65年目のトラトラトラだぞ
12月8日。65年前、1941年のこの日、我が精鋭艦隊は乾坤一擲、眞珠灣への二次に渡る航空攻撃を敢行。米海軍の太平洋中部に於ける最大の拠点を火の海にし、長きに渡る植民地支配に塗炭の苦しみを味わい続けた十億亜細亜同胞の解放を目指す一大戦争の火蓋は、ここに切って落とされた。
嗚呼、されど最大の目標であった敵空母は演習のため眞珠灣基地を出港しており、我が雷攻機群は遂にこの艦影を見るに能わず、ために近い将来米国が反撃する機会を与えてしまったのである。
……と言う文章は、色々な真実と多くの嘘、そして少なからぬ身贔屓を含んでいる。
まず一つには、言葉で言う程、十億の亜細亜同胞のことを、日本人が考えていなかったであろうこと。日本人に取って亜細亜とは、日本の農村漁村山村部、——いわゆる田舎——が延々と広がっている以上の感覚がなかった気がする。風土が違い、過ごしてきた歴史が違う以上、考え方が違う人が居るなんて事までは、全く気が回っていなかった。
しかも、植民地支配における「塗炭の苦しみ」とは何かと云うことに関しては、ほぼ完璧に形骸化した言葉以上の理解をしていなかったろう。
誰しも他者から支配されることは嫌だが、それでも支配を受けざるを得ない陰には、それとバーターに得られる利権もある訳だし、憤懣が爆発しない程度に支配する「手綱の締め方の妙」というものもある。
特にそう言う細部を知らずに、お題目だけ「王道楽土、王道楽土」と唱えることで善しとして、いざ軍隊が乗り込んでそれを破壊はしてみたが、変わるシステムを与えられずに、却って世情を悪くさせるのみ。日本陸軍は、その世情を安定される為に、住民に対し、自分たちの流儀を強要した。
亜細亜は何処までも何処までも広がる日本の田舎風景みたいな物と思っているから、日本の決まり事を強要した。そこに軋轢が生まれ、西洋列強の植民地時代より悪くなったと感じた住民は生活に不満を抱き、為政者に不満を抱き、日本軍は解放者ではなく侵略者と言うレッテルを貼られて行った。
最悪である。
どのぐらいの最悪かと言うと、近年アメリカが、アフガニスタンやイラクでやっているのと同じぐらい最悪である。
つまり、人道的に決して許されない最悪さなのだ。
次に、米国の航空母艦が生き延びたこと、これは、実際に言うほどの意味は無い。せいぜい、半年程度アメリカの反抗が遅れ、戦争が伸びて、本土上陸を許したか、という程度の差だ。だから、むしろ後の日本を考えると、撃ち漏らしたからこそこれで済んだという見方も出来る。
もし、後半年、米軍の反撃が遅かったとしても、たいした戦略も、補給の重要性に関する認識もほとんど持たなかった日本軍が、その間に出来たことと言ったら、「補給路の安全確保と整備」なんて長大な計画は膨大な金が掛かるので否決されて、「ひと樽でも多くの石油を、ひと掴みでも多くの鉱物資源を、日本に運び込む」という、直近の未来の為の非常策、いわゆる篭城の準備を進めるに留まったろう。
しかし、これでは日本に待っていたのは、より厳しい結末でしかない。たとえ鉱物資源が実際の歴史より少々潤沢だったとしても、食糧資源の枯渇は同じように起きたであろうからだ。「欲しがりません、勝つまでは」なんて標語が必要になる国は、そもそも勝てない。国家間の総力戦とは、そうした物なのだ。
最悪である。
どのぐらい最悪かと言うと、最近「飢えで滅んだ国は無い」などと発表した国と同じぐらい最悪だ。
つまり、人道的に決して許されない最悪さなのだ。
神北のような、歴史や軍事、政治についての素人が浅く論じても、12月8日と言う日から、この程度のことは見えて来る。
12月8日、大詔奉戴日。過去、我々の国が何を過ったのか、そして現在、太平洋と日本海を挟んだ日本の隣の国々がいかにして道を誤ろうとしているのか、色々と考えるべきことは多い。
ちなみに、神北は憲法、特に9条の改訂に反対である。売られた喧嘩も買えないように、自衛隊の手と足を縛り付けるだけの変な予算組と同じか、それ以上に意味の無い行為だと思っている。
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コメント
あのー。日本という国の憲法には、自分の国を専守防衛するために、外国人のガードマンを雇ってはいけないって記述、あるんでしょうか? もしないなら、自衛隊はガードマンの管理業務に徹し、ガード本来の任務は外国の屈強な若者にやってもらっては……人件費の安い中国とかイランとか北朝鮮とかの若者なら、充分に高いお給金を払えると思うんだけど。
投稿: ramon | 2006/12/09 00:57
ramon さま
え? あの主に沖縄辺り、一部、横須賀とか厚木とか三沢とかに居る兵隊さんは?
