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2007/03/17

海底の英霊達だぞ

 田中正文(なかまさふみ)さんは、1959年生まれだということは、神北より2歳年上。ベテランのスキューバ・ダイバーにして、世界の失われつつある美しい海底を撮影するカメラマン。この方が、2002年にパラオの海に潜って以来、強く惹かれて撮り続けて来られたのが、海底や、ジャングルの奥に今も残る、太平洋戦争の遺物。多くは、兵器、基地塹壕後、そして生活機器。
 1920年に国際連盟が発足するとともに、戦勝国日本が委任統治する事になった旧ドイツ領、南洋諸島。パラオのコロールに南洋庁が置かれたのは、2年後の1922年。それから僅か20年足らずで太平洋戦争が始まり、戦局極まった1944年3月30日のパラオ大空襲以来、最後までペリリュー島で徹底抗戦を続けた34名が救出される1947年4月2日まで、この南洋の楽園は、戦争の中にあった。

 今、60年あまり経ってなお、重く海底に残る太平洋戦争の証言者達。沈没した軍艦の中に残る英霊達の遺骨を収集する旅を通じて、田中さんが撮り貯めた2万8千枚の写真の中から、選び抜かれた120枚が、このたび、『記録写真集 パラオ 海底の英霊たち』田中正文(並木書房 ¥3800+税)として纏まった。A4版百四十余ページの、見応えのある写真集である。

 神北は、この中に2点、写真の撮影地点を総覧する地図図版を提供させて頂いた。架空戦記の作戦経路を描いたうそ地図の仕事も多いが、地図図版の作成者としてこれまでにも度々、戦史解説書の類も手伝わせて頂いている。だが、今回のこの本はその中で特に重い。
 プロの写真家の精緻を尽くした撮影により鮮烈に捉えられた、楽園に点在する兵器の残骸が、美しければ美しいだけ、沈鬱な何かをもって我々に語りかけて来る。

 海底写真を撮るスキューバ・ダイバーだった田中さんが、なぜここまで、太平洋戦争の残骸に集中して行ったのか。沈没艦艇の中に入るために、閉所での長時間潜水作業を可能とする閉鎖循環式潜水器具まで使われるようになって行ったのか。120点の写真を通して、その想いが少しずつ見えて来る。

 太平洋戦争の事を特にご存じない、興味ないと云う向きにも、一度、手に取って見て頂きたい写真集である。

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パラオ海底の英霊たち―記録写真集/田中 正文 ¥3,990 戦後60年余り、誰に知られることもなくパラオ沖の海底に眠る戦没者。 総潜水時間260時間、5年の歳月をかけて撮影した2万8000枚の写真のうち120点を厳選。 各写真には詳細な解説記事を付け、パラオ... [続きを読む]

受信: 2007/03/29 22:09

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