星雲賞を刷ったぞ
ここ数年、星雲賞の賞状は神北が作っている。昨年までは、星雲の名の通り、NASA発表の星雲の写真を使ったりしていたのだが、今年は世界大会ワールドコンと日本大会の同時開催のため、より「和」を強調したデザインが良かろうということで、上の『星雲賞』と書かれた有翼神獣型の飾りと文言をそのままに、背景画を一新した。(有翼神獣型の飾りも、背景に会わせて色を微調整している。)
絵柄は、いろんなものを組み合わせようかと想ったのだが取り敢えず、自分の写真ストックの中で、一番和のテイストが出ているのが信州の有明山神社の彫り物だったので、それを使わせてもらった。この彫り物は立川流の清水虎吉・山口灌之正の作だそうな。それと右下に、今年のSF大会会場のパシフィコ横浜を配した。さすがに色は、文言が映えるように青系統に沈めているが、絵的には触っていない。なかなか凄い龍が雲に乗っている構図。
写真の真ん中の抜けている所に、各章項目と受賞作・受賞者、文言本文が入る。
で、これの中央部に、【日本長編部門】から【特別賞】まで、14枚分それぞれの文言が入ったものを作る。共作・共訳や翻訳物の場合は複数者に渡すため、【日本長編部門】【日本短編部門】【海外長編部門】【海外短編部門】【ノンフィクション部門】【メディア部門】【コミック部門】【アート部門】【自由部門】の9部門と、今年は【特別賞】があったので、それを含めて10部門だが、製作数は14枚。
たいていは都内の東京リスマチックというプリントショップ・チェーンの決まったお店に依頼しているのだが、今年は神北が飯田橋の編集部に毎日通っているので、移動経路に近い、同系列の別のお店に持ち込む。
一番厚い紙で、A3ノビ。それをトンボで裁断してA3の賞状を作る。
DVD-Rに14枚分のデータを入れる。「このデータだけ2枚刷って」「3枚刷って」とかやると混乱しそうなので、全く同じものでも別のデータとして作る。で、毎年「このDVD-Rの中の Adobe Illustrator データを、この種類の紙に全部打ち出し、トンボで裁断して下さい」と依頼している。
しかし、2007年8月30日の木曜日、仕事の会議があって大会に行けなかった日。いつものように依頼したところ、お店のスタッフが「この Illustrator データに読み込まれている Photoshop データがありません」という。「バック絵2.psd」というファイルを使うようになっていたのだが、「バック絵.psd」というファイルしか無いと云うのだ。
どこかで移し間違えたかと思い、その日はとにかく家に戻る。が、家でDVD-Rを確認すると、ちゃんと「バック絵2.psd」が入っているではないか。
翌日、もう一度同じディスクを持って行く。で、同じ手順を踏むと、やはり「ファイルがない」と店員が云うので、別の確認用のMacに入れてDVD-Rを再確認することに。
古いMacG4を立ち上げて、確認……。と、DVD-R内に確かにファイルを発見。
「ホラ、あるじゃない。こっちは、昨晩からもう半日予定を遅らせてるんだよ。勘弁してよ」
「あれ、おかしいなぁ、アッチでHDDにコピーして確認してみたときは、確かにこの「2」が消えて「バック絵.psd」になっていたんですよ」
「オイラもMacを20年近く使っている下、そんな目にあったこと無いよ」
「ボクも初めてですよ。おかしいなぁ……。じゃ、ここでHDDにコピーしてみましょう。……アレ、消えないなぁ……」
……勘弁してくれよ。東京リスマチックさんよぉ!
「じゃ、急いで出力作業をします。が、作業はこちらでなく、近所にある作業部署で行いますからちょっとお時間を……」
「その作業所まで撮りに行ったら早くなる?」
「あ、はい、であれば、1時間ほどで」
「OK。じゃ、1時間後にそこへいくよ、場所を詳しく教えてくれる?」
……ということで、飯を食って、1時間後に作業所の方へ。
「ええと、この時間までに上がると聞いてきました神北と云いますが……」
「あ、今、データがこちらに入り始めましたので、今から作業を始めます」
「何バカなこと云ってんの? 出来上がる時間が今だろ?」
「あ、いえ、なにぶんデータが大きくて……」
(今、データがこっちに入り始めたって云わなかったっけか?)
んー。大丈夫か、東京リスマチック?
