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2007/02/25

技術立国日本の家電製品の凄さだぞ

「バブルは、崩壊して初めてバブルとわかる」アラン=グリンスパン

 2007年2月24日土曜日、女房と2人で、『バブルへGO!!~タイムマシンはドラム式~』を見に行って来た。バブル期を知らない2007年の20代前半の娘が、タイムマシンでバブル景気末期の1990年3月へと跳び、急激なバブル崩壊の起因となった不動産融資の総量規制を止めるというお話し。我々の世代にとっては永遠に『気まぐれコンセプト』のであるホイチョイ・プロダクションズによる5本目の映画。

  『私をスキーに連れてって』 (1987年)
  『彼女が水着にきがえたら』 (1989年)
  『波の数だけ抱きしめて』 (1991年)
  『メッセンジャー』 (1999年)
  『バブルへGO!!~タイムマシンはドラム式~』 (2007)

……と。ホイチョイ映画を振り返ると、最初の3作は、バブル景気に向かって世間が突っ込んで行く世相を映した恋愛ドラマ——というよりは、世相に乗り切れてないオクテな純愛ドラマかな?——である。1987から2年に1本ずつ3本作られた。8年の沈黙を破って作られた『メッセンジャー』は、バブルも遠く去った1999年。がむしゃらに走る自転車便のストイックな青年を、草彅剛が熱演した。

 そして、さらに8年開けて、2007年の今年、再び帰って来たホイチョイ映画は、バブル景気が断ち切られる直前の絶頂期1990年3月という狂躁の時代わずか数日を鏡に、標語やドラマのテーマとしては絶えること無く訴えられつつも実際には現代日本で最も軽く考えられて来た価値観の一つである、「家族とその絆」を描いた、ハートウォーミングなコメディーである。

 今、バブルの頃ほどの経済力はないが、当時にはなかったような巨大ショッピングモールやインターネット、便利な家電品に囲まれて暮らしている我々が、あの時代の山を越えるために、そしてその後の泥濘を泳ぎ切るために、置いて来てしまったものは何だったのかと、17年の時を遡って考えさせられる映画でもある。あの時代、時代の波に乗って踊った人、それを横で眺めていた人、踊っているなんて知りもせずに別の何かに打ち込んでいた人。是非、いろんな人に観てもらいたい。

 田中真弓(広末涼子)は、同棲相手が残して逃げた借金200万円に苦しむ22歳。シングルマザーとして、女で一人で彼女を生み育て、先日、理由はよく解らないが突然海に身を投げ、遺体さえ見つからなかった母の真理子(薬師丸ひろ子)の通夜にまで、借金取りの田島(劇団ひとり)が現れて香典をごっそり持って行く始末。この田島、1990年代初頭のバブルの頃に長銀に入行したものの、その後の長銀破綻のあおりを食らって転落人生。それでも今も、街金の取り立て屋という最低の職ながら、金融と云う場から逃げられないでいる。
 そんな通夜の場に現れた、母のかつての大学時代の同期だった財務官僚の下川路功(阿部寛)は、真理子に真弓と云う娘がいたことに驚きつつも、諦めた計画の続行を画策する。
 下川路に呼び出され、財務省へと足を踏み入れた真弓は、政財界を牛耳る「芹沢ファンド」代表の芹沢良道(伊武雅刀)とすれ違う。バブル崩壊直後に機を見て退職しファンドを設立し、M&Aの雄としてバブル崩壊後の日本経済の大混乱期を牛耳る男だが、元をただせば1990年にバブル崩壊の引き金となった不動産融資の総量規制を発表した元大蔵官僚だったという、ポストバブル時代のキーマンである。
 下川路に迎えられた真弓は、半地下式のどう見ても窓際部署としか見えないが、やたらと警戒厳重な怪し気な部屋に連れて行かれ、彼とコンビを組む同僚の菅井拓郎(小木茂光)に紹介される。この部屋で彼らは、日本経済の崩壊を予測していた。その日は僅か2年足らずでやってくる。しかし、それを止める手段があり、自殺したことになっている母の真理子は、その実働要員として活動中に、連絡を絶ったというのだ。
 下川路と菅井は戸惑う真弓を車に乗せ、レインボーブリッジを見上げる芝浦辺りのある企業の閉鎖された研究所(いや、日立家電研究所って堂々と書いてあるんだけどサ(^_^;)。ちなみに馬場康夫監督はかつて日立製作所宣伝部に奉職していた)へと誘う。ここは、真弓の母田中真理子が勤めていた研究施設で、母は色々な家電品の改良を手がけていた技術者だった。そこでドラム形洗濯機の改良をしていた母は、ある日その洗濯機が、ある、洗濯以外のとんでもない機能を持ってしまったことを知る。なんとこの機械は(どんな理屈なのかはよく解らないが)17年前へと時間を遡ることが出来るタイムマシンになっていたのだ。
 真理子は、バブル崩壊を止め、日本経済を破綻から救いたいという下川路と菅井の意を受け、このドラム式タイムマシンの中に入って17年前へと跳び、そして消息を絶った。
 2人は真弓に、17年前へ跳び、母を救い、バブル崩壊を防いで日本経済を救って欲しいと頼む。しかし、真弓はさすがにそこまでの大冒険に出かける決意が付かない。そこで下川路は「バブル経済が続けば、今現在の真弓の借金なんか吹っ飛ぶぞ」と諭す。真弓の目が(ちょっと打算的に)きらめいた。
 かくて、前代未聞の大作戦が決行される。17年前に遡って芹沢良道に不動産融資の総量規制発表を見合わせて日本経済を救い、行方不明となった母を救うために、一人の若い女性が旅立った。洗濯機の向こうに待つ、狂躁の時代へと。

