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2006/12/12

硫黄島が盛り上がっているぞ

 盛り上がっている。かつて無いほど硫黄島が盛り上がっている。

 ……とはいっても、『父親達の星条旗』『硫黄島からの手紙』のクリント=イーストウッド硫黄島二部作のことではない。硫黄島そのもののことだ。時事通信社の2006年12月11日の社会記事『硫黄島で急速な隆起=噴火への影響不明−地理院』の話。

国土地理院は11日、小笠原諸島の硫黄島(東京都)で、過去最大ペースの隆起が観測されたと発表した。同島では、2001年9月の噴火前にも急速な隆起が確認されているが、今回直接噴火に結び付くかどうかは不明としている。

 硫黄島は、Iwo Jima として日米双方に広く知られた、太平洋戦争最大の激戦地の一つ。活火山に拠る火山島であり、かつては硫黄の採掘が主要産業だった。太平洋戦争末期、その火山活動による硫黄ガスが噴出する中、坑道を掘り抜き潜んだ日本軍が、上陸して来る米軍を迎え撃った闘いで、日本軍は守備兵力20,933人のうち軍属82人を含む20,129人が戦死した。まさに玉砕というに相応しい激戦。

 それというのも、米軍の最新鋭重爆撃機B-29のサイパン←→東京の航路上のほぼ中間にある数少ない飛行場の造れる規模の島であり、日本へと向かう米軍爆撃機部隊をいち早く見つける東京防空網の最南地点であるこの島のレーダーと日本軍飛行場は、サイパン基地の安全にとっても、B-29の航路にとっても、のど元に刺さったトゲのように邪魔な存在だったのだ。ここを取れば、日本軍に拠るサイパン空襲は途絶し、しかもB-29にとっては日本上空で被害を受けた機体を緊急避難できる恰好の避難飛行場となる。
 遥かソロモンの向こうから怒濤の如く島伝いに北上してきた米軍は、割と気軽にこの小さなトゲをぬこうとしたらしい。

 しかし、ここを抜かれれば、東京が丸裸となることは誰の眼にも明らかであり、日本軍はここを重要拠点として、三倍の兵力で押し寄せる米軍に全力で反撃。トゲは意外と大きく、硫黄島は太平洋戦争最大の激戦地となった。

 ただし、この島で死んだのは、日本兵20,129人、米兵6821人強と米負傷兵21865人。言ってしまえば僅か3万人死んでいないのだ。
 昭和20年2月17日に島が陥落した後、3月6日に米軍は飛行場を回復。直後の3月10日の東京大空襲では、325機のB-29が東京上空を舞い、8万人(一説には10万人)の市民が被害者となり、焼失家屋は27万8千戸、当時の東京市の実に1/3が一夜にして焼け野原となった。
 同じ枢軸国のドイツが受けた最大の空襲であるドレスデン空襲で406機と580機のB-17による2回の爆撃による被害者は最大でも6万人と想定されている(他地方からの避難民が市内に20万人近く居たことから、詳細は判らない)から、この3月10日の東京大空襲の一夜の被害規模の大きさは、第二次世界大戦全体の中でも、二発の原爆に次いで苛烈なものと言えよう。

 さて、この硫黄島には現在、国土地理院の観測基準点がふたつある。2006年12月11日発表の『平成18年10月〜11月の地殻変動につて』では、問題部分を以下のように書いている。

硫黄島南東部に設置された電子基準点「硫黄島1」は、2003年10月頃から沈降していましたが、8月頃からは隆起に転じ、最近やや加速する傾向 が認められます。また、島の南西端に設置された電子基準点「硫黄島2」の「硫黄島1」に対する南東方向の長期的な地殻変動もやや大きくなっています(PDF別紙10)。

 この硫黄島の動きが、同じ期に指摘されている「箱根山周辺では、山体を挟む基線で8月頃からわずかな伸びが継続していましたが、最近は伸びの傾向が鈍化したように見えます(PDF別紙9)。」と連動しているのか、独自のことなのかはよく判らないが、この時期、硫黄島が盛り上がるというのは、何だろうねぇ?

 やはり日本は言霊の国ってコト?

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