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2006/07/28

中東の異常事態は限度を超えているぞ

 まずは、事件の基本的概要をお浚いしたい。日本経済新聞の2006年7月27日の記事『イスラエルの国連監視所攻撃、6時間やまず』は、基本的な事を押さえている記事であろう。

 【ニューヨーク=中前博之】国連は26日、レバノン南部の国連レバノン暫定軍(UNIFIL)監視所がイスラエル軍に攻撃され、国連要員4人が死亡した経緯について、安全保障理事会に報告した。監視所周辺への攻撃は再三の停止要請にもかかわらず、約6時間にわたり計16回に及んだという。

 国連事務局幹部によると、一連の攻撃は25日午後1時20分に開始。空爆や砲撃など同日夜にかけ、監視所から約300メートル以内に計16発が着弾し、うち2発が直撃したという。4人は午後7時半ごろの直撃弾で死亡したとみられている

 監視所は見晴らしのよい高台にある白い建物で「長期にわたり国連拠点であると明示されてきた」(同幹部)。近くにヒズボラの拠点があった可能性について、同幹部は「少なくとも5キロは離れていた」と否定した。

 この記事の太字・下線は神北が引いた。

 1つ目の段落の下線部分。「再三の停止要請にもかかわらず、約6時間にわたり計16回」の攻撃が行われた事。そして、次の段落に拠るとほぼ最後の攻撃である「午後7時半ごろの直撃弾で死亡したとみられている」兵士4人のこと。
 国連の停戦監視要員に死人が出るまで、国連軍基地を「誤爆」し続けたというのは、どう考えても異常である。
 これよりはまだ、「死人が出ない程度に継続的に脅かしていたら、6時間目についつい死者を出してしまったのであわてて中止した」という方がありそうに、素人目には見えてしまう。

 もちろん、国連軍および国連も、この事態をただ手をこまねいて傍観していた訳ではない。様々なチャネルを通じてイスラエルおよびイスラエル軍に対し、即時攻撃中止を要求したようだ。
 しかし、国連から攻撃停止されたしと要求されたニューヨーク在駐のイスラエル国連大使は、「そんな事(国連軍基地を攻撃するなど)有り得ない」と死者が出るまで返答し続けていたという。

  • 実際にこの国連大使の言動が、本国に確認した上での発言だったのか、それとも強弁をしただけなのか。
  • イスラエル本国への問い合わせがちゃんと軍部まで確認されていたのか、それとも政治的な意図に基づき政府判断で「ない」と返答していたのか。
  • イスラエル軍部は混乱によって誤爆停止をしなかったのか、それとも軍部の意図的なサボタージュがあったのか。
  • そもそも、国連軍の基地を攻撃したのは何らかの誤爆だったのか、それとも故意に行われた攻撃だったのか。

 いずれにせよ、軍事行動を行う当事国とその軍隊として、作戦規模の割に異様に見通しが悪い組織という感がある。いや、本当に見通しが悪いのか、そう言う事にした方が都合が良いのかは、しかとは判らないのだが。
 しかし今の時代、地球の裏で起こった事ですら電波に乗って瞬く間に地球全体に報道される。ましてや、連絡チャネルが断裂しているような国交の無い国と国の間ではなく、国連とその加盟国との間の緊急連絡が6時間も取れないなどという事が本当だとは思い難い。

 そもそも、中東問題というのは、極めて正確な理解が難しい。

 紀元前586年にバビロニアによって滅ぼされた父祖の地に帰りたいと云うユダヤ人、その後2500年間暮らして実効既住権を主張するアラブ人、どちらの主張にも一定の理が有ると思われるからだ。

 たとえば、今2億人程居る一般的なアメリカ人に対し、ネイティブアメリカン(いわゆる西部劇のインデアン)達が「514年前まで間違いなく我々の土地だった新大陸から、侵略者であるヨーロッパの白人もアフリカの黒人も東洋人もみんな出て行け」と云ったら、世界はどう考えるだろう? 「もうそこにアメリカ合衆国の歴史も文化も出来ちゃっているんだから、さすがにそりゃ無理だよ」とみんなが口にすると思う。ネイティブアメリカン自身もその合衆国国民としての恩恵を受けているというのもある。

 しかし、他国の話でなく、1945年以来ソ連およびロシアに占拠されたままの北方四島を考えてみよう。「もう、61年、2〜3世代に渡ってロシア人が住んで来て故郷としているんだから、今更日本なんかに戻せないよ」と一方的な無茶を云われて、それを我慢出来るだろうか? 少なくとも、私には出来ないし、したいとも思わない。納得も我慢してやる義理など更々無いと思っている。

 では、この二つの差は何か?

