大学生の犯罪だぞ
「人格の修養と健康の増進を重んじ、個性を尊重して各人の天賦の特性を伸張させる」との建学の精神を掲げる甲南大学は、どんな人材を育てようとしているのだろうか。
サイトを見てみると、1951(昭和26)年の大学開学とあるから、大学としての歴史だけで57年。そもそもは、1910(明治43)年に住吉村近隣の実業家の間で、私立の幼稚園および小学校を創設する計画が生まれ、1911(明治44)年に幼稚園、続く1912(明治45)年に小学校を創設した。その後、1919(大正8)年に甲南中学校を開校、1923(大正12)年には尋常科(中学)4年、高等科3年の7年制高等学校となり、甲南女子学園を含め、富裕層子女の教育機関となったようだ。戦後、これを整備し直し、現在は資本系統は別れているものの幼稚園から小・中・高・大学とひと揃い、「甲南」の名の付く教育機関が連なり、神戸・芦屋付近に根を下ろしているらしい。
大学には現在、文学部、理工学部、経済学部、法学部、経営学部がある。また2008年4月から知能情報学部を、2009年4月からフロンティアサイエンス学部・マネジメント創造学部が開設される予定。
asahi.comの2008年3月11日の記事『被害者役の女性と痴漢でっち上げ容疑、男子大学生逮捕』の話である。
知人女性とうその痴漢被害をでっち上げたとして、大阪府警阿倍野署は11日、甲南大学4回生の蒔田(まきた)文幸容疑者(24)=京都市山科区=を虚偽告訴容疑で逮捕した。無関係の会社員が府迷惑防止条例違反容疑で逮捕されたが、後になって被害者役の女性が「示談金ほしさにうそをついた」と自首し、事件が発覚した。
調べでは、蒔田容疑者は2月1日、大阪市営地下鉄御堂筋線の車内で、男性会社員(58)の腕をつかんで取り押さえ、「痴漢した」と、同署員に虚偽の申告をした疑い。この際被害者役の知人女性(31)が泣き崩れる演技をしたという。
——後略——
2008年3月13日の続報『「信じてもらえず、不安と悔しさ」 痴漢でっち上げ事件』を読むと、この事件の酷さが判ってくる。
——前略——
「お尻触ったでしょ」
2月1日午後8時半ごろ、大阪市営地下鉄御堂筋線の車内。ドア付近でポケットに手を入れて立っていたKさんの肩に、隣に立っていた女性(31)がぶつかったと思うと、そう言い放った。
否定すると女性はしゃがみ込んで泣き、離れたところで立っていた男が「触りましたよね」と近づいてきた。男は虚偽告訴容疑で逮捕された甲南大学法学部4回生、蒔田(まきた)文幸容疑者(24)。「はめられた」と思った。
——中略——
女性が示談金ほしさにうそをついたと自首したのは2月7日。1月末に大阪・ミナミの路上で声をかけられて交際するようになった蒔田容疑者に「金に困っているので協力してくれ」と持ちかけられたという。署に呼び出されたKさんに署員が「自分たちもだまされた」と頭を下げた。同署は今月11日、蒔田容疑者を逮捕した。
——後略——
何とも酷い話だ。中略した部分が特に酷い。まあ、「被害者」が泣きながら訴えたという部分もあるのだが、駅に来た阿倍野署員に「白状したら許したる」とハナから決めつけられた状態で、誤認逮捕されたKさんは精神的に非常にまいったようだ。
※引用内の被害者男性の名前のみイニシャルに変更しています。
結局、男手ひとつで育てた3人の娘さんが父親を全面的に信じていたこと、職場でも、「Kさんに限ってあり得ない」とみんなが信じてくれたことが支えとなって、なんとか意地を通せたらしい。
事件は、2008年2月1日。この被害者役の女が自首したのが3月7日。実にひと月以上、この58歳のお父さんは、痴漢の汚名を着せられていた訳だ。
この蒔田文幸容疑者が通っていたのが、甲南大学の法学部である。
記事はKさんの言葉として、府警に対し、「うそを見抜くのは難しかったと思うが、今後同じことがないよう、ちゃんと話を聞くべきだ」と述べるとともに、「示談金目当てと知ってがくぜんとした。大学で法律を学んでいる者が、なんでこんなことをするのか」と怒りが収まらない様子を報じている。
