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2010/03/06

元祖にしてトップランナーだぞ

「や!! ひさしぶり」しゅた! (梶先輩)

『ストップ!!ひばりくん! コンプリート・エディション 1〜3』江口寿史(小学館 各巻¥1400+税)

 早くに父を亡くし、高校生にして今度は母を失った坂本耕作は、母の遺言に従い、母の古い友人である大空いばりを頼り、ひとり上京する。しかし、いざ東京に来て初めて知ったのだが、大空家は「関東極道連盟 関東大空組」と看板を掲げるやくざの家。大空いばりは、その組長だったのだ。
 すぐにでも逃げ出したい耕作だったが、今となっては行くあても無い。しかも、この家を去りがたい理由もすぐに出来た。大空家には、多くの若い衆とともに、いばりの家族が暮らしている。妻は亡くなっていたが、いばりの娘であるつぐみ、つばめ、すずめの美人三姉妹。そしてもう一人、とびきりの美少女がいた。
 しかし家長のいばりは、その美少女をこう紹介した。「長男のひばりだよ」と。
 耕作とひばりのどきどきライフが、ここに始まる。

 1982年から83年にかけて、江口寿史が週刊少年ジャンプで連載した『ストップ!! ひばりくん!』を、単行本未収録となった作品を描き直して三巻組に再編集したもの。これは2010年に於ける『ストップ!! ひばりくん!』の完成形である。
 今回は決定版ということで、ネームで止まっていた最終話をはじめ、加筆訂正など大掛かりな直しが施されている。また、著者がその出来への不満から単行本収録を拒み続けていた話数も、いろいろな経緯から失われてしまった原稿を著者自らが再び描き直すことまでして、収録している。
 もちろん、大量に書き足した訳ではないので、ひばりくんと耕作がその後どうなってゆくのかという読者最大の関心事にまでは触れられていないが、それは第三巻の後書きで著者が……

 大空ひばりくんや坂本耕作くんのその後を描く可能性も今後なきにしもあらずだが、それはたぶん「ストップ!! ひばりくん!」というタイトルの物語ではないだろうと。

……と書いているように、既に閉じているこの物語に敢えて継ぎ足してゆくことが、良いこととは誰にも言えまい。

 しかし、今回こうして読み直してみて、この27年前のギャグ漫画の質の高さ、そのハイセンスぶりに驚かされる。そして、もう一人、この時代を引っ張り多くの人に多大な影響を与え、そして週刊連載の軋轢に徐々に呑まれて行った鬼才、鴨川つばめを思い出す。江口さんも鴨川さんも、少年漫画に、しかもギャグマンガに、少女漫画の形式・技法・文脈というものを持ち込み、美少女を(エロく)描いた。そして今にして思えば、その作品への我々の支持が、後の日本漫画の進む一つの道を決めたのだ。
 27年も前の作品とは到底思えない、テンションとセンス。「男の娘(おとこのこ)」という概念がいつからある物やら解らないが、すくなくともこの「ひばりくん」が、今の世代につながる、少年ユーザーに向けた「男の娘」としては、元祖であろう。しかも彼は、自然体で女の子の心を持っているのか、それとも全て目的があってのお芝居なのか、何を企んでいるのか全く見えない。これが、元祖にしてトップランナーと言う所以である。
 もちろん、少女漫画ではその数年前に、奇しくも時を同じくして新装本が刊行された岸裕子の『玉三郎恋の狂騒曲』があるし、少年漫画でもつぶさに追ってゆけば、先行作が皆無という訳ではないだろう。だが、キャラクターが際立っていたことと、「白いワニ」に食いちぎられて未完のままとなったこともあり、印象が大きかったのは確かだ。
 せっかくのチャンスなので、是非、一度、手に取って読み返してみていただきたい。1980年代初頭のエネルギッシュな日本には、こんなコケティッシュなキャラクターが居たのかと、改めて目を開かされるだろう。

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