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2006/08/18

新語の浸透と拡散だぞ

 CNET Japanの2006年8月17日の記事『グーグル、「ググる」の使用に難色』に頷いたり反発を感じたり。

  Googleが、「google someone(だれかについてググる)」といった一般動詞としての同社名の使用を厳重に取り締まる意向を明らかにした。

 Googleによると、このような言いまわしは、同社のブランドを傷つける恐れがあるという。

 同社の関係者は、「『Google』という言葉を使ってGoogleを使ったインターネット検索を表すことと、『google』という言葉を使ってインターネットの一般的な検索処理を表すこととは明確に区別することが重要だと思う。商標に関する深刻な問題が絡んでいる」と述べている。

 まあ、理解出来ないことでもない。

 貴方の周りには、ゼブラのマッキー等の油性サインペンのことをことを何でもかんでも、マジック寺西化学工業の商標名(正確にはマジックインキ)と呼んでしまう人は居ないだろうか?
 貴方の会社や取引先に、普通に「コピーとって」と云うつもりで、他社の機械を指差しながら若いOLに「ちょっと、これこれゼロックスして」なんて云っている年配の方が生き延びていたりしないだろうか?

 業界を制し、オンリーワンになった企業・製品・サービス名が、後に同業他社(や、その製品やサービス)が増えて来た後まで、一般名として定着し、残ってしまうコトは、洋の東西や国を問わずに普遍的にあるようだ。

 20年以上前に、ゲーム会社を買収して本格的にゲーム業界にも手を伸ばし始めた会社に居た頃、社長が訓話の中で明示的に「我が社のファミリーコンピューター」という言葉を使うのを聞いた。商売に聡い人だったから、無自覚に他社商標を口にしてしまったのではなく、任天堂の商標だった「ファミリーコンピューター」という言葉を「家庭用コンピュータ(実体は9割9分ゲーム機だけど)」という意味の一般語化して、ブランドを崩してやろうと言う、黒い思惑が見て取れて面白かった。

 で、グーグルである。既に、“I google it.”みたいな動詞としてOxford English Dictionary(OED:オックスフォード英語辞典)に掲載された訳で、既に認識としては「一般語化している」といっても良い。
 しかし、グーグル社はそれが気に食わないらしい。まあ、ここまで技術的優位を確保して積み上げた功績を、後発他社に横からかっさらわれたのではかなわないというのも判らなくはない。というか、当然心配するべきことだ。

 しかし、ネット内からはかなり反発を喰らったようだ。この記事にも、以下のような事例が並んでいる。

 あるブロガーは、この言葉の使用に込められた思いがGoogleには伝わらなかった、とも示唆した。この言葉の使用は、同社が検索業界を独占していることに対する明らかな賛辞だという。

 大学でコンピュータ工学を学んだブロガーのFrank Gruber氏は、「これは究極の賛辞のはずであり、Googleが異なる受け取り方をしたことは信じられない」と述べている。

 別のブロガーSteve Rubel氏は、同社の対応を「史上最悪のPR活動の1つだ」と切り捨てた。

 シリコンバレー中心部在住のPR会社幹部Morgan McLintic氏によると、Googleは自社が英単語になったことに対する喜び方を学ぶべきだという。

 McLintic氏は、「『google』は既に、インターネット検索を指す言葉として一般言語化している。また、『ググる』ことができる場所は 1カ所しかない。ということは、会社としてのGoogleにとって、これは非常によいことなのだ。メディアがこの動詞を使うのは、日常での使用状況を反映しているだけに過ぎない」と述べた。

 なかなか、皆さん手厳しい。日本でも、テレビで御馴染み弁護士の紀藤正樹さんが弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWS-BLOG版の2006年8月17日の記事『グーグル(google)って、やっぱり変な会社』で以下のように書いている。

グーグルっていう会社が登場した時、一市民の力でも大きな力を生むという、インターネット時代のことを良くわかっている会社が登場したと思っていたが、どうもその後の同社の動きを見ていると、傲慢さが目に付く感がある。

結局、情報を使いやすくするという目標は、目線が市民になければ、一歩間違えば、自分たちだけが使いやすくする、つまりは、独善と傲慢に陥りやすくなるのではないか、同社の行く末が心配である。市民の力を過小評価しているのではないか、と思うし、グーグルを世に出したのは、インターネットを支える若者たちであることを忘れて欲しくない。

 これも、なかなか手厳しい。

 もちろんグーグル社は、『本当にググれるのは、本物のgoogleだけ』という言い方が出来るから、先発の優位は確実に確保出来ると思う。ここは揺るがないだろう。
 だが、一般英単語だからということで、“Google-it”“Google-All”“Ex-google”みたいな、他の一般単語や接頭語を合わせた類似サイトの登場を止められなくなるのではないかということは、私にもちょっと気になる。
 “GoogleSex”なんてエッチ系情報の総合検索サイトとかヤラれた日には、結構大きなイメージダウンすら有り得る。

 グーグル社が、それを避けたいという気持ちも判る。こんな流れは動き出したら止められないから、本格的に動き出す前になんとかしておきたいという焦りも解る。
 しかし、「そうなると嫌だから」、今から動けば「法的に止められるから」、あらゆる手を打っておくと言うのは、今までグーグルが示した開放性と比して、確かに如何なものかと思う。

 次々と高度な技術成果を無償解放し、ネットワークの新しい使い方を陸続と提案し続ける、粋でイナセな高度技術開発会社は、傲慢で偏狭な独占者であるよりも、鷹揚で柔和な大立て者であってくれた方が楽しいではないか。

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コメント

Google 八分は他に表現のしようがないですが。

しかし、Google が傲慢であるということは意識しておくべきです。

もっとも、インターネットに情報を発信しているほとんどの人は読み手・受け手のことまでは考えていられないから、短期的には誹謗中傷事件や長期的には重要な情報をアップしていたページ消えるといったことが起こります。

これは、発信者の都合だけでやっているからで、作る(書く)方の勝手ということだから、これが究極の傲慢であるかもしれない。

投稿: 酔うぞ | 2006/08/18 15:06

酔うぞ さま

 まあ、とはいえある面、Googleが無償サービスの提供をする中で傲慢なのより、金を出して製品を買った客に対してメーカーの対応が傲慢なのの方が、余程問題多いんですけどねぇ。

投稿: 神北恵太 | 2006/08/18 16:54

Google 八分になったサイトだけの専用検索エンジンとかできんかなあ。
そこで検索するのはなんと呼ぶのだろうか。

投稿: 森野人 | 2006/08/20 13:33

森野人 さま

 リラックマに「腹八分目って あとの二分目のおなかのキモチは どうなるんです」という名言があります。
 「後の二分」でどうでしょうか?

投稿: 神北恵太 | 2006/08/21 22:38

開発組とスーツ組のちぐはぐさが、一番の原因なんでしょうね。

賛辞されるのは開発組、非難されるのはスーツ組。

でも、それは開発組が面倒なことはスーツ組に全部押しつけているって事でもあるわけで、企業として成り立っていくためにはスーツ組は欠かせないわけで…。かわいそうではあります(笑

投稿: Tiger | 2006/08/24 09:12

Tiger さま

 というより、グーグル社には、いわゆる「スーツ組」がおらず、法務系は雇われ弁護士に「丸投げ」で、おかげでバランスを取る判断がつかずに態度が尖鋭化するのではないかという気がします。

投稿: 神北恵太 | 2006/08/24 11:31

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