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2007/08/13

ロケットは男の嗜みだぞ

 えっと、間が空いたが、ダイコンmini7のお話。4企画の内3企画に出席した神北にとって最後のひとつ、『ロケットまつり』のお話。

あると
球形ロケット真横から
 燃焼を内圧としてとらえたとき、ロケットエンジンが球形になるのは必然、規模にもよるが、十分実用的な解答の一つだそうで、多段ロケットの最後の段など、つまり衛星の最終軌道投入用とかに使われるロケットだそうだ。当日、会場に持ち込まれた球の直径は概ね10〜15センチぐらい。

 メインゲストは、林紀幸さん。もと宇宙科学研究所のロケット班班長さんで、 故糸川英夫先生に師事し招聘され、四十年以上にわたって日本のロケット開発に取り組んだ打ち上げ現場で技官をなさっていた方。既に引退され、今は、二見の旅館街にある登録有形文化財「賓日館(ひんじつかん)」の理事として、NPO法人「二見浦・賓日館の会」の初代事務局長として、悠々自適の引退生活を楽しんでおられるらしい。

 この林さんを迎えるホスト側として、笹本祐一・松浦晋也という、この方面で最近、活躍の目立つ若手(っても、お二人とも40代半ばだけど)作家を据えて、宇宙研のロケット開発に関わる、あんな話やこんな話をお伺いするという企画。

 なんせ、戦前の噴進弾(ロケット弾)などはあったものの、今に続く日本のロケット開発の流れは、太平洋戦争の後の糸川英夫先生から始まったわけで、その糸川先生から直接「一緒にロケットの開発をしませんか」と誘われた人の証言というのは、今になってみると貴重としか言いようが無い。

 これも、科学音痴のマスコミが、誰一人、その現場に密着して長期に渡ってルポルタージュを続けるということをしてこなかった所為である。……そういう ことをしたがる若手記者が居たとしても、意義を見いださない上司が止めていたのかも知れないが……。とにかく、軍機に触れるわけでも企業秘密になっている わけでもない、別に誰が機密にしたわけでもないのに、日本のロケット開発の歴史や意義というものはマスコミによって殆ど語られてこなかった。「上がった」 「落ちた」「何億円が海の藻屑に」しか報じない。

あると
球形ロケットの内部
 爆発整形のあおりか、実際に噴射させたときに生じたものかは不明だが、なかにベコっと凹みが……。

 技術発展期というのは、スクラッチ&ビルドの連続であって、当然、失敗してこそ進む研究も多い。現在までの日本のロケット開発が、基礎研究と実用化が並行して行われている世界であ ると理解していれば、実用衛星を上げるという仕事とともに、そのためのロケットの実験も兼ねているのだから、成果が欲しければ欲しいほど、研究時点の歩留 まりを気にし過ぎても仕方が無い。
 ところが殆どのマスコミは、ロケットの打ち上げ失敗とマンションの耐震偽装とを質的に区別していない。高い金を出して買ったマンションが価値を失くせば、それは純粋に経済的損失だが、ロケットは上がろうが上がるまいが、打ち上げを行ったこと自身がデータであり、研究成果なのだ。そこから先に進むことが出来る大切な土台なのだ。

 ホスト役のお二人はそこいらへんをちゃんと理解しているわけで、林さんのサービス精神旺盛な人柄もあり、お話はイロイロととんでもない方向へ……。

あると
球形ロケットのノズルになる蓋
 ネジで回してガッチリと止める蓋。

 今回、壇上の机の上にズラリとならんだのは、林さんがいろいろな同僚たちから譲り受けるなどして現在まで保管しておられた、往事の試作品など。
 圧巻は、最終段の軌道投入用小型モーターなどとして使われることが多いという球形ロケット。理論的には内圧に一番耐えうる形状としての球体構造ということは理解できるのだが、長年、ロケットとは細長いものと思い込んで来た身体(頭?)がなかなか納得してくれない。だが、いかに頑固な信念でも、この現物の持つ説得力にはかなわない。しかも、これ、削り出しから爆発整形まで、製法の段階からトライ&エラーを重ね、モノにして行ったという話で、ロクロ(旋盤ってコトだね)で削り出したもの、爆発成形で一気に鍛造するものまで、いくつもお持ち頂いた。
 ロケットがいかに職人技の世界から出てきたものか思い知らされる。ボタンを押せばガチャコンと完成品が出来てくる世界ではないのだ。
 こういうことを知らずに、知ろうともせずに、工業製品扱いで成否の歩留まり数値だけで、全てを推し量ろうとするマスコミにますます腹が立つ。

あると
台座に置かれた球形ロケット
 なぜか赤みがかった照明のせいで、ウルトラセブンに出て来る秘密兵器みたいだが、ホンモノである。台座の形状は特に意味はないらしい。

 もちろん、球形ロケットだけをお持ち頂いたわけではない。ペンシルロケットのいろいろなバリエーションもお持ち頂いたのだ。
 ノーマルな、我々も形状をよく知るペンシルロケット、2段式ペンシルロケット、そして、実際に上がりはしなかったようだが、第1段目として推力を増すために、3連クラスター化されたクラスター型ペンシルロケット試作品。そのバリエーションを聞くだけでも、日本のロケット開発の最初期に、糸川先生が何を考えていたのかが見えてくる気がする。

 林さん自身はペンシルがほぼ役目を終えた後、もう少し大きなベビーロケットの時代からロケットに携わった方なので、ペンシルロケットの発射経験は少ないという。
 その代わりというわけではないが、現代の大型モデルロケット程度の大きさまで進歩したベビーロケットや、そこから徐々に本格化して来る宇宙研のロケットに関しては、完成したロケットを秋田の道川海岸の射場まで運ぶ話から、そこも手狭になって内之浦に移って行く話まで、苦労話や爆笑話、ここだけの話を存分にお聞かせ頂けた。

あると
ペンシルロケット(本物)中央は三連クラスター
 ちなみに手前のガラス瓶の中に入っているデッサン用コンテを少し太くしたようなもの(頭だけ見えている)は、後に開発された比較的安全なロケット用固体燃料だそうだ。当然全部ホンモノ!

 本来このロケットまつりは、新宿のロフトプラスワンで数を重ねているイベントで、SF大会などを中心に、何度と無くこうした番外企画を執り行っておられる。だから今回も『ロケットまつり外伝in大阪』というのが正式名称。
 次に大阪出張晩があるのがいつのことかは未定だが、いろんな宇宙関係のキーパーソンを御呼びしながら東京の本伝の方はまだまだ続くそうなので、ご興味をお持ちの方は、細かく発表情報をチェックされたい。

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コメント

 ども、はるばるおいで頂きありがとうございました。

 んで、最後の写真、ガラス瓶の中の固体燃料はペンシルではなく、もっと後世のもの。一気に爆発する危険なダブルベースではなく、低圧環境ではまあ花火程度にぼそぼそ歳か燃えないコンポジット系固体燃料です。

 林さんは、ロケット開発した人というよりは現場でロケットの組み立てをやってた人で、開発者ではなく技官です。宇宙研では、研究所側の博士や助手が研究所側の技官、メーカー側の開発者、技術者や職人といっしょにロケットを作ってたんで、宇宙研の現場の職人、のちロケット班長ともなれば親方って感じですかな。

投稿: 笹本祐一 | 2007/08/13 12:37

ささもと さま

 ありがとうございます。ご指摘をいただいて、少し元文をいじりました。
 

投稿: 神北恵太 | 2007/08/13 14:56

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