武勇伝武勇伝!だぞ
Yahoo!のニュースに2006年4月5日、『<シンガポール武道家一族>空手家探し青森の雪山へ』という記事が載った。
青森県西目屋村の白神山地近くで4日夜、シンガポールから来日した中国系武道家一族ら13人のうち男性3人が雪道に迷い、5日未明に県警弘前署に保護された。一行はシンガポールで道場を経営していた武道家の遺族らで「青森の山中で修行する空手の伝承者に会えとの遺言を受け、伝承者を探しているうちに道に迷った」と説明しているという。
同署などによると、13人は5年前に病死した武道家の妻(50)と息子2人、近所の人10人。3月22日に来日し、4日朝から3人ずつ3班に分かれて伝承者を探していた。残る4人は寒さで体調を崩し、ホテルに残っていた。
武道家の長男を含む第1班は登山道に向かって歩き続けたが、午後7時ごろになって仲間の携帯電話に「雪で進めない。道に迷った」と連絡。仲間が地元観光協会の通訳とともに弘前署に届け出て、約6時間後に救出された。3人は畑にあった廃車に入って寒さをしのぎ、けがはなかった。
んー。なんかスゴい話だなぁ。香港映画にありそうじゃないか。
しかし、後継ぎ問題に苦慮した武道家は死の間際、「青森県の相馬村に極真空手の伝承者がいる。彼に会い、秘伝書を譲り受けてほしい」と遺言したというけどさ、極真やりたきゃ、極真会館に弟子入りすれば良いんでないの? しかも、この道場、2人の息子は武道に興味がない上に、置いてあった空手の秘伝書を弟子に盗まれたんだそうな。盗まれた秘伝書の代わりに、他人の秘伝を譲ってもらえということか?
そもそも、「極真の達人が居る。弟子入りしろ」っちゅうのならばともかく、「(分派かなにかの)伝承者が人知れず山にこもっている、秘伝書を譲ってもらえ」なんて都合のいい話があるかい。いくら累計50万人とはいえ、太平洋戦争の後に誕生したまだ半世紀を少し越えたばかりの極真っていう流派は、そんな秘伝書を持つ達人が野に埋もれるほど時間は経ってないと思う。
現に、青森県の極真空手県本部では「旧相馬村に道場はない。空手家がいると聞いたこともない」と困惑していると言う話だそうな。
んー。ホントにそういう遺言があって、ホントにそういう伝承者がいるのかも知れないけどさぁ。ちょっとねぇ、話がちゃち過ぎて……。
かつて、欧州の騎士の子弟は、一人前になった証に聖杯探求の旅に出て、途中でドラゴンを倒したとかなんとか武勇伝を語ったというが、実際には、金が尽きたら適当に武勇伝を作って帰って来いと申し付けて、子弟を少し遠くの大都市に送り出したのだと言う。つまり、探索という名の観光。修学旅行みたいなものね。勿論、子供だけで行かせるとホントに危ないから、騎士の従者という名目で世慣れた大人が付いて行き、万事滞りなくセッティングする訳だ。
神北の勝手な想像で悪いが、実はそれと同じことがあったんじゃないのかと思う。「日本のキョクシンという流派が強い」ということだけ聞き齧った半可通が、「その流派の名人から秘伝書を貰ったことにすれば、道場にハクが付く」と考えて仕掛けた、現代版聖杯探求の旅なんじゃないのかなぁ、これ。で、適当に探しまわって、武勇伝を作ろうと思っていたら、シンガポールでは観たことも無い雪山で、ホントに酷い目にあったと……。
いや、この一行(死んだ道場主の妻と2人の息子、あと門弟ではなく、近所の人が10人だってサ。)、来日は3月22日なんだよね。で、現地で探し始めたのが4月4日。つまりその日のうちに遭難。
よく判んないけど、日本に着いてからそこまでの10日ほどは、ディズニーランドとか、秋葉原とかを捜索していたっぽいニオイがしませんか?
