居眠り防止薬だぞ
毎日新聞の2006年6月18日の記事『睡眠時間:ラットの実験で短縮成功 脳のたんぱく質の働き阻害−−大阪のグループ』によると、睡眠を短縮する理論の目処が立って来たらしい。
眠りを起こす働きが知られるホルモンの一種「プロスタグランジンD2」(PGD2)の受け皿となる脳表面のたんぱく質(受容体)を作用させなくすると、睡眠時間が短くなることを、大阪バイオサイエンス研究所(大阪府吹田市)の研究グループがラットを使った実験で確認した。居眠り防止薬の開発にもつながる成果として、18日から京都市で開かれる国際生化学・分子生物学会議で発表する。
つまり、前から判っていた睡眠促進ホルモンに対し、それの受容体を減らしてやる事で、睡眠を短縮できるという事らしい。
実験では、脳のうち受容体が集中して存在する「前脳基底部」という部位に、受容体を作用させなくする薬の水溶液を6時間にわたり微量に投与し続けた。すると、薬の濃度が高いほど睡眠時間が短縮。ラットが通常睡眠に入る昼間で、睡眠時間は通常1時間あたり約40分だったのが20〜25分まで減少した。
むむむ。確かにこれは、睡眠というものの直接的な発生メカニズムを突き止め、睡眠時間をコントロールする直接的な技法なんだろうな。
しかし、睡眠がなぜ発生するのか、脳と身体を休める事、リセットさせる事に関する大きなメカニズムが解明していないうちに、薬で居眠り防止というのは、どんなものか?
人間の精神なんて脳という化学コンピュータに載っているだけのものだから、内分泌液でフラグを立てたり倒したりする事で情動やら好悪やら、かなりの部分まで操れる事は判る。だが、睡眠ホルモン受容体を作用不能にして短縮された睡眠で、被験者のココロが、精神が、ちゃんと憩まっているのか、心の変な引っかかりをちゃんとリセットできているのかは、別の問題だ。
睡眠という、現象面だけでなく精神への影響面で特に意味の重い生物的現象を、どこまで判っているのか、どこまで自在にコントロールできているのか、もっと言えば、どこまで安全にコントロールできるのか、というのが随分心配なところ。
もちろん、まずは千里の道の第一歩というところだろうから、これがすぐ人間用の服用薬になって市販される訳ではない。が、製品化までには、充分に安全性を確かめて、安心して使える製品にして頂きたいものだ。
でも結局は、人間、寝るより楽は無かりけりなのだ。
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コメント
ナルコレプシーの治療に使えるのでは?
投稿: 都築由浩 | 2006/06/19 17:20
都築由浩 さま
たぶん、「24時間働けますか薬」よりは、ホントに困っている人用の薬になると思うのですが、それにしても、別に眠気を取るとかではなく眠れなくする薬なのがちと怖いところです。
投稿: 神北恵太 | 2006/06/19 19:54