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2007/09/14

零号の初号だぞ

 神北は、地図屋なので、地図を書くのは当たり前。で、その地図の多くは、書籍に使われている。が、たまには珍しい使われ方をするものもある。
 じつは、映画のプロップ用の地図を頼まれたのである。確かもう3年も前のことだ。で、苦心惨憺して地図を書いた。ま、書いたというよりは、ほぼ70年前の原図を再現というべきだろう。

あると

 旧海軍トラック錨地、大日本帝国南洋の要石たるこのトラック諸島全体の海図を、昭和30年代の修正版海図を元に、太平洋戦争当時海軍が使用しているの海図として、再現した。
 とはいえ、プロップがどこぞに流れて歴史をゆがめてはいけないので、実は一つ細工がしてある。最下部の細かい字で原版発行からの改変を逐一記述してある所の、原版発行責任者(もちろん、海軍水路部が作っているのだから、総責任者は海軍大臣である。)の名前が、「林家しん平」となっているのである。

 そう、依頼主は落語界の中堅所にして特撮映画の自主制作でもつとに知られる林家しん平師匠。故林家三平門下の噺家さんで、1990年に真打ちとなり、古典・新作の研鑽の合間を縫って様々な面白いことに手を出しておられる、落語界屈指の面白人間のお一人。

 このたび、長い苦心の日々を終え、ついに、この地図の使われた映画『深海獣零号』の初号試写が行われることになった。制作会社インターメディアの担当者からお越し下さいとのお誘いのメールを頂戴する。もちろん行きますとも、行かいでかい!

 五反田のイマジカの第2試写室をほぼ満席にして集まった関係者を前に、まずは、しん平監督の挨拶から、上映はスタート。

 「云っときますけどね。これは、落語家が作った怪獣映画ですから、ゴジラやガメラと同じ厳しい目で見ちゃいけません! んで、終わったら、みんなで拍手と! あの、これは仲間内のお披露目であって業界試写じゃないですからね。業界試写によくある、終わった途端にみんな無言で下を向いて立ち去るってのはやめて下さい。ありゃ、関係者ヘコみます。宜しいですか、くれぐれも是非、盛大なる拍手をお願いしますよ……。」

 当然、満場割れんばかりの拍手である。

あると

 昭和18年、2年前に竣工し、連合艦隊の旗艦となった軍艦大和は、トラック島にあった。ここは差し渡し50キロもある巨大な環礁であり、環礁内で空母が全力航行し、艦載機を発進させることが出来るという、太平洋に広がる海洋国家大日本帝国にとっても希有な軍事基地であり、太平洋最大の拠点であった。

 大和第一砲塔の大迫分隊長( 螢雪次朗)は、ある日、夏島の老漁師から、こんなことを聞かされる。
 「もう、夜に漁に出ることは止めた。光る、ホネの魚が来たからだ。光るホネの魚とは、全身が骨で覆われた魚だ。これは人を喰らう。しかし、恐ろしいのは光る魚だけではない。この魚を追って「レイゴー」が現れる。レイゴーは、竜だ。恐ろしい竜だ」
 大迫は笑って追い払った。勝手に男の子と決めつけて既に名前も「力」と書いて「つとむ」と読むことにしている、妻の腹の中の子供のことの方が、そんなおとぎ話よりももっと気になっていたからだ。

 しかし、この後すぐ、第日本帝国海軍は、ある意味、米国海軍よりも恐ろしい相手と遭遇することになる。
 補給艦隊を迎えに出た部隊が、敵潜水艦と見なして海中の何者かに砲撃を仕掛け、これを葬った。観測員たちは、潜水艦とは違う水柱の上がり方に鯨を誤認誤射したかと思ったが、深く気には留めなかった。

あると

 だが、連合艦隊の誰一人として知るところではなかったがこの時、砲撃を受けたのは、謎の海棲巨大生物の親子で、砲弾の命中によって絶命したのは、子供の方であった。連合艦隊は知らずして、恐ろしい敵の恨みを買っていたのである。

 やがて、大和の甲板で海から飛び出してきた大きな魚に人が食われるという事態が発生した。2名死亡、1名負傷、10名行方不明。唯一の生存者の言によると、飛び出してきた巨大な魚は、全身骨に覆われ、光っていた。
 そして、逃げ延びた生存者に話を聞いて甲板に駆け上がった海堂少尉(杉浦太陽)は、骨の魚こそ見なかったものの、水面から顔を出す巨大な生物を目撃した。

 杉浦と大迫の話が、山神長官(黒部進)に伝わった。現在、連合艦隊が対峙している相手が、米軍の新兵器などという人類の作り出したものでは無く、人智を超えた大自然の驚異、未知の巨大海棲生物であると知った長官は、参謀たちに作戦立案を命ずる。レイゴーを撃破せよ。

あると

 かくして、大日本帝国海軍の精鋭連合艦隊第一戦隊と未知の巨獣との、想像を絶する戦いが始まる。

 どーです、みなさん?!

