« 東京都が大変だぞ | トップページ | 『斬光のバーンエルラ』が面白いぞ »

2010/03/20

戦いは続くぞ

 一つ前のエントリー『東京が大変だぞ』で報じた、青少年保護条例に形を借りた思想弾圧法は、2010年3月19日金曜日の都議会総務委員会では民主党、共産党、生活者ネットワーク・ひかりの3会派の都議の皆さんがが反対に回って下さり、なんとか可決には至らなかった。
 しかし、否決でなく継続審議となってしまった。
 継続審議ということは、「これは現行の形のままでは不備もあるが、必要な条例なので、もっと検討して良いものに決めましょう」、という意味だ。ここいらへんに、推進派の自民・公明が可否を決する道ではなく、全会一致での継続審議を狙った理由だろう。全会一致での継続審議が決まったということは、全員が「必要と認めた」ので絶対に廃案にならないからだ。

 そして、年4期の会期を持つ都議会では、それは僅か3ヶ月後の6月だ。

 しかし、前エントリーでも訴えたとおり、これは、あまりにも筋が良くない改正案だ。「エロマンガ規制条例」という、だれもが異を唱え難い形を取っているが、その提要範囲はきわめて不鮮明にしか定義されておらず、いかようにも為政者の胸先三寸でしかない。

 賛成派の多くの人が「エロを目的としたマンガ・アニメといった物が街に氾濫するのを規制したい」というが、条文の書き方はきわめて漠然としている。図書類又は映画等で、青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるものというだけだ。
 都青少年・治安対策本部は「すべての性描写が規制されるわけでなく、大人への流通も制限されない」と言っているが、それは言っているだけで全く明文化されていない。

 同じように、青少年・治安対策本部 総合対策部 青少年課が文書で答えた物もある。

寄せられた反論 (抜粋) 反論に対する都の回答
実在しない青少年の性を描写した漫画等を規制す るのは、表現の自由を著しく損ない、自由な創作活 動や芸術文化の振興を脅かすもの。  この規定は、作品の設定として、年齢や学年、制服(服 装)、ランドセル(所持品)、通学先の描写(背景)などに ついて、その明示的かつ客観的な1表示又は2音声に よる描写(台詞、ナレーション)という裏づけにより、明ら かに18歳未満と認められるものに限定するための規定 であり、表現の自由に配慮して、最大限に限定的に定 めたもの。 このような明示的かつ客観的な裏付けがないにも関わ らず、単に「幼く見える」「声が幼い」といった主観的な理 由で対象とすることはできず、恣意的な運用は不可能。 (例えば、視覚的には幼児に見える描写であっても、「1 8歳以上である」等の設定となっているものは該当しな い。) なお、青少年への閲覧制限を目的とする不健全図書指定制度や自主規制制度において、著作者が規制される ことはなく、創作行為や出版、成人への流通は自由であ り、「検閲、弾圧につながる」「漫画・アニメ業界の衰退を 招く」との批判は当たらない。 
「性交又は性交類似行為」という規定ぶりが曖昧で あり、18歳未満のキャラクターの ・性を描写した漫画等 ・裸が出てくる漫画等 ・これらのキャラクターが出てくる漫画等 が全て規制の対象になる。 条例改正案第7条第2号や第8条第1項第2号における 「性交又は性交類似行為」とは、児童ポルノ法等におい て使用されている法令用語であり、「性交類似行為」と は、手淫、口淫、肛門性交、獣姦、鶏姦など、実質的に 性交と同視し得る態様における性的な行為を指すとされ ている。 本規定は、これらの性交又は性交類似行為を直接明確 に描写したものに限定され、性交を示唆するに止まる表現や、単なる子どもの裸や入浴・シャワーシーンが該当する余地はない。

 どうして、こうした基準がありながら、最初から提示していないのか?

 その理由は明示されていない。だが、もしかするとこんな基準を尊守する気はないからかも知れない。守りたくない基準が明文化されていると、自分が踏み越えた時に法律違反になってしまう。だから、明記せず、言葉で「大丈夫ですよ」とお茶を濁しておいて、とにかく法律を通してしまう。そういう企みがあるなんていう補償も証拠も無いわけだが、積極的に「ない」と言い切る根拠だって同じぐらいない。

 そして通ってしまえば、「青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」に該当するもの全てが、都の判断でなんとでも取り扱えることになっているのだ。
 「これは視覚的な物だけを対象としているので、小説は入らない」と説明では言うものの、そんなことはどこにも書いては無い。ということは、ある日突然、条文の改正のような手間もかけずに、範囲を小説や啓蒙書と行った物に広げることだって可能なのだ。
 また条例の条文をもとに解釈する限り、対象とするジャンルが絶対に性的なものだけだとは言い切れない。それだけに限らず、殺人事件の起こる話、戦争もの、死にたくなるような暗いポエムや血の凍るようなホラー、どんなものであれ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると為政者が思えば、かなりの広範囲のものを取り締まることが出来るのだ。

 しかし、よしんば都が本当に過度なエロ作品等を未成年者の目の付く場所に置きたくないという意志を持つのであれば、ゾーニングの徹底を図るべきである。ゾーニングに関しては、同人用語の基礎知識成年コミックマークゾーニング/ Zoning 等の項目を参照されるのが宜しかろう。これを徹底するのであれば、既存書店等のゾーニング対応にかかる改築費用の無利子融資や一時金等の制度などの様々なものが必要となるが、そういう形の方が実質的だ。

 憲法が保障している「思想及び良心の自由」と「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」は、人間が何を考え、それを発表しようとも、そのことを持って人を罰したり、発表の邪魔をしないという、国と国民との約束事だ。
 それを、冒すよりは、もっと先に出来る策はあり、今はそれを行うべき時なのだ。まだ、憲法で保障された権利を曲げる時ではない。

|

« 東京都が大変だぞ | トップページ | 『斬光のバーンエルラ』が面白いぞ »

コメント

 正確ではないと思いますが、昔読んだ漫画の主人公がこういったのが印象に残っています。
 「法律を守るのは善人。法律を破るのは愚か者。……法律を利用するのは悪人だ」

 「法律」を「道徳」に置き換えれば、この言葉は青少年保護条例を実現しようとしている人たちに当てはまるように思えます。
 警察や怪しげなNPOに独善を許すような制度は断固として拒否しなければいけません。彼ら自身のためにも。

投稿: 東部戦線 | 2010/03/26 23:39

東部戦線 さま
 東京都は、まさに今日、東京アニメーションフェスティバル(TAF)を開催し、そのコンテンツの素晴らしさを東京の産業にして行きたい旨を都知事が語っておられます。
 彼はいったい、ドコを向いて何をしたいのでしょうか。

投稿: 神北恵太 | 2010/03/27 10:44

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 戦いは続くぞ:

« 東京都が大変だぞ | トップページ | 『斬光のバーンエルラ』が面白いぞ »