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2006/08/14

鎖国政策は末期症状だぞ

 江戸時代。17世紀〜19世紀の間、日本は、鎖国政策を取り、対オランダ交易に幕府直轄地である長崎出島、対流旧交易に薩摩藩、対朝鮮交易に対馬藩、対アイヌ交易に松前藩の4カ所の例外を除き、日本人と外国人との接触を禁止した。

 当時の徒歩か牛馬か帆掛け船しか無い時代、鎖国は必ずしも悪政ではなかった。
 欧州における胡椒のように、生活必需品を交易で得なければならないような状況ではなかったため、日本における海外交易は、一般民衆とはかなり無縁の所で進む「国対国」の限定的な交易でしかなかったのだ。
 よく豊臣政権や徳川幕府が、関白や将軍よりも信仰を上とするキリスト教の定着を嫌がったことが理由だと言うが、実際にはキリシタン大名の例も多く、当時の日本の群雄割拠の中で、キリスト教信者が政体を揺るがすような「反封建体制勢力」だった訳ではない気がする。そして別に、方便としてキリスト教改宗ぐらい、やろうと思えばいつでも平気で出来たのが、秀吉・家康という人たちの身のこなしではないかと思う。
 ただ徳川も豊臣も「キリシタンという枠の中に入るとなると信仰歴が浅すぎて、先輩諸キシリタン大名より格下にされてしまうから嫌がった」というのが、彼らがキリスト教を嫌った真の理由なのではないかと、神北は素人考えで疑っている。

 それより本当に重要だったのは、中世世界における金銀の主要産地だった日本から、あまりにも安価に金銀が持ち出される事を幕府が嫌った事の方であろう。
 つまり、重要産品を諸外国から安く買い叩かれる事を嫌った自由貿易の禁止、窓口を一つに限定し、高値安定とそれによる長期利益を得るための政策。20世紀の石油産業におけるOPECみたいなものである。

 しかし本国の鎖国は、呂宋助左衛門(納屋(菜屋とも)助左衛門)など、アジア交易で名を成した多くの日本人貿易商たちを滅ぼす事になった。彼らは、今でいうなら総合商社であり、言ってみれば、日本は自ら、中世アジアに於ける経済大国となり得る地位を捨てたとも言える。
 あと100年、日本人商人たちの進出が続き、日本の政治が豊臣なり徳川なりの元で安定していたら、日本語は、東南アジアの多くの国で共通に話される一種の国際語になれていたかもしれない。歴史のタラレバは詮無き事だが、ちょっと残念である。

 さて、岩手日報ニュースの2006年8月13日の記事『中国、海外アニメ放映禁止  9月からゴールデンタイム』の話だ。

 【北京13日共同】中国政府は13日までに、日本など海外のアニメ番組をゴールデンタイムに放映することを9月1日から禁止する方針を決定し、全国のテレビ局に通知した。中国紙、北京青年報が13日に報じた。

 中国では日本のアニメ番組が圧倒的に人気を集めており「日本文化に若者が感化されてしまう」(国内ウェブサイト書き込み)と警戒感を示す声が高まっている。今回の措置はこうした懸念に応えるとともに、自国の「貧弱」(同紙)なアニメ産業を保護育成する狙いがあるとみられる。

 うーむ。

 サンスポ掲載の2006年8月14日の同様記事『中国政府が海外アニメのゴールデンタイム放映を禁止』には、「中国製アニメは最も視聴率の高いものでも「『ドラえもん』の4分の1」(北京青年報)で、放送現場から不満の声が上がっている。」なる記述もあり、夕方から夜にかけての子供番組におけるゴールデンタイムから、外国産のアニメ(ということは、ほとんどが日本製)を閉め出す鎖国政策ということらしい。

 しかし、「国家ラジオ・映画・テレビ総局」によるこの判断、どこまで効力があるものやら。
 国を挙げての家庭の電化が進み、結構多くの家庭にDVDプレイヤーが入り込んでいる中国社会は、もう一つ、海賊版DVD天国でもある。今になってゴールデンタイムから日本製アニメを閉め出しても、間に合わないのではないだろうか?
 テレビは、速報性のある情報・ニュースについては今でも大きな影響力を持っている。しかし、映像コンテンツの配信手段としてのテレビの優位性は、メディアの廉価化とネットの普及で、加速度的に低下しつつある。ましてや伝播メディアが中国の海賊版DVD天国となると、全く政府のコントロール下に無いとも言える。

 じゃあ、何故そんな事をしたのか?

 理由は、神北程度の知識でも2つ程考えられる。

 ひとつは、5日程前に日本の各メディアが一斉に奉じた「日本に対し、台湾問題は深く徹底的に話さなければならない。歴史問題は終始強調しなくてはならず、永遠に話さなくてはならない」という、恥も外聞もない江沢民による1998年の演説が掲載された「江沢民文選」という本の話題。これが日本で大きな話題になった事に対する意趣返しなんじゃないかという訳。
 もちろん、これじゃ意趣返しとして筋が通ってないのだが、意趣返しなんて元々そんなものである。

 もう一つは、各電視台(テレビ局)と「国家ラジオ・映画・テレビ総局」との力関係の問題。門閥社会である中国では、政治的影響力を持つ政府高官・人民解放軍高官の子弟は、太子党と呼ばれている。彼らは、親の地位、経済力、それを背景として受けた高い教育をフル活用して、事業を起こし、多数の企業を経営している。たとえば中国ではいま陸続と数を増している放送局などもその大きな一角を占め、彼らの意向——ということは、その父親達を通じて、政府なり人民解放軍なりの意向でもある——抜きには、テレビ番組の売り込み一つ成功しないと言われている。
 その太子(プリンス)たちへの鼻薬の効かせ方を間違えたか、そこいらへんばかりがいい目を見る事に「国家ラジオ・映画・テレビ総局」の方が腹を立てたか、そのあたりの、極論すると「中国文化の保護のための理由」よりは、「個人の実利に由来する理由」が、怪しいのではないかと思う。

 どちらにせよ、17世紀の日本と違い、本格的に「鎖国」が出来る時代ではないから、この政策が実効力を持って長続きをする事はないだろう。しかし、こういう鎖国(閉め出し)政策は末期的な下策だし、上に書いたようなネットやメディアの発展から実効性は言う程期待出来ない。
 何故なら、保護主義の傘の下でやっと生き延びられる程度の産業は、多くの場合、独り立ち出来る程健全に育つ事なく、却って傘の存在が産業を弱めかねないからだ。

 とは言いながら、それにしても、一番に、そして一方的に迷惑を被るのは、視聴者の子供だという事に変わりはない。

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コメント

いわゆるゴールデンタイムで録画してみてるアニメと言えばケロロ軍曹とカペタしかない私としては何ら問題無いと考える。

むしろ深夜に放送しなくてはならぬ、という考え方もあるかも。

投稿: 森野人 | 2006/08/14 14:12

森野人 さま

 まー、アニメを40年以上見て来た(ということは、今の「良い子」は親の代から見ていた)日本の視聴者と違い、中国の「良い子」達は、保護者世代が「日本の劣悪文化の弊害」を真剣に心配すると言う喜劇的な層(我々の子供時代にも、マンガは人間を馬鹿にするという「マンガ亡国論」を真剣に信じる「文化人」が居ましたよね。同じです)なので、子供たちは可哀相です。

投稿: 神北恵太 | 2006/08/14 15:44

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