「貴様は生きろ。俺にはもう息子がいる。多分日本のどこかで、貴様と同じように戦うつもりでいるはずだ。うまく行けば、生き残って将来の日本を支えてくれるはず……順番から言えば、俺の方が先に靖国入りしていいだろう?
貴様も同じことだ。おやじより先に死ぬな。それが息子としての務めだ。若いもんが死に急ぐのは、お国のためにならん負け犬の考え方だ。苦労して国を支え、そして子を持ち年寄りになる。死ぬのはそれからでいい」
吹上浜中央区分担当、第十六方面軍南部支隊第五七師団第三連隊第六歩兵小隊長 前原宗近少尉
『帝国本土決戦 [1]特攻作戦、発令!』羅門祐人(コスミック出版 コスモノベルス 895円+税)
久々に巨弾シリーズと呼ぶべき架空戦記の新シリーズで、地図を担当させて頂いた。幾度となく仕事でも組ませて頂き、友人としても親しくして頂いている羅門祐人さんの新作である。
架空戦記の面白さの一つは、「その世界がどこで我々の世界と違う路を歩き始めたのか」という、最初の一点がどこかということに有る。……と神北は思って
いる。「ここの一点で違う分岐に入った世界は、どんな歴史を刻み、どんな様相を呈するのであろうか?」……これは架空戦記ジャンルの母体である歴史改変モ
ノや疑似イベントモノといたSFジャンルの楽しみ方であり、思考ゲームの出発点になる。
また、架空戦記に限らずだが、小説にせよドラマにせよアニメ、漫画、映画にせよ、作品が読者に受け入れられるかどうかは、「お話しの概要を一言で言い切れるか」に掛かっていると思っている。
その面でこのお話しを見てみると、非常に簡潔な一言で言い表せるスタートを切っている。
「軍部の主戦派が8月15日の玉音放送を阻止し、太平洋戦争が終わらなかった世界」である。
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