止めるべきかも知れないぞ
毎日新聞の2007年2月10日の記事『敦賀「ふげん」:原子炉補助建屋の強度、設計基準満たさず』は、ちょっと背筋が寒くなる話。
日本原子力研究開発機構(原子力機構)が福井県敦賀市の新型転換炉「ふげん」(03年運転終了)の原子炉補助建屋で行ったコンクリートの劣化調査で、壁面を抜き取った6カ所のうち5カ所の強度が設計基準を満たしていないことが9日、分かった。「施工に問題があったのでは」と指摘する専門家もおり、同機構はさらに詳しい分析を進めている。直前の「非破壊検査」では問題はなかったという。国内原発の建材に使われるコンクリートの劣化調査の大半は非破壊で行われており、今後の検査体制に影響を与える可能性も出てきた。
「ふげん」は日本が独自に開発を進めてきた新型転換炉の原型炉で旧動力炉・核燃料開発事業団が79年に本格運転を開始、98年に廃炉が決まった。解体を前に試料を採取し、他原発の老朽化対策に反映させようと、昨年10月、24年間でどの程度コンクリートが劣化したかの調査を始めた。
結果は半数以上の地点が設計基準強度を下回った。最も強度の低かったところでは、1平方ミリメートル当たりにかかって耐えられる力が、設計基準値22.06N(ニュートン)に対し、10.6Nしかなかった。
記事に書かれているコンクリートを壊さず、外部から強度を測る事前の非破壊検査では全地点が基準をクリアしており、破壊検査と非破壊検査で結果が大きく分かれた。というのは、何とも怖い話である。経年劣化ではなく、もともと工事に問題があったのではないかという指摘を考えると、この国の原子力開発というものをどこまで信用して良いのかと言う、根源的な疑問に到達する。
通常、稼働している原子炉をバラして、コンクリの強度検査を行なうことは有り得ない。非破壊検査が主である。ということは、施行に問題があってコンクリ強度が足りなかったにも拘らず、非破壊検査では何の問題も見つかっていない施設は、まだまだあるかもしれない。最悪、原子炉施設の全てが、コンクリートに脆弱性を抱えているかも知れないということだ。
1999年9月30日、茨城県那珂郡東海村でJCO(株式会社ジェー・シー・オー)(住友金属鉱山の子会社)の核燃料加工施設が起こした東海村JCO臨界事故(通称「バケツでウラン事件」)が発生した。この時、神北が考えたのは、今、倫理とか道徳とか言う人の善性に信頼を置く基盤のタガが外れかけているこの国には、特に安全面において、原子力開発の能力が無いのではないかと言うことだった。
いくら、「高度な安全基準」とか「厳格な監視態勢」とか言っても、基準を守らず監視すら誤摩化す悪風が根を下ろしている。JCO事故では、原子力施設ですら、その悪風がはびこっていたことを知った。そして、狂牛病騒動の時の牛肉ラベル偽装事件、今度の不二家事件。
安全や安心というものに払う努力や出費を、「経済的ではない」という一言で排除し、ウソの説明でリスクを他人に押し付ける気風。それが、日本を席巻し、破滅への警鐘が鳴らなければ破滅は来ないと信じて、鐘を取り外してしまうような滑稽さ。
神北は、原子力というのは、非常に効率の良いエネルギーであり、安全性への留意を怠らない限り、今後の日本に必要不可欠の産業要素だと思って来た。が、1979年から既にこんな体たらくだったとすると、ちょっと意見が変わって来た。
安全性が確保出来ないなら、原子力エネルギーの開発は、きっぱりとここで止めるべきかも知れない。
やはり、これからの電源は、ダムだ、ダム。水力発電だ。
しかし……、ダムのコンクリ強度が基準値に達していなかったら……。
(ToT)
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