 この母親の研究室の下りが素晴らしい。
 母の真理子が改良していたという家電品を物珍し気に見ていた真弓が、フと扇風機のスイッチに触れると……。下川路が止める間もなく、スイッチが押されたとたん、爆発的な風力で吹き飛んだ扇風機が反動でとんでもないスピードで飛び出し、コンセントが抜けて止まったものの、既についたスピードで壁にめり込む。ああびっくりした、今のは何だったのと立ち上がろうとした真弓が手をついて、ついついスイッチを押してしまった掃除機は、爆発的な吸引力で部屋中のものを吸い込みかねないシロモノだった。
 こんな、普通の扇風機や掃除機を、米軍の秘密兵器か007のQの小道具かという、トンでもない化け物に「改良」してしまう母、田中真理子の天才ぶりを、何の言葉も使わずに示してしまう。この技術力を持つ母なら、ドラム形洗濯機を改良しているうちに、ついついタイムマシンを作ってしまっても何の不思議もないと、このお話しに入り込むためのキモの部分を観客に十分に納得させてしまうのだ。

—————————— ネタバレしますよ ——————————

 この先15行でネタバレしますよ。未見の方は、映画鑑賞後に改めておいで下さい。



















 まずは、配役を褒めておきたい。主人公の広末涼子(田中真弓役)と阿部寛(下川路功役)の軽妙さと薬師丸ひろ子(田中真理子役)の気丈さは当然として、吹石一恵(テレビリポーターの宮崎薫役)や劇団ひとり(バブル崩壊に玩ばれた元長銀マン田島圭一役)や、森口博子(赤坂の芸者玉奴を廃業して今や六本木のママの玉枝)、伊武雅刀(バブル崩壊を起こしてでも一人勝ちに回ろうとする悪役、大蔵省金融局長、芹沢良道役)。どれもはまり役と云っていい。
 そして、小木茂光(財務省で下川路と一緒に窓際官僚コンビの菅井拓郎役)がまた良い。この人、テレ朝の二時間ドラマ「土曜ワイド劇場」で9年間に11作も作られた定番シリーズ『おとり捜査官・北見志穂』の警視庁捜査一課主任井原也寸志役などで、シブい演技が光る、結構、神北のお気に入りの役者さんなんだが、今回もよく脇を固めている。