あれって、金を貰うまでは卑屈なくせにあんまりスポンサーの言うことを聞かない、時々裏切る、傭兵が来るぞ娘を隠せ!……等々、いかにもローマ時代から続いていそうな蛮族出身の傭兵らしい傭兵さんじゃないですかァ。
投稿: 神北恵太 | 2006/12/09 01:14
あの傭兵さんたちは、コストパフォーマンス的にいうと、とってもお高いです。しかも誰に雇われてるかも理解できないので、あんなのは入りません。もっと素直で、お金のためならなんでもする、近隣の親しい国々から雇うべきです。
もちろん、武器も自分で作るなんて馬鹿げた採算の悪いことはせず、お安いロシアから買いましょう。
投稿: ramon | 2006/12/09 01:59
ramon さま
うむむ。やはり、アジアの平和にはアジアのクオリティと言うことでしょうか。
まあ、武器の自国生産に関しては、武器としては外に売れない——民需転用品になってからでないと、世界を相手にお金を稼ぐことは出来ない——ので苦しい面はありますが、総合力として技術革新を起こして行く為の判り易い目標としては、捨て難い気もするんですがねぇ……。
投稿: 神北恵太 | 2006/12/09 04:41
ロシアから買うなんてそんなトータルコストから考えて以下略な事・・・とかマジレスしてみるorz
投稿: ooi | 2006/12/09 22:37
ooi さま
ロシアの火器(主にトカレフ)は、民生品として広まり、日本人に浸透してますが、ダメっすか? (^_^;)
私は、人命コストが比較的高い日本に於いては、まず、南アから、舟底型対地雷構造の歩兵輸送車を導入すべきだと思うんですが、あいつの運用はどんなモノっすかねぇ。
投稿: 神北恵太 | 2006/12/10 07:43
「敵を知り、己を知らば、百戦危うからず」
・・・ではなくて戦う必要自体なくなるとどうして言ってくれなかったのですか孫子様○| ̄|_。と時々思います。
投稿: 成田ひつじ | 2006/12/10 21:14
成田ひつじ さま
孫子さまも、まあ、戦争あってナンボの商売ですからねぇ。(^_^;)
投稿: 神北恵太 | 2006/12/11 07:55
>小火器
さる国家特別公務員曰く「僕は安物よりそれなりにしっかりとしたモノを使いたいねえ、命預けるんだから」まこと、ごもっともな意見です。
それと、これはさる国の要員曰く「AKだってね、クリーニングしなきゃ使えないのは一緒だよ、鉄砲は大事に扱うモノなの、薬室に装填した銃を落としたら暴発するのはそりゃ何処の鉄砲も一緒」。
日本人の銃に関するオハナシの類は多分に観念的なモノを含むようでして、いや、難しいのう。
>あいつの運用はどんなモノっすかねぇ。
対戦車地雷やIEDの類喰らえば吹っ飛ぶのは一緒ですよ、むしろ高いだけ邪魔かもしんない、いわゆる趣味誌の能書きは気にしない方が多分幸せになれるんじゃないかと思いますね。
対人地雷なら大丈夫だろって、道路に仕掛けるなら、普通対車両用仕掛けますからね、さもなきゃ今のイラクみたいに砲弾使った仕掛け爆弾なり。
投稿: ooi | 2006/12/11 08:56
ooi さま
うむむ。たしかに、車両単体としての「ヤラれたらオシマイ」って意味では、そうでしょうねぇ。
投稿: 神北恵太 | 2006/12/11 10:42
もっと言っちゃえば、それなりの装甲車両のそこが舟形かどうかなんてどうでも良いんですよ、どっちにしろ地雷踏めば吹っ飛ぶのは大して変わりません、具体名を出しちゃえば、ストライカーの車体底面は船底だから、とか96式はどうだとか言ってもそりゃ気休め程度の違いにしかなりません、結局メーカーのセールストーク以上の意味はないんじゃないでしょうか、それが兵士に与える影響は確かにあると思いますけど、でも、その裏にあるモノは何か考えても損じゃないですよ。
例えば、ストライカーはイラク駐留の兵士に大人気だという記事、パトロールを元々なんでやっていたのかと言う所まで突っ込んではないんですよ、そりゃ、只のハンビーでやってたパトロールをストライカーでやるようになったら安心感は違いますよね?