 514年と61年の時間の差か?

 「村」はあってもまだ「国」という概念が希薄だったネイティブアメリカンの場合と、国同士が近代的な不可侵条約を結んでいたソ連に裏切られ、突然攻め込まれた日本の場合の差か?

 実のところ答えは判っている。これは「立場の差」なのだ。

 しかし、立場が違えばいつまでも睨み合いが続くというのでは、人類に進歩も調和も有り得ないではないか。個々のわだかまりを捨てる事は容易ではない。だからといって、いつまでもいがみ合うのではなく話し合ってお互いの意見を摺り合わせる事で国際問題を理性的な話し合いでひとつひとつ解決して行こうという枠組みである国連というものが、人類にとって重要な場であることも間違いない。
 つまり、全ては情と理のさじ加減の問題なのだ。

 今回の事件をサッカーの試合に例えて云うと、審判団(安保理)の中核(常任理事国)のアメリカを(金の繋がりで)がっちりと自陣に抱え込んでいるイスラエルが、「そうそうレッドカードなんか喰らわないよ」と平気の平左で相手選手にミエミエの反則暴行を加えている八百長試合のようなものだ。
 いやいや、当然国際政治というのは様々な狡い手があり、事実、信義友愛を口にしつつも悪辣狡猾に立ち回る国もある。軍事的優勢を背景に強硬手段を正当化することすら、残念ながらこの21世紀に於いても往々にして行われている。経済力を持った大国だからといって紳士とは限らない。
 力を持った国々が遠慮会釈無しに争い合い未曾有の大被害を出した第二次世界大戦後に国際連合が作られたからと云って、全ての国が民主主義的平等を得られたという訳ではないのだ。国連加盟国の中には、何の力も持たないが善良なのび太も優等生の出来杉君も優しい静香ちゃんもいるかもしれないが、成金趣味のスネ夫や強権的なジャイアンも(残念ながら多数)いるのだ。

 しかしこの期に及んで何年も前からあった国連軍基地を攻撃しておいて「戦時に於ける情報の混乱」なぁんて理屈で通そうというのは、汚い面を持つ国際政治、そしてその延長としての戦争行為の中でも、群を抜いて稚拙で汚い手としか言いようが無い。
 本来ならば、安保理の非難決議となっておかしくない事態だが、ユダヤ人閥の発言力が強い合衆国が妄信的な程の親イスラエル姿勢を取り、ほとんど実効的意味を為さない議長声明に留まった。
 だがいくらなんでも、国連軍を攻撃するというのは、パワーゲームの中でどう取り繕ってみても理性的で正常な国際政治のあり方とは云えないだろう。

 現在、自分たちが情と理のバランスを激しく欠いている事を自覚し、イスラエルとイスラエル軍、そして国連安保理常任理事国としてのアメリカに、今一度冷静さを取り戻して頂きたいと願う。

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コメント

レバノンの話題も長いねぇ。逆に赤軍派がいなくなったらベイルートという地名をめっきり聞かなくなりました。

中国も当事者になったら怒るんだよな。<国連決議
北朝鮮の時も怒ってくれれば、米国への文句ももうちょっと強く言えたのにね。

投稿: 大外郎 | 2006/07/28 12:44

大外郎 さま

 アメリカは、直前の北朝鮮非難決議の時の中国とロシアの態度があったので、余裕で「まあまあ」と押さえに回った感があります。
 おかげで、前の件は会わせ技でなかった事にされ、日本なだけが損したような……。

