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2006/02/18

イタリアで大騒ぎだぞ

 産經Webの2006年2月18日の記事『風刺画シャツでTV出演、伊閣僚解任へ リビアで領事館放火』が、チョイと痛いニュース。

 イタリアのベルルスコーニ首相は17日夜、イスラム教預言者ムハンマドの風刺漫画を印刷したTシャツを着てテレビ出演した極右政党のカルデロリ制度改革相の解任を決めた。リビアでは同日、抗議のデモ隊がイタリア領事館に放火し、警官隊との衝突で10人が死亡する事件が起きた。イタリア国内では制度改革相の言動が事件を招いたと受け止められていた。

 同時に政府は、イスラム過激派のテロに備え、トリノ冬季五輪会場や内外の政府施設の警戒強化を決めた。

 Tシャツ問題は、14日にカルデロリ氏が「イスラムとの対話などというおとぎ話は捨てる時だ。今日からこのTシャツを着る」と発言、翌日の国営テレビでワイシャツの下にTシャツを着て出演、漫画を見せた。

 この言動を16日、中東の衛星テレビ、アルジャジーラやアラブ諸国の200紙以上が報道。17日にはアラブ諸国の駐ローマ大使がフィーニ外相に会見を求め、与野党も批判。リビア北東部ベンガジでは暴徒化したデモ隊が領事館に放火した。

 イタリア人ってのは、現在自国内でオリンピックか開催されていることとか、千年単位の宗教闘争史の中でどっちが凶暴とは云えないような愚行をキリスト教徒も多数働いていることとか、今イスラムを刺激することが自国民の利になるか損になるかとか、あまり考えないのかね?

 これが、仮にも先進国と呼ばれる国の閣僚の、公に口にする言葉だとは!

 こんなくだらない舌禍で火を放たれた領事館スタッフが可哀想だ。

 日本は、宗教というのが非常にちゃらんぽらんな国で、面白ければ世界のどんな宗教の風習でも平気で取り入れて来た。クリスマスもバレンタインも、中国の節句も七夕も。だが、さすがに面白い行事を取り入れただけという皮相的な日本人でも、ひとつだけ判っていることがある。

 他人の信心をとやかく言わないこと。そして、自分の信心を押し付けないことだ。もちろん相手が信心を押し付けてきたら怒っていい。日本は20世紀前半に近隣国を領土化して宗教まで押し付けようとして、激しく怒られて学んだばかりだ。
 そこで第二次世界大戦後、日本では政教分離という考え方が出て来たが、これは信仰に関する許容範囲の一つの形であり、宗教国家であったとしても、政教分離国家であったとしても、互いの違いのひとつとして理解すれば良い。

 しかし、こういうことに、意外と気を配らない宗教観が、最近の多くのアメリカの政治家や、この元イタリア閣僚の根底に根強くある気がする。たた何かの考え方が「ある」というだけならば、考え方はその人の自由なのかも知れないが、この硬直した考え方は、そのままファシズムに通じている。
 自分たちの考え方・宗教観・政策が、すべからく一番だと信じ、他者にまでそれを享受させてやろうという無邪気な親切心で他者の自由を踏みにじってしまう。ファシズムの恐ろしいところは、その無邪気さ故の暴力性にある。そしてこの「自分たちは正しい、自分たちは一番」という主張の単純さ故、ファシズムは「考えなくても唱えれば済む主義主張」として、爆発的に普及する。

 だが、こうした暴力に振り回された挙句、一度は国を滅ぼした、日本人やドイツ人が、如何に一瞬甘美に見えようとも、頑なにファシズムを否定するのには、訳がある。入口が非常に単純明快で一見見通しが良さそうに見える、このファシズムというものを極めるのは、実際には、ほかの政治姿勢を採るより大変だになるということを身に染みて知っているからだ。
 一度、同じ方向を向き始めたファシズム集団は、最初は「だいたいこっち向き」で、反対向くやつに牙を剥く程度だが、そのうち「どっちも向いてないやつを許すな」から「一分の狂いもなくこの方向」に統制の精度が上がって来る。この道がいかに清冽に見えようとも容易に見えようとも、歩いて行った先には、角度にして1度でも違う方向を向いていたら、もう許されないという世界が、かならずやって来るのだ。

 これが、ナチス親衛隊や日本の特高・憲兵隊などによってイメージされる全体主義国家というものだ。

 しかし、こうなると息が詰まる。息を詰まらせずにいるためには、思想や議論が多様化出来る道が一番なのだ。
 言論の自由と民主主義というのは、そういう、とても大事なものだ。

 これを否定し、言論の自由の基礎である相互理解を放棄することは、少なくとも民主国家の政治家に在ってはならない姿勢である。

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コメント

これを見てにんまり笑っているブッシュ君が目に浮かぶ。

投稿: もりた | 2006/02/18 22:55

もりた さま

 んー。ブッシュ君はニンマり笑っているのかなぁ?
 オイラには、「カルデロリ正しいっ! 賢いっ! ああ、世界は捨てたものではない。プロテスタントでなくても、カソリックであっても、少しはマトモな奴はいるものだっっ! しかし、そのカルデロリをクゴにするベルルスコーニは、なんてオロカなんだっ!」
 と、密かにカルデロリ復権をCIAに指示……してねーといいなぁ。

投稿: 神北恵太 | 2006/02/18 23:12

WWⅡではベルリンまで踏み込まれた独、(軍部は)本土決戦上等!だった日本と違い、伊はさっとクーデターで降りたつもりが結局本土をさんざん荒らされた、という過去がありますね。
その辺りの差がどう各国民の心情に影響してるのか、気になるところです。
問題の風刺画については、「言論によるテロ」。終わり。

投稿: 成田ひつじ | 2006/02/19 13:01

成田ひつじ さま

 私は、問題の風刺画を見ていないので何とも言い難いです。
 ただ、「どんなに長い間言葉によるいじめが続いたとしても、最後に切れて殴った方が暴力沙汰」という悪いパターンと似た観がありますよね。
 イスラムにおけるデモとか、暴徒化だけテレビで流れて、そういう反撃の元となったそもそもの攻撃(風刺画)がどんなものか判らない。預言者や神を偶像化しないというイスラムの宗教観に鑑み、原因の紹介をしなかった結果、絵的にはイスラム教徒がよく理解出来ない理由で暴れているだけに見えてしまうというのが現状ですが、なにか納得出来ない気がします。
 とはいえ。この抗議行動、元発言で書いた行き詰まって行く全体主義と同じで、いかに教義の実践に熱心かを競い合う信心競争に走った挙句、停まれなくなっている感があります。

投稿: 神北恵太 | 2006/02/19 14:17

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