 面白そうでしょ。もう出だしだけでたっぷりと面白そうな怪獣映画のニオイがしているでしょ?

 そう、面白いんですよ、これ。ちなみに、ちょっとばかし詳しいスタッフ・キャスト表はここ 。神北を除いて、なかなかそうそうたるメンツでしょ。

 こりゃあ、しん平監督も、朝5時まで掛かって、手書きのポスターを2枚も(実は貼ってない3枚目も書いたらしい)描いちゃう訳だ……。

 ただ、残念なことにまだ、公式サイトにも、劇場公開などの予定については何も書かれていない。しかし、これはもったいない。
 是非とも、見たいという声を、あちこちから上げてもらいたい。

 劇場を、制作会社を、動かしてもらいたい。 

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コメント

おお、ようやくできましたか、ゴジラ対大和。是非みたいです。ところで、これって、ひょっとして林由美香さんの遺作になるんですか?

投稿: N | 2007/09/15 00:44

N さま

 そう、完成いたしました。
 林由美香さん、突然死された女優さんなんですね。詳しい活動歴を追ってないので何とも言えないですが、時期から言って、遺作である可能性は大きいかも知れませんね。詳しくなくてすんません。

投稿: 神北恵太 | 2007/09/15 05:53

 こんにちは。突然のコメント恐れ入ります。
 私は、「ガメラ医師のBlog」管理人のガメラ医師と申します。2005年8月以来、映画ガメラに関する情報収集Blogを更新しており、こちらの記事にはガメラの検索から参りました。
 拙Blogでは従来より、ガメラ関連の話題として、『深海獣零号』についての情報を随時まとめており、
零号情報普及活動の一環として、この度9月15日の拙Blog更新中で、こちらの記事を引用・ご紹介させて頂きましたので、ご挨拶に参上しました。差し支えなければ拙Blogもご笑覧頂ければ幸いです。
 長文ご無礼致しました。それでは失礼致します。

投稿: ガメラ医師 | 2007/09/15 16:16

ガメラ医師 さま

 ご紹介ありがとうございます。拙いレポートで申し訳ありませんが、現在、配給に向けての営業努力の真っ最中というお話です。これは僕の個人的な見解であり、なんら何かを保障するものではありませんが、期待してお待ちいただける作品と思っております。

投稿: 神北恵太 | 2007/09/16 11:54

 神北さん、その節はご協力いただきまして本当にありがとうございます。自分でもレイゴーの書き込みや宣伝をあちらこちらでしたいのは山々ですが色々なプロジェクトの先走りをしてしまいそうなので自粛しているところです。
 これさえ決まれば総てを発表できるのに・・とも思うところです、最初の話題から随分と時間が過ぎ年も何度も改まり・・・しかしレイゴーは完成しておりますので、あと少しで上映やDVDも発売となるものと・・・ざっくり言えば今年中には決着がみれるのです、それもあと少しのところです。
 その時は変わらぬ支援をお願いいたします。
その一端として自身のホームページの掲示板に外国でのレイゴーPRの写真をのせておきました。

投稿: 林家しん平 | 2008/01/31 09:52

林家しん平 さま

 師匠、お疲れさまです。
 『深海獣零号』は、出演する俳優さんやら、ドラマのシチュエーションやら、あらゆる面で我々「怪獣世代のちびっ子」(……といいつつ、不惑を遠に超えていたりしますから、もちろん「元」がつきます)にズドンと来る作りなので、早く皆さんに見せたくてしかたがありません。
 良い公開法に恵まれて、この大きなプロジェクトが成功することを願っております。

投稿: 神北恵太 | 2008/01/31 23:23

神北さん、連絡が遅くなりましたが、いよいよレイゴー上映浮上いたします。
 まずは6月12日下北沢の北沢タウンホールにて一日中「深海獣レイゴー祭り」で四回上映します、グッツも色々作りましたよ。
 後は7月の宮崎映画祭に8月16日からはレイトショーが下北沢シネマアートンで9月6日まで三週間連続上映です。
 池袋・新文芸座でのオールナイトイベントや大銀座落語会では時事通信ホールでの上映も決まっております。
 詳しい事はしん平のHPに掲載しております、忙しいとは思いますが是非、お友達と応援観戦にきてくださいね、今後ともレイゴーを宜しくお願いしまーす。

投稿: 林家しん平 | 2008/04/07 10:55

林家しん平師匠

 お目出度う御座います。

 思えば、書き込んでいただいた4月7日は、63年前に戦艦大和が沈んだ日。切り目の日にこのニュース。きっと、海に散った防人たちに、この映画が応援されているのでしょう。

投稿: 神北恵太 | 2008/04/08 00:44

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