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コメント
少林拳の秘伝書を授かった拳法家を探しに中国から四国にやってくるのはいつの日か。
金毘羅さんの近くの住民はわくわくして待っていて欲しい。
「おそるべき讃岐うどん」の判りづらい地図で迷って食い倒れている所を発見・・・とか。
投稿: 森野人 | 2006/04/06 10:53
森野人 さま
そう、くだんの亡くなった道場主も,いまわの際に「少林寺派の拳法の秘伝書を求めて旅せよ」とか言ってくれていたら、イササカなりとも真実味があったんですがネェ。あれは、本山を含む分派がいくつも絶えているから。どこでどんな人が継承しているかなんて、そうは判らん。
結局,四国で一年修行してシンガポールに帰り,とっても美味しい讃岐うどん屋を始めたりして……。
投稿: 神北恵太 | 2006/04/06 12:34
事件のことを知ってから相馬村のウェブサイトを見てみましたが……。
サイトを見れば見るほど、平和そうな田舎町そのもののイメージで、
そもそもどうしてシンガポールの人がこの村のことを知ったのかが
気になりますねぇ…。
http://souma.city.hirosaki.aomori.jp/gaiyou-1.htm
↑村長、根拠はないけど何かの達人っぽい雰囲気。
http://souma.city.hirosaki.aomori.jp/event-3_1.htm
↑こういうものがある村だと思うと、物凄くまわりくどい「村おこし戦術」の
可能性も捨て切れなかったり。
投稿: ドヴロク | 2006/04/07 01:37
法統に秘伝書はあったそうです。
http://www.nikkansports.com/general/p-gn-tp0-20060413-18366.html
シンガポール人が探した「秘伝書」あった
シンガポール人一行が「秘伝書」を持つ日本人空手家を捜して青森県内をさまよっていた件で、同県平内町の武道家・福田祥圓(しょうえん)さん(61)が「自分のことではないか」と名乗り出ていたことが12日、分かった。一行は父親の遺言で、わずかなキーワードを頼りに空手家を捜し回り、白神山地で遭難する騒ぎも起こしていた。福田さんは「北拳派中国空拳法道」の武道家で、かつて父親とみられるシンガポール人に教えたことがあるという。
日本人空手家を捜すために来日したのはシュイ・テンリンさん(25)ら一族13人。テンリンさんの父親シュイ・ジエンシュイさんが「北海道ではない北の果てにいる日本人の空手家から秘伝書を譲り受けてくれ」との遺言を残したという。3人が白神山地で遭難、保護されるトラブルもあったが、現在も11人が青森県に滞在している。
このニュースを知り「自分では」と名乗り出たのが福田さん。日刊スポーツの取材に福田さんは「確かに漢字で『許』と書いて『シュイ』と読むシンガポール人の武道家が30年前に修行に来た。私かもしれないので名乗り出た」と話した。知人から「福田先生のことではないか」と指摘され、9日に弘前市内でテンリンさんらと会談した。
福田さんによると、「シュイ」さんは青森県内の山中の道場に2人連れでやってきて、通訳を介して3日間修行を行った。福田さんがシンガポールを訪れるなど、その後も親交があったという。
会談では、夫人のジオン・チュウメイさん(50)やテンリンさんに、修行当時の様子を語って聞かせたという。「まじめでガンコで、心はあまり開かない、口より手が早い武道家だった」と話したところ、チュウメイさんらは納得した様子でうなずいていたという。
一行が、空手家捜しのキーワードに挙げていたのは「ソーマ」「秘伝書」「人里離れた道場」「65歳」など。福田さんは空手家ではないが、青森県五戸町の山中に道場を持ち、年齢は61歳。気の流れの「波動」を自在に操るという空拳法道の極意が記された「秘伝書」も持っており、多くのキーワードが合致した。「ソーマ」についても「シュイさんに、ブラジルに渡った相馬さんという強い武術家の話をしたが、地名と勘違いしたのでは」と話した。一行は旧相馬村(現弘前市)を中心に捜していた。
一行が「譲り受けたい」としていた秘伝書は、福田さんが中国福建省で修行した際に師範から授かったもので「譲ることはできない」という。代わりに「亡くなったシュイさんに空拳法道の認定書を贈りたいと申し出たところ、ご家族も快諾してくれた」といい、14日に青森市内で認定式を行う。
[2006年4月13日 日刊スポーツ]
投稿: やしお | 2006/04/13 15:16
ドヴロク さま
なんかレスし損なってました済みません。
やしお さま
詳しい話をありがとうございます。
なんか、よくは判りませんが、取り敢えず咲かしていた相手に巡り会えた事は良かったのでしょう。その人を捜していた理由であるトコロ〜の秘伝書を貰うことは出来なかったとしても。
というわけで、ドヴロクさま、村おこしの一環ではなかったようです。
しかし、「ソーマという場所」とか「キョクシン」とかいう間違ったキーワードとともにナゾなのは、依然として、秘伝書クエスト隊(未亡人+息子2人+近所の人たち)の11人中、8人の「近所の人」は、何をして居たかと言うことです。
もう、来日から25日近く経っています。このひとたちって、みんなリタイア後のご隠居さんばかりか何かなの?
投稿: 神北恵太 | 2006/04/14 01:04