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2006/06/29

1.2パーセントの賭けだぞ

 神戸新聞WebNewsの2006年6月28日の記事『阪神高速から車転落、バウンドし線路越える』が、少なからず驚かされたというか、信じられないような死亡事故。

 二十八日午前八時十五分ごろ、神戸市北区山田町藍那の阪神高速北神戸線南行き車線で、乗用車が左側ガードレールを突き破って、約十メートル下に転落し、乗用車の男女二人が全身を強く打って死亡した。転落した乗用車は、阪神高速の下をくぐっている神戸電鉄粟生線の架線を切り、西鈴蘭台-志染間の運転が二時間半以上、ストップした。阪神高速南行き車線も事故処理のため、しあわせの村-藍那間が午前十時半から約二時間半、通行止めになった。

 亡くなられたご夫婦のご冥福をお祈りいたします。

 朝のワイドショーで見聞きした所に拠ると、乗用車の男女はご夫婦——それも、ある程度年齢の行った老夫婦——だそうで、この日、朝から奥さんが目の具合がおかしくなり、神戸の病院へつれて行くため、旦那さまが車を走らせていたらしい。

 しかし、文章で読むだけではよく判らないだろうが、これは、壮絶な事故だ。

 場所はここ写真はこれ。で、図を描いてみた。

事故の解説図 よくご覧頂きたい。まず、[1]地点。この高架は、阪神高速北神戸線。事故車はここを北側(画面上左奥側)から走って来て、右カーブに差し掛かるあたりで、あまりのスピードのためか、それとも操作を誤ったのかは現時点の神北の掴んだ情報では定かではないが、とにかく、進行方向左側ガードレールを破壊して突破。この地点の高架は、約10メートルの高さがあった。
 さらに、この高架の下には一般道が通っていたが、車は軽くそれを飛び越え、[2]地点で道路を超えた側にあった電線に一度乗っている。もちろん、「乗る」というよりはぶつかって跳ねるという格好だが、この電線が頑丈だったのか、切れては折らず、衝撃は至近の電信柱が折れ倒れるという形で吸収されたらしい。
 異常とすら思えるのはここからで、飛び出した位置から水平距離で約50メートル先で高さにして10メートル下った[3]地点では、車は多分四輪ほぼ同時に接地した模様で、このため、車のサスペンション機構が弾力となって、再びこの車を持ち上げたらしい。駐車場のアスファルト面と周囲のコンクリ塀に、車が跳ねた時の傷と、跳ねた車がぶつかり削り取った後が残っている。
 で、この後車は、図の手前にある谷底方向へ向かってさらに30メートル程進み、駐車場から約6メートル下の[4]地点で、神戸電鉄粟生線を横切っている。その先は、谷底に向かい竹薮になっていたて、最終的には線路の先の竹薮がクッションとなってくれたようで、[5]地点まで行ってやっと停止。
 この間、高低差16〜18メートル。距離にして100メートル程ある模様。

 死者の出た事故でこういう感想を持つ事を不謹慎と思われる方も居られようが、それにしても最初の感想が「よく飛んだなぁ」になってしまうのをお許し戴きたい。
 あまりにも偶然が重なっているのだ。

 まず、[1]地点で、盛り土から橋梁構造に切り替わるギリギリ最後の部分のガードレールを突破していること。これがあと何メートルか先であれば、コンクリートの欄干に接触して事故になったとしても、飛び出すまでは至らなかったのではないかと思う。
 次に[2]地点で、電線に巧い事絡んだ事。免許をお持ちだと経験がおありの方も多かろうが、四輪車である程度の速度を出していて、路面の段差等で軽いジャンプをすると、車はほぼ水平に姿勢を保ったまま飛ぶ。[1]地点でガードレールとの接触で縦横にスピンしていても不思議無いのに、ほぼそのままの姿勢で飛んで来て、しかも、電線も見事に重心を突いていたのか、逆に変な姿勢でぶつかって来たのを電線との接触衝撃でカウンターが当たる形となって水平を取り戻したのかは判らないが、ここで電線に巧く絡んだ事だけは確かだ。
 そのお陰で、[3]地点で水平着地をしているらしい。無論、途中衝撃吸収してくれる電線は在ったものの、それすら6メートルとか8メートルの高さにあるものだから、かなりの高度から落とされた衝撃が在った筈だ。だから、タイヤやサスペンションが衝撃を全て吸収出来た訳ではなく、駐車場には大きな力で金属がこすりつけられた引っ掻くような傷も、真っ黒なタイヤが滑った後も残っている。しかし、そこにちょうど車があったり車から降りた人が居たりしたら、それだけでは済まなかった筈。よくもまあ、無人の、開けた、固いアスファルトの、駐車場に落ちたものだ。
 で、駐車場の塀と脇の崖を跳び越えて、[4]地点の線路を通過する。ここで架線と接触しているという事は、もしその時間電車が走っていたら、ちょうど激突する所だったということだ。ちなみにこの線は通勤線で、神戸鉄道の時刻表ページで調べてみた所この時間帯は平均して5〜6分に1本は上下方向どちらかの電車が通っているようだ。

 よくもまあ……。そう言うしかない。

 ここで、思考実験。

 西鈴蘭台-藍那間の駅感距離が約1500メートル。所要時間は時刻表差が3分なので停車時間30秒をとしてそこから引くと2.5分。むちゃくちゃ乱暴に只の割り算で考えると、この区間、列車は平均分速600メートル(時速36キロ)で走っている事になる。仮の思考実験だし、ちょうど駅と駅の中間に当たるここは一番列車の速度が乗っている所だからほんとは速度ももっと速い筈なのだが、そこいらへんはモデルの単純化のために、チイと目を瞑って欲しい。で、分速600メートルの列車は、10秒に100メートル進む、つまり秒速10メートルという事だ。この鉄道で使用されている列車の全長は一両あたり約18メートルなので、1車両の通過時間を約1.8秒と考えてみよう。(無論、連結器の長さとかを無視している。)
 ちにみに、7〜9時台の列車本数は上下線合わせて35本。単純に5分に1本としてみよう。5分は300秒、3〜5両編成の車両らしいので、列車がある地点を通過するのに5.4〜9秒かかる計算。列車の編成までは考慮せず、単純にまんべんなく3〜5両編成が平均化されているとして、単純にとある一点の通過時間は300秒中7.2秒
 さっき無視した駅間の一番スピードの乗る地点なのだということを考慮し、この地点の通過速度が平均速度の倍の時速72キロまで上がっていたとして、300秒中3.6秒ほどというのが、1つの列車がこの時間帯のある瞬間この地点に存在する確率。
 つまり、雑多な計算だが約1.2%の割合で、飛び込んで来た自動車が列車と衝突していた可能性があったのだ。

 98.8%無いと考えて、まあ滅多に起こらないことだと思うか、それでも1.2%の確率で大事故になっていたかも知れないと思うかは、その人次第なのだろう。が、こんな二次災害が起こらず、電車の乗客が無事で良かった。
 もちろん通勤列車を2時間半も止められた人たちは大変だったろうが、真横から車が突っ込んで来たり、どこからとも無く線路上に降って来た車に列車が追突する(こっちの確率はもっと高かったかも)よりは、運が良かったと思って頂きたいと思う。

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