敬意のないポトラッチだぞ
ポトラッチという言葉は、本来北米インデアン、チヌーク族の言葉で「贈与」という意味。互いに自分が気前の良い大立て者である事を示すために、贈り物を贈り合う風習を言う。
横田めぐみさんのお母さん早紀江さん(70)ら拉致被害者家族が渡米して、米下院国際関係委員会の合同聴聞会で現状を訴え、その後、ブッシュ大統領とも直接面会して、拉致実態と被害者開放への協力を求めた。
これに対し、ブッシュ大統領は、「最も心を動かされた会談のひとつだった」「(拉致問題解決のための)働きかけを強めたい」等と語った。
ええ話や。ええ話やないですか。これで、アメリカ合衆国も、人権問題・国家犯罪としての拉致事件を重要事項と見なしているという方向性が見えた。これで、日本や韓国は、今後単なる二国間問題ではなく、人命・人権に係わる危急の重要事項として、拉致問題解決を国際政治の場で、大きく進めることが出来る。
とても、有難い話だ。先の六ヶ国協議等でも、「拉致問題は日朝二国間の問題、直接話すべきで国際競技のテーブルに載せる事ではない」的な扱いがあった。だが、アメリカ大統領が強い関心を示した事となると、参加各国も今後はそう軽くあしらうことは出来なくなる。一歩、詰めた。そう感じた。
これは素晴らしいアメリカからの贈り物である。アメリカ軍施設内での捕虜虐待等の人権問題を抱えている大統領が、人権尊重姿勢をアピールする手段に使われた感も確かにあるが、長年努力を続けて来た家族会に取ってはとても有難い状況だと思う。ここからあと一歩、拉致被害者とその家族を救い出すまで、我々も、関心を持って見つめて行きたい。
だが、光あるところ影がある。
ブッシュ大統領が「働きかけを強めたい」といった返す刀のようなタイミングで、麻生外務大臣らが、現沖縄駐留海兵隊8000人が自国領内のグアム島に移動するために6760億円という巨額の支出を行なうと云う。
もちろん、米国からの要請で出しているイラク覇権の自衛隊の話も大きい。
元来のポトラッチは、その大盤振る舞いを繰り返した挙句、どちらかが破産してしまうまで続くことがあったという。
現代に生きる21世紀の政治家が、そこまで名誉に拘泥し国家の指針を過つことは無いと信じたいが、このところ、ちと日本は大物ぶりを示し過ぎている気がする。
そこに、敬意はあるのか?
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コメント
あれさ、日本がOKしたとたん
「いや、あれば全体のうちの一部の話」とか
後だしじゃんけんみたいなこといいだしたんじゃ
なかったけ?
投稿: 大外郎 | 2006/04/30 19:24
大外郎 さま
「アメリカ=両津カンキチ」説を、強く主張してぇっス。
投稿: 神北恵太 | 2006/04/30 19:30
グァムの移転だけで、6760億円。
日本にいるアメリカ軍全体で3兆円近くだそうで。
同業者ではありますが、彼らに一言言いたい。
「あに考えてんだ?ああん!」
なめられすぎも良いとこでしょう。
てめぇで勝手に世界展開して、てめぇで勝手に戦争しかけて、お金に困ったら金出せや。
ちょっと、勝手も良いでしょう。
普通の株式会社じゃ、とっくに倒産でしょう。
資本主義社会を世の中に布教したい国家が、
資本主義を理解してないと思います。
投稿: かず | 2006/04/30 20:46
かず さま
「まず先に、自国の兵隊さんを思い遣れ!!」という主義主張の私としても、ちょっとばかし腹立ちます。
ただ、沖縄で犯罪が減るのであれば、グアムの皆様には申し訳ないが、追い銭投げつけてでも押し付けちゃった方が……。という気もしなくもありません。
ま、正解というものは解らないのが現実なので、そうそうスッキリ「こうすればOK!」は見えないのであります。辛いトコロです。
投稿: 神北恵太 | 2006/05/01 00:24
米軍の「占領」が続いている現実の上ではしょうがないのかもしれませんが、個人的心情では納得しがたいものがあるのも事実です。
日本が戦後処理を終わってない(冷戦を口実に何もしてこなかったという話も)今の状況では何を言っても真剣には取り上げてもらえないだろうなぁ。
しかし例えば安全保障をすべて自国で行うとしても、
いったいどれだけの費用がかかるのだろう。軍事力以外で安全保障を行うには、高度な外交技術がいるが、
今の外務省、自民党にその力があるかは、甚だ疑問です。
投稿: もりた | 2006/05/01 00:48
もりた さま
この国の防衛コストの実態は 国家予算約81兆円中、防衛費4兆8千億円と、別建て2,300億円あまりの思いやり予算をプラスし、ざっと5兆1千億円弱。概ね6%に当ります。
防衛費1%を巡って攻防していた時代から比べて、世界情勢も自衛隊の任務実態も、共に変質して来ているので、同一スケールで比較すべきではないのは解るが、それにしても、政治家と外交官がバカになって来ている事だけは確かと思います。
投稿: 神北恵太 | 2006/05/01 08:04
政治家や外交官がバカになって来ているってのは無いとおもうなあ。
前からだし。
ボロが剥がれてきてるだけでしょ。
国民がバカになって来ているとは思うけど。
投稿: 森野人 | 2006/05/01 16:39
森野人 さま
ほんの二十年ぐらい前までの政治家は、もうちょっと、言動に気を使っていたような気がします。というのは、失言一つで閣僚の椅子を失うことが多々ありましたし、「ばかやろう」の一言で内閣が吹き飛ぶことがあったからです。でも、特にここ何年か、失言や気候を芸風とするような変な風潮に乗り、ちょっとやそっとの失言を屁とも思わない、些かリリシズムに欠ける嘆かわしき風潮が世を覆い、政治家が自ら、自分の言葉を軽くする方向に走っているように見えてなりません。
これは、政治家のみに止どまらず、その予備軍の一つであるキャリア官僚にも同じ傾向が見えると思います。
投稿: 神北恵太 | 2006/05/01 20:34