妖精図鑑を奪い合ったぞ
2008年4月29日(火)、昭和の日。昭和天皇の慈愛に満ちた面影を思い出し、平等公正質素で、国民の傍にあろうと常に努力しておられたことへの敬愛の念を新たにした日。せっかくのお休みということで、映画『スパイダーウィックの謎』を観に行った。
いや、観に行ったというのは語弊がある。浦和駅のパルコまで買い物に出たついでに、シネコンの様子を覗いたら、ちょうど時間が良さそうだったので、ひょいと入ってみたというだけだ。
博物学の徒アーサー=スパイダーウィック(デヴィッド=ストラザーン)が盛りに囲まれた観察フィールドでもある自宅で、とあるある書物を封印してから80年。
夜の闇の中、母ヘレン(メアリー=ルイーズ=パーカー)の運転する車でスパイダーウィック邸にやって来たのは、双子のサイモンとジャレット(フレディ=ハイモアが一人二役)と姉のマロリー(サラ=ボルジャー)の一家。父母の別居のためニューヨークを離れ、自然豊かなこの地に移り住んだのだった。
80年前、アーサーは行方不明になり、その娘で「父は妖精に誘拐された」と頑に主張し精神を病んだとして入院させられ、今はどこかの養老院で余生を送っているらしいルシンダ大叔母さんの唯一の係累がヘレンなので、この80年間放っておかれた屋敷の所有者は、今、この一家なのだ。
屋敷にやって来た最初の晩、ジャレッドは変な物音を聞く。壁の中からの音か。傍にあったたホウキでコンコンと壁を叩く、コンコンと返事が返ってくる。もう一度叩く、また帰ってくる。なにか意志を持ったものが壁の向こうにいる。壁を叩くうちに、一部が崩れ、何故か埋め込まれ何十年も隠されていた食事運搬用の手動リフトが見つかった。そのリフトの中に、ついさっき姉のマロリーが無くしたというメダルが見つかった。何故何十年も隠されていたところに今しがた無くしたメダルが置かれていたのかジャレットには理解出来なかったが、マロリーはジャレッドの悪戯に違いないという。母も、壁を壊すことを責めこそすれ、話を聞いてくれない。ジャレッドは、謎を解明して身の潔白を証明すべく、リフトを使って上階へ。そこでリフトの通じている屋根裏部屋を発見した。
屋根裏部屋にあったチェストは、リフトの内に置かれていた鍵で開くことが出来た。その中で、衣類に包んでひっそりと隠されていた一冊の本を発見したジャレッドは、「読むな」と書かれたメモが挟まれ、封印されていた本を開いた。その途端、スパイダーウィック邸を中心に、何者かの雄叫びが響き渡った。
それは、ジャレットたち一家を巻き込んで、人間と悪意の妖精たちとの間に巻き起こった戦いの、幕開けだった。
原作は、ホリー=ブラック著・トニー=ディテルリッジ絵の『スパイダーウィック家の謎』(全5巻)。未読のため、この5巻中、どこまでがこの映画に入っ
ているのか、良くは判らないが、断片的な情報から推察すると、5巻全部を(少なくともメインストーリー的には)描き切っているらしい。
学者的情熱と人生全てを掛けて80年前にアーサー=スパイダーウィックおじさんが書き記した「妖精図鑑」には、妖精の姿形に止まらず、生態、弱点まで記
録されており、前に一部漏出した時には、断片を何ページか手にしたマルガラスの手により、ホブゴブリン一族が滅ぼされてしまった。ホブゴブリン唯一の生き
残りであるホグスクイールは、復習の機会を狙っていたが、マルガラスの部下である低俗なゴブリンたちに捕まり、ジャレッドに命を救われて同盟を誓う。
オーガーの王マルガラス対3兄弟(プラス家付き妖精ブラウニーのシンブルタックと、一族の敵討ちを誓う恐がりのホブゴブリンのホグスクイールと、三姉弟の母)の、妖精図鑑をめぐる闘いは、映画的スピーディーさで、2〜3日の出来事として纏められている。
マルガラスの狡猾さや、グリフィンで空を飛ぶ爽快さなど、子供向け映画の面白さをちゃんと残しつつ、少年の自立と家族との和解という現代的なテーマを着実に描き、充分に大人も楽しめる映画にまとまっているのが面白かった。
ぜひ観ろという程ではないが、見て絶対損の無い映画。
ハッピーエンドの持って行き方も、ちゃんといくつものパーツを忘れずにつなげていて見事なもの。新作の方の『日本沈没』の脚本家は、これを100回は見た方が良いな。
これが楽しめなかったら、その人は自分の感性の方を疑うべきだと思う。
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