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2010/03/04

またアホな法案が出てきたぞ

 2010年03月03日、連休を分散させる政府原案が、前原国土交通大臣を長とする観光立国推進本部の分科会で示された。たとえば、朝日新聞の2010年03月03日の記事『日本5分割で春秋5連休 政府がGW分散案』によると、こうだ。

 ゴールデンウイーク(GW)などに集中している連休を分散させる政府の原案が3日、観光立国推進本部(本部長・前原誠司国土交通相)の分科会で示された。日本を五つのブロックにわけ、春と秋の2回、週末を絡めて順番に5連休にする案だ。混雑を緩和し、観光需要を引き出す狙いだが、実現には課題が多い。

 政府案では、2回の5連休をつくるために祝日法を改正し、現在の祝日の一部が「休み」ではなくなる。現在のGWや秋の連休もなくなる。具体的には、憲法記念日(5月3日)、みどりの日(同4日)、こどもの日(同5日)、海の日(7月第3月曜日)、敬老の日(9月第3月曜日)、体育の日(10月第2月曜日)の6祝日が「休み」ではなくなる。その代わり、月曜から水曜の3連休を新たに春と秋につくり、土・日曜と連続してそれぞれ5連休にする。

 この5連休をずらして実現するため、「北海道・東北・北関東」「南関東」「中部・北陸・信越」「近畿」「中国・四国・九州・沖縄」の5ブロックに分ける。春の連休は5月の2週目~6月の2週目を対象期間とし、西から順番に連休にしていく。秋は10月の1週目からを対象に、同様にずらして設定する。

 たしかに、全国を5つに分け、休みの日をずらせば、4/5の国民にとっては普通に働いている平日なのだから、残り1/5が遊び回ったとしても、交通渋滞は減るように見える。
 しかし、5連休×5地方=25日間、日本のどこかで、平日の普通に働いている人に交じって1/5の遊び車が走り回るのだろう? しかも、春と秋の二回で計50日。
 さらに、大阪の人間がせっかくの休みで東京に遊びにきても、東京の友人にとっては平日だから「俺が案内してやるよ」という訳には行かない。近畿の人は近畿の人同士、南関東の人は南関東の人同士遊んでね、他の地方は平日でお仕事なんだから、邪魔しないでねと言われるのであれば、旅の楽しみだって半減であろう。
 しかもだ。たとえば、神北の実家は三重県北勢地方。現在では名古屋のベッドタウンとなっている団地がいくつかあり、テレビの電波も名古屋圏のモノを見ている。しかし、地域中核都市の名古屋や、そこから距離的に同じぐらいの位置にある岐阜・岡崎あたりは「中部・北陸・信越」、三重県は「近畿」。この地域では、お父さんの会社と子供の学校が制度上別の日に連休を割り当てられる家が結構あるはず。そういう家は、家族旅行の機会そのものを、年二回奪われてしまう。
 もちろんこれはどこに線を引いても境界線付近で起こる問題であり、線引きをずらすとかそんな小手先の調整で都合良く収まることはない。

 この施策、たしかに交通量や宿の取りやすさには貢献するだろうが、旅行に出難い家庭を作ったり、そもそも遠方を訪ねる動機を奪ったりと、出掛けるモチベーションを返す刀で一刀両断していないだろうか?

 また、連休で遠方からも人が集まりよいことを利用した、今のような全国規模のイベントというものは、どれも開催すら難しくなるだろう。映画の封切公開、演劇やコンサートも、モロに影響を喰らう筈。こういうものも、全国をツアーして回る規模ならよいのかも知れないが、ともかく、まあそこまでの規模が無いものだと、来れたかもしれない客を4/5奪われてしまうことになりかねない。
 当然、鮮度が売りの雑誌では、GW特集号とかは無くならざるを得まい。まあ、そのかわりGW進行(主に印刷屋と配送の運輸業者がゴールデンウィークに休みを入れるので、まる1週間出版業界が止まるため、その分、編集業務がGW前はすべて前倒しになるという出版界の悪癖。ちなみに、編集はGW進行をなんとか乗り切ると、ライターや絵描きに次の仕事を「休み明けまでに」とかなんとか依頼して、遊びにいっちゃうが、依頼を受けたライターたちに休みはない。)が無くなるかもしれないが……。
 もちろん、テレビも全国放送で「ゴールデンウィーク特番」なんか組めない。平日になってしまう4/5の人のことを考えると昼間はまず全国規模の特番を流せない。それを避けようと地域ごとに5週にわたって流しても、境界線の向こうでその放送局を見ている人々にとっては平日だから、当然見れない。
 まして、スポーツ中継とかも「平日昼に見れないよ」と常に国民の4/5が思うので、分散の悪影響を食らうことは確実だ。