「まー、とにかく打ってもらうしかしゃーない。急いで!」
さすがプロというか、やれば出来るじゃないというか、それから僅か20分ほどで、14枚の賞状はプリントされ、裁断され、奇麗に仕上がった。
かくして、ワールドコンの二日目ももう半分終わろかという頃、やっと一年最大のファンダムへのご奉仕を終えた神北は、横浜へと向かった。
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コメント
頂きました。
前にノンフィクション部門で頂いたとき、賞状の本文に「あまたのSF活動、著作物の中で」っていう文章に「これはSFじゃなくてノンフィクションなんだがなあ」って言ったら、さりげなくそこらへんも直されているあたり芸の細かさを感じます。
ありがとうございました。
投稿: 笹本祐一 | 2007/09/07 11:28
笹本祐一 さま
まずは、星雲賞受賞おめでとうございます。
自由部門の活動をどう言い表すかとか、日本・海外の長短編部門やメディア部門・コミック部門では「あまたのSF作品」になっているところをノンフィクションでは「あまたの作品」に表現を変える等、常に文言は精査を重ね、毎年バージョンアップを繰り返しております。
賞状のデザインとしては、なるべく荘厳な感じを出しつつも、SFの賞らしく、新しさも感じさせるということで、地色を濃く、文字色を明るくという、普通の賞状とは逆のバランスで纏めています。
なんか、この仕事は、連合会議の議長がみーめ女史から熊倉くんに交代しても、このままオイラの担当らしいので、まだまだ、デザイン・文言ともに磨きを掛けて参ります。
投稿: 神北恵太 | 2007/09/07 12:00
SFが好きで星雲賞で検索してたどり着いたリOマ元社員です。
大変な目に会われましたね…
内情ネタになりますが、リOマは中はもうボロボロです。
プロと歌っていますがそれも営業所のほんの一握りの方が支えているのが現状でして大抵の社員はそんなに知識がありません。
私が居た時点(2009)ではフォントの検索すら出来ない社員も居たくらいですから。今後使う時はお気をつけください。
星雲賞の作品がとても好きなので、迷惑をかけていた事に対して私自身が仕事をして迷惑かけたわけではありませんが遺憾に思います。
一つだけ元社員の言い訳として、会社が社員に対して冷たいのでベテランが去る一方なのです、多分、神北さんが当たったのは1-2年の社歴の若い人かもです。
PS・失礼ですが、名前とメルアドは伏せさせて頂きます。特定されちゃうかもなので…。変なコメントですみません。
投稿: 元社員 | 2010/02/09 20:11
元社員 さま
どこも人件費コストを抑えたい一念で、一番大事な人材から順に出してしまうのですねぇ。お疲れ様です。
この2007年の次の2008年・2009年と、神田駅からの徒歩距離が近いお店を使わせて頂いてますが、良い仕事をして頂いております。
そうそういろいろな店舗を試したわけではありませんが、2007年みたいな目には遭っておりませんし、対応も親切、迅速。大変助かっております。
また、安定のためいくつも前のバージョンに固執する印刷屋からの希望で、現行のアプリケーションから大幅に機能を落とさざるを得ない、書籍制作の現場とくらべ、かなり迅速にDTPアプリケーションの進歩に追従していただけるのも、嬉しいところです。
投稿: 神北恵太 | 2010/02/09 21:19
神田をお使いでしたか。それは良かった、本社に近いので其処だけは粒ぞろいがいるのです。
勘が冴えたのかもですね(・∀・)
私が覚えている範囲だと使えるのは水道橋、神田、早稲田くらいでしょうか。後は何処も、どんぐりの背比べです。
アプリケーションの新しいのに迅速に対応してるのにも訳がありまして、アドビさんの実験場にされてるのです(´ー`)なので対応が早いのです。ベテランじゃないと扱いきれていないのが現状ですが。ただ色んなお客様がくるので柔軟には対応できると思います、もしも対応が不満なときは裏技ですが、「センター長呼んでよ」これでかなり社員びびります(笑)。
(  ̄ノ∇ ̄) ̄ー ̄)ヒソヒソ 内緒ですが。
参考になれば良いですがこれで良いお仕事をしてくださいませ。
投稿: 元社員 | 2010/02/10 03:58
元社員 さま
これは、良いことを教えて頂きました。
アドビのアプリケーションへの対応が早く、しっかりした対応のお店は貴重なので、これからも大事にさせていただきたいと思います。
投稿: 神北恵太 | 2010/02/10 05:34