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2006/09/05

一生面倒見る費用だぞ

 事故を起こした側、犯罪で被害者の心身に大きな傷を作った犯人、事故・犯罪を防ぐべき立場だった管理者が、よく言うセリフ『一生面倒を見ます』。
 一生面倒を見るという事が、実際にはどのぐらいの負担かというと、当然だがなかなか大変な額になる。まずは、読売オンラインの2006年8月31日の記事『柔道で重体の生徒、介護費60年分求め県など提訴へ』をお読み戴きたい。

 福島県須賀川市の市立第一中学で2003年、当時1年生の女子生徒(15)が柔道部の練習中に頭を打って意識不明の重体となった事故で、学校側が安全配慮義務を怠ったなどとして、女子生徒と両親が、県と市、けがを負わせた元男子部員(16)とその母親(48)を相手取り、31日、今後約60年にわたる介護費用と慰謝料など約2億3000万円の損害賠償を求める訴訟を福島地裁郡山支部に起こす。

 訴えによると、03年10月、顧問の教諭らが不在の練習中に女子生徒が足を痛めたため休憩を取ったところ、部長の男子部員が怒り、女子生徒を投げたり、けったりしたうえ、数回にわたって道場の畳に頭から落とした。女子生徒は間もなく意識を失い、病院に運ばれたが、急性硬膜下血腫(けっしゅ)と診断され、現在も意識が戻っていない。

 酷い事件。読めば読む程、酷い。

 まず悲劇的なのは、事件の舞台が柔道強豪校だったということ。

 中学で柔道で名を成している学校というのは、わりとバンカラな校風を持つ事が多い。私の友人の息子さんでも、中学入学と同時に柔道部に入って頑張っていたのだが、ストレスから来たらしい神経性腸炎(過敏性腸症候群)を「気合いが足らんからだ」と顧問に一蹴され、繰り返し下痢症状が起こる中、下っ腹の冷える柔道着のみの格好を強要され、泣く泣く退部したと言う話を聞いた。
 ストレスを減らすように努めることも症状を和らげるのに有効な方法とされるこういう症状の生徒に、ストレスをかけるような言葉を平気で投げつけるバカ教師が許されるのは、このバカ教師柔道強豪校柔道部顧問、それも上位入賞だか連覇だかの立役者と言われているかららしい。こういう教師から見ると、試合では柔道着一つで居る事が要求されるのだから、それにすら耐えられないものは柔道部に必要ないし、気にかける必要も無いのだろう。
 これが、プロスポーツのクラブチームだとか、オリンピックチームとかいうのならば、こういう選手の選別は当然の事だ。「勝つチーム」を作る監督が、「勝てる選手」を選ばなくてどうすると、私も思う。
 しかし、中学校のクラブ活動で、そんな事を言ってどうする?!
 その息子さんは、それがあって、結局学校に通わなくなってしまったそうだ。これは学校と教師が子供に実害を及ぼした実例だ。しかし、下の子も続いて学校に通う以上、地域の中で中学校と事を構えたくない(られない)のだとか。これは、関東のとある因習深い地方都市の柔道強豪中学校の話。

 で、福島の柔道強豪中学校の話だ。

 加害者は、2年生で部長になった身長180センチ体重120キロの、県大会・東北大会・全国大会に出ている、学校の主力選手。彼が部長になってから、「集中攻撃」と称して、標的に定めた一人を口と鼻から血を流すまで痛めつけるいじめが始まった。最初は同輩同士の悪ふざけだったが、この事件の頃には一年生の弱いものが集中的に狙われていたらしい。
 こんな土壌の中で、9月中旬に練習中の頭部強打から、急性硬膜下血腫で約2週間入院し、5日前の13日からやっと練習を再開したばかりの1年生A子さんが、乱取りで後輩に負けた事でハラを立てていたこの部長のリンチに遭った。

 数回(多分畳に)投げられ、数度柱に頭を打ちつけられ、数度頭から落とされて、その上正座をさせられて説教。その間、他の部員は恐ろしくて何も出来なかったと言う。まあ、恐ろしいだろう。ここで仲裁に入ろうものなら、次の標的が自分になる事だけは間違いない。A子さんは、正座中に頭の痛みを訴え、襟首を掴んで廊下に引きずり出されて、そのまま崩れ落ちて意識を失った。

 これだけでも酷いのだが、この事件が救いを無くすのはここからだ。

 学校は、A子さんの母が駆けつけるまで、救急車を呼んでいない。被害者以外の柔道部員の父兄を集め、校長から「部活動は学校教育の一環ではない。にもかかわらず、事故当日は土曜日で学校が休みなのに、4人の先生がわざわざ出勤していた。A子さんは柔道を始める前から頭に病気を持っていたらしく、それが練習中に発症したようだ。けがをするような練習はしていなかったと説明。生徒たちに噂が広がると「口外するな」と学校からの口止め。
 マスコミから市の教育委員会に取材申し込みがあってから、学校は初めて「謝罪したい」と言い出した。ちなみに市教委からもA子さんの両親に「校長には、生徒と保護者に事故の詳細をきちんと報告するよう指示する。学校との話し合いの場も設ける。だから、マスコミへのリークはやめてもらえないか」と口止めの要求が入っている。三ヶ月後の1月、新聞で事件が報道された当日に、やっと(この事件のための)臨時PTA総会を開催。3月になってから 新聞記者が校長に「イジメがあったのではないか」と取材。校長は、「先輩が後輩に気合を入れた運動部にはよくあることだ」「それが事故原因との証拠でもあるのかと回答。

 ちなみに、学校の事故報告書に、A子さんの母親の談(ある柔道部員父兄を通しての伝聞)として「今回事故があったことで、1年生の保護者の皆さん柔道部をやめることのないようにお願いします。今回の事故について(A子)の母親は、柔道部、柔道部員の責任でもないし、学校の責任でもない。こんなに激しく頭をぶつけたことはない。柔道部員の保護者や先生方に心配をかけて申し訳ありませんということ。また道場(特活室)で倒れたことは、何かあるかもしれないので、良い環境の中で(タタミ)やらせたい。ということ」という話が書かれていたが、これは、加害者の部長の母の捏造だったことが後に判明。さらにこの母親は、2回目の柔道部保護者会で部長による暴行の事実が指摘されると、「私はA子さんのことが心配で、仕事の合間をぬっては病室を訪れている。息子はやっていない。無実だ。息子はひどく傷つき、柔道着に袖を通すことはないと思う」と泣きながら訴えた。これに対し、A子さんの母親が、一度も部長の母親が見舞いに来たことがないことを指摘すると、「すみませんでしたね」とケロリとして言ったという。

 詳しい事は、子どもに関する事件・事故の詳報、事例031018をお読み戴きたい。

 刑事事件としては、加害者の部長は未成年なので断念、顧問教諭と副顧問の講師が業務上過失致傷で送検されているが、民事では、県と市、そして加害者である部長とその母親に、今後約60年にわたる介護費用と慰謝料など約2億3000万円の損害賠償を求める訴訟がなされた。

 しかし、2億3000万円を60年で割ると、年間383万円、1日あたり約1万5百円。未だに意識が戻らない24時間介護を必要とする患者の介護費用が、人件費等を含め、1万円程度というのは、別に割高なものではないだろう。
 問題は、60年と言う時間の長さだ。

 県や市の教育委員会は、この先それだけの長さの人生を持つ子供を預かっていると言うこと、人生の中で中学生という時代がどれだけ大事なものかを、よく考えてもらいたいと思う。

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