法律の専門家になろうと勉強していて、その知識を悪用しかしない。これに怒らない人はいないだろう。
甲南大学は既にトップページからのリンクで、……
本学学生の逮捕事件について
3月11日に本学学生が逮捕された事件につきましては、大学といたしまして、被害に遭われた男性に心よりお詫び申しあげますとともに、世間をお騒がせしましたことを重ねてお詫び申しあげます。
本学の学生がこのような事件を引き起こしましたことは、まことに残念でなりません。本件に関しましては、現在も警察により捜査が進行中であり、引き続き大学として詳細を把握するよう努めてまいります。
今後は、このような事件を二度と起こさないよう、大学として人物教育に取り組みますと同時に、当該学生に対し、学則に則り厳正な対応をしてまいります。
……と、表明している。無論、この蒔田という学生が、どうしようもないヤツだと云うことは間違いない。平均的な学生でないどころの話ではないことも判っている。しかし、この大学で4年間勉強をして来た(ってことは、普通に行っていれば卒業間近ってことだよな)法学部の学生が、在学中に遊ぶ金欲しさにこの計画犯罪を起こしている以上、教育を施した立場として「被 害に遭われた男性に心よりお詫び申しあげます」程度で済まない気がする。
ちなみにこの蒔田容疑者、「当番弁護士が来るまで一言も喋らない」とうそぶいているそうだ。甲南大学がほぼ4年間かけて施した教育が、この男の犯罪計画の背中を押し、そんな法律的な小知恵をつけるだけの結果だとすると、ちょっと寂しい。
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コメント
痴漢事件というのは最低の犯罪分野で、本物の痴漢の被害者の多く(大半かもしれません)が泣き寝入りしている一方、いったん痴漢よばわりされたら無罪証明の方法はほとんど無しという、強気に出た方が勝ちの弱いものイジメの世界です。
また警察・司法の世界では有罪を前提に反省の色があるかどうかが重視されますから、「やってません」を押し通すと絶対に不利です。
したがって、痴漢疑惑をかけられたら、たとえやっていなくてもひたすら警官や被害者(?)に謝って、示談の方向にもっていくのが戦術的には正解ということになります。
てなことを法学部で学んでいたのだとしたら、悲しいですね。
投稿: 東部戦線 | 2008/03/14 16:54
東部戦線 さま
結局、裁判が、判決を下す裁判官の前で、双方の言い分を聴いてもらうという形である以上、どんな裁判も勝負はディベートと証拠の見せ方に勝敗のカギが架かっているのでしょうが、特に痴漢事件に関しては、なかなかそうはいかないそうです。
膠原病で手の指があまり動かない上に、動かすと痛くて堪らないという人が、パンティーの中に手を突っ込んだ痴漢事件の犯人として、地方裁で有罪とされた上に、高裁では棄却されて、今度、最高裁に上告するという話を、今日、モーニングショーでやってました。
怖い世界です。
投稿: 神北恵太 | 2008/03/14 17:12
ニュース検索中、問題の痴漢冤罪事件についてこんな記事を見つけました。
【衝撃事件の核心】ブログで「憂国」気取る痴漢でっち上げ大学生 (1-3ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080316/crm0803161038002-n1.htm
> 日本とアメリカとの関係やイラク戦争を批判。「日本はアメリカから離れて真の自立をすることが最適だと思います」と力説する。さらに「日本がリーダーシップをとってアジアを一つにまとめEUのような強力な組織をつくる事が最善の策」と訴え、「アジアの統合こそが僕の夢なのです」などと記している。
新左翼というか新右翼というか、こういう反米・八紘一宇男がいるんですね、21世紀になっても。
投稿: 東部戦線 | 2008/03/29 15:05
東部戦線 さま
この発言自体、何らかの詐欺行為の一環なんじゃないですかねぇ。
投稿: 神北恵太 | 2008/04/01 10:29