 さて、この映画、別にバブル礼賛映画でもなければ、それがいつまでも続けば良いというような浅薄な欲望充足映画ではない。上にも書いたように、バブルを鏡に、「家族とその絆」を描いた、ハートウォーミングなコメディーである。勧善懲悪&ハッピーエンドな爽快なドラマでもある。そしてもう一つ、さりげない演出で、過去の時間移動テーマの映画へはらわれた敬意が嬉しい。
 一つは、ラスト、帰って来た真理子と真弓を出迎えるゴージャスな現代。バブル経済がソフトランディングし、繁栄を続ける明るいポストバブル期の日本。これは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の過去から帰ったマーティが、成功者となったマクフライ家に驚くシーンが、日本全体に置き直ったもの。なんせ、○○○○ー○○ッ○が3本もあるのだ。これは景気が良い。(いや、ホント(^_^;))
 二つ目は、タイムマシンが作動する瞬間の、どんどん時間が巻き戻されて、最近建った建物が全て建築の手順を逆に辿ってどんどん削れて行って無くなってしまうシーン。これが映画にタイムマシンが現れた最初の作品、『タイムマシン』(1959年アメリカ ジョージ・パル監督)へのオマージュでなくて何であろうか。
 もう一つは、これはちょっと気づき難いが、未来を変えるために戦う、母であり戦士である田中真理子(薬師丸ひろ子)の、サラ=コナーっぷりだ。警察に連行される原因となった、首相の車の前に飛び出して直訴しようとするシーンの思い詰めた目は、リンダ=ハミルトン演じる『ターミネーター2』のサラ=コナーそのものである。

 とはいえ、あの安っぽいながらもキラキラしていた、金が余っていながらも誰もがスマートなお金の使い方を知らない成り上がりだった時代に、全く憧憬や望郷の念がないわけではない。
 六本木のディスコに集う、まだ自分が何者になるかもよく解ってない人々(デビュー前の飯島愛・Jリーグ発足以前のラモス瑠偉・入社直後の新人アナ八木亜希子が本人役で登場)や、まだ曙橋にあった頃のフジテレビでプロデューサーに番組を降ろされかけて必死に食い下がる新人の飯島直子(本人役)は、あの熟んだ時代が密かに育み、直後に芽を出す次の時代そのものだ。あそこでバブル景気があったと云うことは、良くも悪くも、今の日本という国を形作る大きな要素であった。
 1990年の4月から長銀に就職する田島に連れて行かれた、1990年3月、バブル絶頂期の学生達の卒業パーティー。求人率200パーセントと云われ、引く手あまたの金の卵達が、その直後に襲って来る不況を予見することもなく、狂躁に身を置いた最後の春。もちろん映画の中のその華々しさには、経済が後退する気配は見えない。
 それは偶然歴史が淀んだ瞬間の短い徒花であったにせよ、面白かったし、荒っぽいながらも豪快でもあった。そして、今のニートが増え、正社員率がどんどん減っている産業構造と較べると、いかにも健全である。それなりに、経済の活力源は国民が職場で働いて稼ぎ出していたという裏付けがあったのだ。民間の活力が頂点を極めた瞬間。それは、一つの日本経済の成果でもあり、最終的に上手く乗りこなす方法を誰も思いつけなかったというマイナスを差し引いても、充分にその健全性を誇って良いものだったと思う。

 そのバブルの中で面白可笑しく日々を暮らし、かつての自分の恋人真理子が自分の娘を生んでいたとはついぞ知らなかった1990年当時の下川路は、バブル崩壊を食い止めるための戦い(?)の中で、かつての恋人である1990年の田中真理子から真弓が自分の子だと知らされる。家族という今まで考えもしなかった枠組みを与えられた下川路は、その瞬間、バブルの寵児から別の何者かに変わる。それがどれほど彼を変えたかは、ラストシーンが物語っている。
 それは、父はないものとして、誰が父親であるかも教えられずに育った真弓にとっても、その真弓に経済的な苦労をさせまいと仕事に没頭し続けた母の真理子にとっても、大きな意味があった。

 これは、家族再生の、ひいては経済再生、国家再生の夢を描いた物語なのである。

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