Illustratorの実力を探るぞ
バージョンダイアログ Illustrator 形式での保存時のオプション内にあるバージョン選択メニュー。ちゃんと日本語が使える最古の形式Illustrator3形式までサポートしている。 |
Adobe Illustrator CSを導入したとき、一番嬉しかったのが豊富に増えた機能だったのは言うまでもないが、一番困ったのは、古いIllustrator形式での書き出しがうまく出来なくなったことだった。
我々の商売は、印刷用のデータをIllustratorで作ることだから、どんなに多くの機能がついていてどんなに便利に凄い図版が描けても、編集作業で使うソフトに乗らないファイル形式では話にならない。それ以上に困るのが、データが編集ソフトになんとなく乗りはするものの、どうも不安定で、表示が崩れたり印刷から消えたりする、しかもそれがよく判らない理由で起こったり起こらなかったりする場合だ。
ま、大昔はプリントアウトして持っていったものを印刷所で写真製版したりしていたから、ファイル形式とか、何のソフトを使っているなんて事は全く関係なかったが、今の出版業界では、Illustrator図版はこのソフトとバージョン、そして使用フォントが何より重要だ。
ところが、このCS(最初のCreativeSuite、ここでは判り易くCS1と呼ぼう)のIllustratorでは、文字関係の制御方式をより自然な日本語印刷文化に合わせる為に、大幅にいじくった。そのため、Illustrator10とか、当時まだデファクトスタンダードだったIllustrator8形式等の旧い形式に無理やり吐き出そうとすると文字組が崩れるため、それを避けるために文字を一文字ずつバラバラに位置決めしたり、あげくの果てはアウトラインを取って絵としておいたりすると云う、一種涙ぐましい、しかし、誰のためにもならないようなおせっかいな仕様になっていた。
おかげで、Illustrator CS1の便利な機能を使って好きに作った図版を、それと同じぐらいの時間をかけて、文字をコピー&ペーストでエディタに移し、文字をすっかり空にして、旧バージョン形式で保存。旧バージョンのソフトで開いて、ひとつずつエディタから戻して行くと云う、ちょっと気の遠くなるような面倒くさい作業を強いられた。
前回のCS2へのバージョンアップを諸般の事情で見送ったので、神北にとってこれは、それ以来3年半(4年弱って云っても良いかな)不満に思い続けていたIllustratorCS最大の弱点だった。
それが、なんとか解決している。これは助かった。
ドキュメントプロファイル CS1ではCMYK形式とRGB形式の2種類しか選べなかったがCS3では……。 |
あと、これは便利というしか無いのが、新規ドキュメント作成の時に、ドキュメントプロファイルとして、いろいろな「元型」が選べるようになったことが有り難い。
……と云っても、何のことか解りにくいかも知れないが、旧来のCS1では、CMYKかRGBかという2種類から選ぶしかなかった。とりあえずこれで、スウォッチ(あらかじめ作ってある色を納めたパレットだと思って下さい)をCMYK配色かRGB配色か、ということだけ(でもないけど)が選べた。しかし、印刷用のCMYKで作るデータと、Webなど用のRGBで作るデータの違いは、それだけではない。たとえば、線の長さ・太さの指定は、印刷用データのときはミリ単位が扱い易く、Web用データのときはPtやPxで言い表されるドット単位の長さ指定の方が合理的だ。
だが、RGBが使えるようになってからこっち、CMYKがRGBかは新規書類を開く時に選べたが、CS1などでは長さや太さの単位は別に環境設定で変更する必要があった。
ドキュメントプロファイル なんと選べる設定が増えているだけでなく、自分独自の「オレ設定」も…… |
それが、今度のCS3では自由に選ぶことができる上に、自分のカスタマイズしたよく使うスウォッチなど、いろいろな設定を含んだドキュメントプロファイルを自由に組み込める。
今までは「テンプレート(ひな形)」という形で、これに近いことを行うことができたが、ひな形というのは「CD/DVDのラベル」とか「4×4シール台紙」「9×9シール台紙」とかのもっと専門特化した形式の事であって、こういう汎用的な設定には、ドキュメントプロファイルという形の方が相応しい。
ただし、このドキュメントプロファイル、意外と無敵ではない。
なんと、線の長さ・太さの指定はドキュメントプロファイルによって変化させられるのに、文字の大きさの単位(ポイントか級と歯か)は、ドキュメントプロファイルでは変化しないのだ。
文字だけは、結局、環境設定からいちいち手で変える必要がある。印刷用図版も作ればWebサイトも作るという、神北のような仕事をしている人間に取っては、これは不便だ。是非、次のリビジョンアップで、文字単位の設定切り替えも自動的に行えるようにして頂きたい。
また、文字サイズの単位を級数表示に変更しても、文字パレット内のプルダウンメニューで表示される決め打ち数値がポイントのままなのも、そろそろなんとかしてもらいたい。いや、単に級数表示にするだけではなく、自分のセッティングで、よく使うポイント数・級数をメニューに覚え込ませられるようにしてもらいたいのだ。
元がアメリカ製ソフトなので、日本語の級数表示で使うというごくわずかの人の事など後回しなのは致し方ないが、そろそろ対応しても良いと思う。
神北標準Printの設置を確認 「New Document Prifiles」フォルダに「神北標準print.ai」を置いている。 |
ちなみに、このドキュメントプロファイルの設置場所も変わった。前はアプリケーションフォルダ内に置かれていたのだが、CS3では違う。本来、MacOSXでは、アプリケーションフォルダは不変のものとして扱い、設定などの保存に関しては、主に「ライブラリ」内の「Application Support」フォルダを使う事になっているから、こうした変更はその線に沿ったものであり、非常に好ましい。
MacOSXのIllustrator CS3の場合、自分のユーザーディレクトリ内の「ライブラリ」の、「Application Support」の「Adobe」の「Adobe Illustrator CS3」の「New Document Profiles」フォルダに、それが納められている。プロファイルは通常の「.ai」形式のファイルで、名前は自由に付けられるので、神北は自分の標準的な環境をまとめたファイルを「神北標準Print」と名付けた。ただし、あまり増やし過ぎても使い勝手は悪くなるので、ここに置くのは標準的なものに絞り、残りはテンプレートを使うべきなのだろう。
まあ、そこいらへんは個人のセンスとか趣味とかで弄ってよい部分だが、他人が触ったときでも、できるだけ判り易いに越した事は無い。
神北標準Print これが神北の現在の作業画面。スウォッチや文字はよく使うので常時展開している。 |
この「神北標準Print」でウィンドウを開くとこんなふうになる。iMacG5は画面を1面しか使えないので、全てのパレットを贅沢に開く訳にはいかないが、同時に触る事の少なそうなパレット同士を細かく重ねたり、折り畳んだりして軽快なアクセスやパレットを渡り歩く作業を楽にできるよう考えた結果だ。ちなみに、今開いている文字パレットは、そのうち使わなくなって来るかも知れない。というのは、プルダウンメニューの直下に選択ツールに応じたオプションバーが出て、このパレットにある事の何割かはそこから素早く対応できるようになるからだ。ただ、問題を上げれば、パレットでフォントを選ぶときはポップアップメニューの各フォント名がそのフォントで表示され、選択の一助となるのだが、オプションバーのポップアップメニューはそれがなく、大量のフォントを突っ込んでいて名前がうろ覚えだと、どのフォントを選ぶべきか判り辛くて困らされる。
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