投稿: 神北恵太 | 2006/07/28 13:16

ほ〜らゴラン・・・と言ってる奴が全国で300人ぐらいはいる筈。

投稿: 森野人 | 2006/07/28 15:10

森野人 さま

 ああ、300人ねぇ。300人ぐらいは居るかなぁ。(^_^;)
 でもって、事態の記憶を風化させないために「ほ〜らゴラン高原」に地名を変更しようと言い出して、日本人以外から「Why?」と云われて終わっちゃうのかな〜。

投稿: 神北恵太 | 2006/07/28 20:03

こういっちゃ何だが、どこぞの第3帝國の総統様は、相当間違ったことは言っていないような気がする。
あ奴らのようなゴミ虫(と言われてもおかしくないと思う)民族は、歴史上から抹殺されてもおかしくないだろうに。
アメリカも国内の大人の事情があるからって、ここまであからさまに放置するのは、いかがなものだろう。
日本国内で、国連を”国連”と呼ぶことに、もう無理があるような気がする。
”連合軍”と正しく訳すべきではないだろうか?
しかも、アメリカ連合軍と・・・。

って、こんな事書く自衛官が、自衛官のスカウトやってるが、大丈夫か?
別に5・15はおこさんけど。

投稿: かず | 2006/07/29 00:29

イスラエルを米国のひとつの州だと考えた方がスッキリとします。
「ヒズボラが居るからレバノンを攻撃する」というのは、「アルカイダが居るからアフガニスタンを攻撃する」のと似た構図です。
イラクのフセイン政権が健在なら、この状況も起こらなかったのではないかと思えます。
それが、たとへ「平和」ではなくても「戦争」にはなっていないだろうと。

投稿: ふるき | 2006/07/29 01:22

かず さま

 イスラエルという非イスラム国家の建設が、中東にくさびを打ち込んだ事は確かなのですが、それは、くさびであるイスラエル自身が望み企み実行した事なのか、それとも、将来を見据えてそれまでの植民地国家とは違う形でヨーロッパ式の思考の出来る国を中東に置きたいと考えたどこかの(もしくは幾つかの)旧宗主国が大きな絵図面を書いてユダヤ教徒をジグソーパズルのピースのように上手くそこにはめ込んだのか、それは多分判らない事なので、一概に今矢面に立っているユダヤ人が悪いと決めつけるのも早計なのかも知れません。無論、矢面に立ち続けているうちに先鋭化し、手がつけられなくなっている面も感じますが。
 やはり、一番達の悪い「ユダヤの商人」は、イスラエルには入らず、アメリカで稼いでは金だけ出して、命は他人に支払わせている人たちであり、どんなに傲慢に見えていても、中東の一角にへばりついている人達は、満州武装開拓民とか北海道の屯田兵のような最前線農民兵ではないかという気もします。

ふるき さま

 ただ、フセイン政権によって抹殺される筈だったところを、政権崩壊によって助けられた人たちというものも、実際、少なからず存在します。
 それを考えると、フセインというタガが嵌まっていて問題が隠されて見えて来なかった方が良かったのか、タガが外れてあちこちに飛び火した方が良かったのかという、究極の選択になってしまうと思います。

投稿: 神北恵太 | 2006/07/29 03:37

米国(西欧?)とイスラエルの関係って、中国と北朝鮮の関係にちょっと似ているような気がします。もちろん違う面も多いですけど。
イスラエルの建国事情には同情すべき面が多々ありますし、女性戦車教官には撃たれてもいいと思うくらいですが(思うな^_^;)、同じことはアラブの人たちにもいえるわけで・・・。
結局のところ、一度鏡に映った自分の姿を眺めてみろ、という大抵の人には無理な要求になってしまうんでしょうかね。でも政治家には必要不可欠なスキルかと。

投稿: 成田ひつじ | 2006/07/29 11:42

成田ひつじ さま

 そうですねぇ。特に先日真顔で「北朝鮮ミサイル基地への先制攻撃論」を振りかざしていた議員センセたちには、このイスラエルの「ゲリラ基地への先制攻撃」を、よ〜く見て、たまにはいろいろ真剣に考えてみて欲しいものですね。

投稿: 神北恵太 | 2006/07/29 12:01

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