 そもそもこの案を考えた人は、「人は、自分の地域社会で暮らしていて、社会、文化、放送の電波などはすべて同一の境界線できっちりと区切られており、隣の地方とのつながりは薄い」という夢のような社会モデルを想起して、この計画をすばらしい物だと勘違いしているのではあるまいか??
 そりゃテレビがやってくる前は、新幹線も無く飛行機も庶民の足ではないからかなりそれに近い状態であろう。ましてやラジオの前となれば、ますます以て人の暮らしは一つの地方に収まっていたのだろう。しかし、今はそれに加えてネットワークが張り巡らされ、高速道路網の整備が進んでいるのだ。地方に限定されない暮らし、広くつながった社会、全国規模の文化というものが日本の国民生活の基盤にある時代だ。そんな牧歌的な制度が馴染む訳が無い。
 このGW分割案は、こうして現代日本の文化を萎縮させ、発展を妨げ、多様化を阻害する弊害でしかない。言っていることが一方的で、現代社会・現代文化の緻密さや規模の大きさをた方向から見ていない。あのシブトく甦る机上の空論サマータイム導入論の馬鹿げ方と、よく似ている。

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コメント

 休暇分散化の推進というのは、休暇分散化ワーキングチームの上位組織である観光立国推進本部(平成21年~)の前身である観光立国推進戦略会議(平成16年~)の段階ですでに決まっちゃってました。
 内閣が変わろうが、政権が交代しようが粛々と推進されてきたのですよ。これは推進している主体が実際は役所だからです。

 観光立国推進戦略会議の報告書や議事録を見ると、当時は休暇シーズンに需要が集中するため業者間の競争がなくなってしまうことを強く気にしていたようです。
 下々の人民は競争させないとちゃんと仕事をしないであろうという、管理者目線の発想ですね。今はそういう理由をあげるのを避けているようです。不正直な人たちです。

 サマータイム同様「ドイツやフランスでは成果を挙げている」というのも理由になってるみたいですが、あっちでやっているのは主に学校休業日の分散化です。国民の祝祭日の休みを地域ごとに変えちまおうなんて恐ろしい話ではありません。フランスの革命記念日やドイツ統一の日は国民こぞって休み、祝日を祝います。
 だいたい、大人が年に30日も有給休暇をとれる国と比べられても困るんですよね。

投稿: 東部戦線 | 2010/03/04 13:11

東部戦線 さま
 休暇を分散することは、俺も賛成です。が、こんなことより、もっとちゃんと有給休暇を取得できるような方向に動くことが肝要であり、こんな、すでにある、その日であることに意味のある休みを無理矢理ひと月近くスライド取得させる法案は、役人が思考放棄したか考える力を元々持たない査証でしかないと思います。
 こんなくだらないことを5年もかけて考えてたんですから、この役人たち、もうここから先は一生、無給休暇で良いんじゃないですかねぇ。

投稿: 神北恵太 | 2010/03/05 00:27

 休暇スケジュールを平準化するために国民の休日をいじらねばならないということは、つまり国民がおもに祝祭日にしか休んでいないということです。すなわち有給休暇が少ない、あるいはあっても消化できないという現実を認めていることにほかなりません。
 それを改めようとすることもなく、さらに休日と祭日を分離しようとするのは要するに「休むな、働け」ってことなのかも。

投稿: 東部戦線 | 2010/03/09 00:57

東部戦線 さま
 そういえば昔、「うちは、完全週休二日制」と公言し、「だから、月〜金に祭日があった週は土曜出勤、だって、そうしないと完全週休二日にならないだろ!?」とむちゃくちゃな理論を振り回した、バカな会社がありましたねぇ。

投稿: 神北恵太 | 2010/03/10 08:07

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