そのメールの写しを持っているだけ」というが、メールというものは電子情報であり、すべからく写しなわけだから、現物が確保されているのであれば「写しだから信用出来ない」ということは一切無い。だいたい、社内メールの指示が何であろうが、ホリエモンがライブドアに振り込ませていようが、武部さんは毅然と断っているとか、「この金を貰う謂れは無い」と突き返しているかもしれないではないか。
また、首相も、本当であったら大変な事態を、いくら自陣営の盟友とはいえ当事者の「ない」という発言だけを理由として、「ガセネタ」と決めつけるのも、早計過ぎはしないか?
ただ、一番気になるのは、武部議員の発言態度だ。わりと淡々と事実無根を訴えている。この人は、わりと元気のいい(というより、熱意のあまり吼えるという方が相応しいかもしれない)政治家だと思っていたので、映像の態度は常の武部さんらしくないと感じた。
あまりにも酷い捏造に、返って醒めているのだろうか?
あまりにもマズ過ぎて、虚勢すら張れないのであろうか?
テレビニュースの映像からでは、その心中は全く読み切れなかった。
でも、心中が読み辛い政治家ってことに関しては、小泉首相と前原民主党代表もナカナカのものなんだけどね。
そんなことより、国会では別にもっとしっかり論議すべき問題が、山積している気もする。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
>また「そのメールの写しを持っているだけ」というが、メールというものは電子情報であり、すべからく写しなわけだから、現物が確保されているのであれば「写しだから信用出来ない」ということは一切無い。
これは逆の論理も成り立つわけでして・・・・・
「電子メールは転送する度に作られるのだから、証拠能力が全く無い」ということですね。
デジタルデータには複写ではなくて複製しか無いから、時系列が要素になる「いつコピーした」「何回コピーした」という議論はするだけムダで、常に真正であるから時間的要素は関係ないというのが、著作者の主張の根幹です。
これで犯罪の証明と、無罪の証明は出来ないわけで電子すかしを付けることで真正を保証しよう、という考え方が先に出てきました。
しかし犯罪捜査や逆に無実の証明はどうするか?ということになって専門技術が開発されております。
デジタル・フォレンジック
http://e-words.jp/w/E38387E382B8E382BFE383ABE38395E382A9E383ACE383B3E382B8E38383E382AF.html
という方法で証明する必要があります。
今回の「騒動」はこのルールの部分に言及していないので「単なる言い合い」ですね。
投稿: 酔うぞ | 2006/02/17 11:02
振込みがあったことを示すには、入出金明細の中の問題の入金の一行だけわかるように公開すればすみます。しかし、無かったことを示すには該当期間の明細をすべて明らかにする必要があるので、公開はためらわれるのではないでしょうか。
仮に公開したとしても、別の口座に振り込んだり、土壇場になって現金で渡した可能性は否定できないです。
三千万円はかなり高額ですから、本当に振り込まれたとすればライブドア側に記録があると思います。あったなら、今は地検の手の中ですね。
振り込まれた側の記録も振り込んだ側の記録も、あれば「お金を渡した」という証拠になりますが、なかったとしても「お金を渡さなかった」という証拠にはならないです。
メールに関しても証言や書換不能のバックアップによって本物であることを証明できる可能性はありますが、偽物であることを証明することは非常に困難でしょう。
水掛け論になる可能性がおおきそう。
投稿: 東部戦線 | 2006/02/17 15:36
酔うぞ さま
電子メールの正当性は、確かに一概に発信日付けを見てどうこう言えるものではありませんよね。
しかし、公党たる民主党がの議員が予算委員会で発言し、追求して行く旨を党首も発言した以上、ちゃんとした証拠要件は既に揃っている——もしくは、揃えられるだけの因子は用意してある——のではないかと思っています。もしこれが不確かで立証出来なければ、民主党は完全に信用を失いますからね。
東部戦線 さま
ライブドアからの出金、もしくは、該当者の講座への入金を、全てチェックしなければ、否定証明にならないことは、その通りです。
しかし、別に、それは全て公に公開する方法でなくても良いのではないでしょうか。たとえば、衆議院議長・武部議員・永田議員・自民党党首の小泉首相・民主党党首の前原代表と司法の代表者・プラス会計の専門家ぐらいの規模で、宣誓して守秘義務を持つ特別委員会を臨時に組織し、機密下で通帳等の元資料を確認し、「あった」か「なかった」かだけ世間に公表するという方法を採れば、武部さんの息子さんの情報が一般に公開されるということなく、守秘義務を持ち任命された公人だけのチェックにより、確認することが可能でしょう。
要は、そうしてでも確認して、この話を先に進める決意を与野党が出来るかどうかだと思います。
投稿: 神北恵太 | 2006/02/17 20:06
たぶん、これはこういうことを話題にした段階で野党にワンポイントなんだと思います。非公開による調査では納得しない国民、というかマスコミはきっといます。
いったん調査となったら、プライベート暴きののぞき趣味で多くの報道が動く可能性が大きい。また、往々にして調査をうけるとか証人喚問をうけること自体が罪の証明とみなされる傾向もあります。
だから、与党としてはメールの信憑性のほうに話題をずらして、証明責任を野党に投げたいというか、マスコミの目をそらしたいんだと思います。
投稿: 東部戦線 | 2006/02/17 20:42
東部戦線 さま
引き続き金曜日も、同じ民主党の永田議員が登場し、何か次なる証拠が出るのかと思ったら、「ガセねたとはなんだ?」「証拠がなければガセだろう」みたいな無意味な応酬に終始して、与野党とも、決め球がないまま、相手の動きを見つつ次の一手を模索しているようでしたね。
ちょっと、民主党も甘いというか、たたみ掛けるべき日にもうイッパツが出ないのが、苦し気でした。
結局、東部戦線さんの言われるような、決定的証拠を見せ合うフェイズをどうセッティンナグするかという駆け引きになるんでしょうね。
投稿: 神北恵太 | 2006/02/18 01:01