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2006/12/11

ラストサムライだぞ

 昨日の日曜洋画劇場は、トム=クルーズ・渡辺謙の『ラストサムライ』。話題作だが放っておいた物をやっと見ることが出来た。

 わりと日本人のことはちゃんと描こうとしていたし、心理的な描写もよく出来ていたが、日本の描写は思ったよりワヤであった。ま、ワヤになったのは、背景としての日本の気候風土・文化・歴史であって、日本紹介映画ではないので、ちゃんと侍らしく侍を描いていれば、この映画としてはOKなのだ。
 そう割り切って見れば充分に面白く、隅を突つけばまた楽しいと言う、二重にお得な映画だった。

 1870年代後半、南北戦争と、その後のインデアン排斥戦の英雄ネイサン=オールグレン大尉は、新型連発ライフルの宣伝のどさ回り一座で、疾風のごとき連射で的を撃ってみせる仕事をクビになった。カスター将軍のもとで闘っていた時に、上官命令で、非戦闘要員の女子供が残るインデアンの村を強襲、虐殺をやらされたことで心に傷を造り、軍を去り、ショーまがいの早撃ちを見せながらの酒浸りの日々を送っていたのだが、その自堕落な日々も、酒への耽溺が災いして、雇い主からお払い箱にされたのだ。
 しかし、職を失った彼に、さっそく次の仕事が転がり込んできた。日本という国に行って、健軍されたばかりの国軍兵を鍛えると言う教官職だった。彼を推薦したのが、かつて、彼が融和を願ってインデアン達の間にとけ込んでまとめたレポートを元に、虐殺作戦を指揮した上官ベンジャミン=バグリー大佐からの推薦というのが気に喰わないが、給料も割と言い値で通る。古い馴染みの下士官ゼブロン=ガント軍曹も居てくれる。良い商売と思われた。
 渡った日本でネイサンはさっそく兵士の訓練を始めた。それとともに、維新前まで国の武力の中枢であったサムライという戦士階級のことを調べ始める。サムライは、独自の価値観を持ち、維新以降の新生日本とは上手く折り合わぬ古風な存在であったが、ただ消え去る古物ではなく、かつてこの国を動かしてきた、今もって大きな勢力なのだった。イギリス施設の一員として来日して以来横浜に住み着いて写真館を営むサイモン・グレアムが日本語を操るので、彼にサムライやブシドーについての本の翻訳を急がせていた。
 しかし、訓練半ば、研究に関してはとば口にも着けぬうちに、政府の方針に反対して東京を出奔して故郷の村に籠った、維新の英雄であり元老院のメンバーでもあるサムライの大立て者、勝元盛次への討伐命令が下り、ネイサンは未熟な兵達を連れて出撃することとなった。

 結果、未熟な兵達は、銃器を上手く使えず、サムライ達の前に惨敗。ガント軍曹は戦死、ネイサン自身もサムライ達の捕虜となった。
 かくして米国人ネイサン=オールグレンは、サムライたちの村の白兵戦で自ら刺し殺した男の家で面倒を見られると言う不思議な状態で、村が雪に閉ざされる一冬を過ごすこととなった。
 春になり、ネイサンが村に次第に迎え入れられつつあった頃、勝元のもとに、天皇から東京に出てくるよう書状が届いた。東京に出れば政敵どもに討ち滅ぼされるかも知れない。しかし、勝元は出立を決意する。

 その時、ネイサンは……。

 まあ、謎の明治維新、謎の政府ということは、横に置こう。サムライと初めて闘う霧の森が、なんだか巨大なシダが映えていたりして植生が変というのも諦めよう。サムライの村にシュロだかソテツだか、巨大な南方系植物があることも、いい。しかし、そんな暖かそうな村で「雪に閉じ込められて一冬動けない」のは絵面とはいえ何か変。建物とかをちゃんとロケで本物を使っているだけに、オープンセットの植生がなんだか気にかかる。

 気になりつつ、いろいろ考えた。

 で、ハタと気がついた。この不思議な国日本に来て、そこのサムライ達と気脈を通じ、そこで生きる(あるいは死ぬ)決意をするアメリカ人、北軍士官ネイサン=オールグレン騎兵大尉は、敗軍の兵として職を失い、放浪していたアリゾナの一夜の宿とした洞窟から、遥かバルスームへと旅立った南軍のジョン=カーター騎兵大尉と並ぶ人物なのではないか……ということ。

 そういう眼でこの映画を見ると、なんか面白いぞ。

 たおやかな美姫、力強き武人、張り巡らされる陰謀、為される正義。アメリカ人の心に、今もバロウズは生きているということか?

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コメント

私はこのスタッフに、修羅の刻を作って欲しいと思いました(マテ

投稿: 大外郎 | 2006/12/11 18:02

大外郎 さま

 おお、それはまた、見たことも無い江戸時代ですなぁ。

投稿: 神北恵太 | 2006/12/12 02:47

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