もうちょっと突っ込んでみますけど、南アの対地雷車両を見ていて気がついた事って無いですか?アレ、それなりに多用途に使えると思います?何処でも運用できそうですか?
アレは対地雷にある程度特化した車両な訳ですから色々な所を犠牲にして成り立つわけですよ、車両を設計するとすれば、装備を付ける、防御力をある程度持たせる、機動力を付け加えるには一定の重量とスペースが必要になりますよね、そこには魔法なんて無い訳で、対地雷のための防御力を付け足せば重量が嵩むし、その為には搭載力を削ったり、エンジンを強化したり、重量の見直しを計る必要があったりと色々する訳です、つまり同じクラスの車両に付け加えることは限定されててそれを対地雷に割り振っただけ、その為どこかが犠牲になった車両なんです。
僕が思うに、軽装甲車みたいな兵員にそれなりの防御力を与えられて、それなりに汎用性のある車両があるのに、活躍の場が限られる地雷にしか限定的に有効じゃない車両を何のために導入するのか、そこの辺りが良くわかんないですよ。
投稿: ooi | 2006/12/11 11:15
ooi さま
それは、陸上自衛隊に何を求めるかに拠るのじゃないでしょうか?
私は、陸自は今後、PKO派遣が増えることがあっても減ることは無いのではと思っています。で、そうなると、かりにも軍隊に正面から掛かってくるゲリラと言うのは少ないでしょうから、一番の問題が、移動中の地雷なのではないかと思うのです。それに強いことと安価さ故に数が揃うことは、PKO部隊としては有利なんじゃないでしょうか。
ま、ホントのことをいうと、問題の真相は、車両の選定なんかより、「現場で今銃撃を受けていても、独自判断で行動できず、上位の判断を仰げと言う法律の枷」の方なんでしょうがねぇ。
投稿: 神北恵太 | 2006/12/11 11:29
>ずいぶん脱線してますが
PKO任務に際し、確かに移動中の地雷にいかに対応すべきか、と言うのは問題になってくるでしょう。
でも、その車両が能書き通り地雷に強いのか、ホントに安価で数が揃うのか、そこの辺りに疑問がありますね、そしてPKOに求められるための任務に特化した装備だけ揃えるのは本当にクレバーなやり方なのかな、と言う気もします。
実際PKO任務に投入されている車両で舟底型対地雷構造の歩兵輸送車なんてのはそう多く無かったと記憶しています、むしろ軽装甲車両のように一般車両に防御能力を付加した程度の車両が多いんですよね、むしろ南アの車両なんかは導入されるだけでニュースになるぐらい珍しいです、正直、耐地雷能力なんてあんまり優先度の高い能力じゃないのではないかな、とも思います。
>「現場で今銃撃を受けていても、独自判断で行動できず、上位の判断を仰げと言う法律の枷」
そりゃ、現場でどんどん判断した結果事態の悪化を招いたという過去の教訓(蘆溝橋だとかまあ、これも枚挙にいとまがないわな)がなせる枷という奴でしょう、ま、現場にしてみればいい迷惑なんですが、何せ、自分のせいじゃない事で手足を縛られるようなモノだし。
今後、行動基準の厳格化だとかコミュニケーション手段の進化による、事態を遠隔地でもリアルタイムで把握できる能力の獲得と判断の迅速化なんてモノがあれば解決出来ることだとは思いますが、時間はかかるでしょうね。
投稿: ooi | 2006/12/11 13:11
ooi さま
外に出た自国軍人の行動に、多国籍軍各国並みの信頼が持てないんなら、「Show the flag」と言われた時点で、アーミテージに「Yes」でも「No」でもなく、「We can not do it」と答えるべきだよなぁと思います。
「約束したから人は送るけど、行って貰う人の判断力に関しては他国並の信用はしかねるんで、多めに枷をはめときます」では、済まないことだと思います。旗を見せるってのは。
投稿: 神北恵太 | 2006/12/11 13:51