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2006/10/03

アーミッシュの子供が狙われたぞ

 読売新聞OONLINEの2006年10月3日の記事『米・アーミッシュの学校で少女3人射殺、犯人は自殺』には、少なからず驚かされた。

【ニューヨーク支局】米CNNテレビによると、ペンシルベニア州南東部のランカスター郡で2日、質素な生活を送るキリスト教の一派「アーミッシュ」が運営する学校に男が押し入り、少女3人を縛ったうえで射殺した。

 男は自殺した。さらに7人が負傷し、病院に運ばれた。

 地元警察の発表によると、男は子供らに黒板の前に並ぶよう命じ、少女たちの足を縛った後に少年や大人は逃がしたという。

 ニューヨークとワシントンの中間地点辺りの東部の古い田舎町で、学校を襲い、抵抗の仕方すら知らない年端も行かない子供を惨殺。しかも、女の子ばかりを狙い、大人や男子生徒は追い払って、処刑劇を実行。その後、自分も自殺した。

 ひっかかるのは、男が「20年前の恨みを晴らす」と携帯電話で妻に語ったらしいこと。
 ちなみにこの自殺した犯人は、32歳のトラック運転手。トラックを運転して収入を得ていることで判るように、彼自身、アーミッシュではない。そして、20年前と言えば、12歳のときの恨みと言うことになる。

 この問題を考える前に、アーミッシュ(キリスト教の一派。再洗礼派の一種メノナイト派の人々)という特殊な暮らし方をしているアメリカ人のことを少し確認してみよう。

 Wikipedia『アーミッシュによると以下のようにまとめられている。

 アーミッシュは電気を使用せず、電話等の現代において一般的な通信機器は家庭内にはなく、原則として、現代の技術による機器を生活に導入することを拒み、近代以前と同様の生活様式を営む。

 服装はきわめて質素。子供は多少色のあるものを着るが、成人は決められた色のものしか着ない。 洗濯物を見れば、その家の住人がアーミッシュかどうか分かる。

 ペンシルバニア州のアーミッシュは、日常生活ではきわめて古い時代の技術しか使わない。このため自動車は運転できないが、旅行の際は自動車も飛行機も使用するようである。商用電源は使用できないが、風車・水車によって蓄電池に充電した電気は利用できる。ペンシルバニア州では馬車にウィンカーをつけることが義務付けられており、この方式で充電した鉛蓄電池を利用しているとされる。

 現在、アーミッシュの人口は、ペンシルバニア内に僅か27万人。ペンシルベニア・ダッチと呼ばれる言葉を話すが、これはダッチ(オランダ語)ではなく、別名ペンシルバニアドイツ語(Pennsilfaani-Deitsch)が示すように、ドイツからスイスに掛けての山岳地帯で使われていた高地ドイツ語の古語を元に独自の進化をした、現代ドイツ語とは互いに意思の疎通が出来ない程代わってしまった方言の一種。更に言えば、単語として少々の現代アメリカ語が混じり込んでいるらしいが、これは、彼らがいくら18〜19世紀以前の暮らしをしていようが、その後に増えた新しい概念である「自動車」とか「飛行機」といった言葉やそれに付随する「ドライブ」や「フライト」といった言葉を取り入れずに生きて行けないからだろう。

 ちなみに、この言語、本来アーミッシュ専用と言う言葉でなく、開拓期のペンシルバニアでは常用されていたらしいが、世代を重ねるうちにどんどん英語に置き換わり、頑に旧態を守り続け親から子へと言葉を継承したアーミッシュの家庭以外、ほとんど引き継がれなくなったらしい。特にラジオやテレビの全国放送が始まってからが顕著なようで、いまやアーミッシュ以外でこの言葉を話すのは老人たちだけで子供や孫の世界は普通に英語しか話さないという。ラジオやテレビを持たないアーミッシュだから言語が維持出来たと言うことなのだろう。全国放送のもたらす影響力の強さを示す典型例かも知れない。

 かくして、独自の言語と独自の風習を持ち最低限のみ社会への協調性を示すもののどちらかというと独自性の維持に心を砕くわずかなアーミッシュが、今もアメリカの片隅でそっと暮らしている(らしい)。

 アニメ『デクスターズ・ラボ』ゲンディ・タルタコフスキー (Genndy Tartakovsky) 原作・総監督)で、科学少年のデクスターが何の間違いかアーミッシュの家庭にホームステイして、ひどい目に合うというサマーキャンプに参加する話がある。本当に、アーミッシュの人たちが、外部の害毒にまみれた子供を家に招き寄せるのかどうかは知らないが、ちょっとトラウマになりそうな話で、意外と誰か中核スタッフの実体験なのではないかと思う。

 かほど、暮らし方も、日常使う言葉も違うアーミッシュに対し、20年も前の12歳の時の出来事に報復したという犯人。
 いや、今ある情報からだけでは、特にアーミッシュの学校だから狙ったと明言されていないから、ただ単に、監視カメラや警察への通報装置の無い学校として狙っただけかも知れないが……。

 CNN日本版の2006年10月3日の記事『アーミッシュの学校で4人を射殺 米ペンシルバニア』は、以下のようになっている。

 州警察によると、男はチャールズ・カール・ロバーツ4世容疑者で、牛乳などを運ぶトラックの運転手だった。銃3丁とスタンガン、ナイフ2本、600発の銃弾入りの袋で武装し、教室が1つだけの小規模な学校に侵入。トイレットペーパーを含む様々な道具も持ち込み、教室内で木材を使ってバリケードをつくるなどしており、長時間にわたって立てこもる考えだったとみられる。

学校は、フィラデルフィアの西約100キロにあり、アーミッシュのコミュニティーが運営している。この日は、6歳から13歳までの児童・生徒26人(うち少女11人)が校内にいた。

州警察の話では、ロバーツ容疑者は、児童・生徒を黒板に向かって並ばせた後、少年15人と、教員たち成人女性4人(うち1人は妊娠中で、3人は幼児と一緒だった)を校外に解放した。しかし少女たちは、足を縛り合わせて拘束した。

教員の通報などで警察官が急行し説得を試みたが、ロバーツ容疑者は応じなかった。容疑者は妻の携帯電話に連絡し、「20年前に起きたことの仕返しのために行動を起こした」などと話し、家には戻らないと言ったという。

ロバーツ容疑者はさらに、911(日本の110番にあたる)に電話し、10秒以内に警察官が立ち去らなければ銃を撃ち始めると宣言。この数秒後に、容疑者は乱射を始めた。その後、警察官が突入し、容疑者の死体を発見したという。

 ちなみに、掲載時刻が上の読売の記事より2時間程遅いこのCNNの報だと死者が4人に増えている。そして州警察は「奇跡が起きない限り死者は増える」としている。と、他の生存者も、相当酷い状態であることを伝えている。

 なお、人民日報の人民網日本語版の2006年10月3日の記事『小学校に男侵入し銃発砲、4人死亡 米ペンシルベニア』では米東部ペンシルベニア州ランカスター郡ニッケルマインズにあるウエスト・ニッケルマインズ小学校と、どこよりも詳しく場所を限定している。ここいらへんらしい。

 生まれる遥か以前の、彼女らには何のかかわり合いも無いであろう事件への報復で殺された少女たちの魂が、安らかなることを祈りたい。

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