« 米沢嘉博さんが亡くなったぞ | トップページ | これはいじめだぞ »

2006/10/02

国際クマ会議だぞ

 本日、2006年10月2日から6日まで、長野県軽井沢町で、第17回クマ類の研究と管理に関する国際会議(国際クマ会議)が開催される。

 長野県でクマというと、思い出すのが「戸隠山にクマを出す話」というお話しである。

 本多勝一さんの『事実とは何か』(1984年朝日新聞社刊)のP81〜162の「報道と取材の自由について——小和田次郎氏との対談——“人畜無害”ニュースの恐ろしさという項に、小和田(こわだ)さんの発言として出て来るお話しだ。

 2006年秋、この話がミョーに気になるので、ちょっくら書いてみたい。

 話自身は、1950年代後半に出版されたらしい『ジャーナリスト』という本に載った酒井寅吉さんの経験したお話し。(この酒井という人も、第二次大戦中に官憲の拘束を受けたり、調べると面白そうだが今回は関係ないので飛ばす。)

 昭和8年と言うから、1933年。早稲田大学を卒業した酒井さんは、朝日新聞に入社し、長野支局に配属された。当然、記者クラブ番になる。
 と、夏のニュース枯れを起こすシーズンになると、記者クラブの誰かが「また、戸隠に熊を出そうよ」と言い出す。すると、ベテラン記者のひとりがスラスラっと以下のような文面を書き上げるのだと言う。

某月某日某時某分ごろ、○○村字△△、○○番地□□さん方の畑に目方五十貫の大熊があらわれ、これを発見した同村△△さんの急報で直ちに消防団、青年団など百五十余名がこの熊を包囲したが、×時×分、ついに取り逃がした。今後の熊対策に関して、同村の◇◇村長は次のように語った。……

 なんとも見事なものだ。で、この記事が、記者クラブに所属する各社で一斉に、翌日朝刊の紙面を飾る。

 これが、酒井寅吉の「戸隠山にクマを出す話」だ。「こんな記事なら、誰の名誉を損なうものでなし、人畜に害があるわけでもないからよい」というのが、このエピソードに添えられた酒井さんの論調だそうだ。

 しかし、小和田さんの論調はそうではない。昭和8年、1933年。銀河万丈さんや野田昌宏大元帥の生まれた年。1月にはヒトラーがドイツの首相に就任し、いよいよ世情は、昭和史の一番ダークな所に雪崩れ込んで行こうとしていた矢先。この人畜無害と思われた「戸隠山の熊」が、隠し覆ってしまった、「もっと重要なニュースが在ったのではないか?」という意見なのだ。

 さて、1933年から73年経った2006年。今年は、異様に「各地にクマが出没したニュース」が多かった。しかし、それは人畜無害なニセ出没情報ではない。
 実際に多くの人が、家畜が、作物が、クマの被害にあっている。今後も、冬眠に入るまでの間、多くの熊がまだまだ人里に現れて、騒ぎを起こしそうな気がする。
 この面で、2003年の「クマの記事」は、1933年の「クマの記事」と全く異なる
ものだ。

 そんな長野県で、クマのことを真剣に考える国際クマ会議。カナダでの第1回は1968年の事だというから、なかなか歴史のある国際会議と言えよう。アジアでは初めての開催だとか。

 クマを筆頭とする野生動物との共棲や棲み分けを可及的速やかに行なえるよう、研究者たちの活発な意見交換がなされ、現状に対する、駆逐以外の解決策が見出せるといいなぁ。

|

« 米沢嘉博さんが亡くなったぞ | トップページ | これはいじめだぞ »

コメント

こんにちは。小生の師匠は熊観察を18年間続けています。
http://www.yokotaworld.com/

投稿: 熊大好き | 2006/10/02 16:58

熊大好き さま

 おお、お師匠さまは本格的にやって居られる方なんですねぇ。写真の端々に、日光とそこに棲む野生動物に対する愛を感じます。

投稿: 神北恵太 | 2006/10/02 17:06

神北さん、師匠のHPご覧下さりありがとうございます。

投稿: 熊大好き | 2006/10/02 17:45

熊大好き さま

 いや、格好良くって、楽しませて頂きました。写真がどれも美しくて、素敵です。

投稿: 神北恵太 | 2006/10/02 22:34

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29746/12119563

この記事へのトラックバック一覧です: 国際クマ会議だぞ:

« 米沢嘉博さんが亡くなったぞ | トップページ | これはいじめだぞ »