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2010/06/16

『斬光のバーンエルラ』が面白いぞ

「――あいつの目当てはオレの剣だ。やっぱりオレが出ていく。おまえらは逃げろ」レーネディア・シャール

『斬光のバーンエルラ』穂村元 (MF文庫J 2010年4月30日発行 ¥580(税別))

 全ての文明の利器が、その動力をエルラ鉱に頼っている世界。バイヨン王国の片隅にあるエルラ鉱の採れる鉱山村デント。そのデント村に暮らす少年レネことレーネディア・シャールは、三年前にこの村にやって来た母一人子一人の流れ者。老母を養うため、大人達に混じって坑夫として働いていた。毎日毎日エルラ鉱を掘り出し、鉱山の管理官に計量して貰い、僅かな稼ぎを得る暮らしをしていた。
 しかし、そのレネの元を一人の女が訪ねた時から、彼の運命は一転する。女は、レネではなく「シャールという苗字の人」を探して来たのだ。
 嫌な予感がした。母の身を案じ、村へ飛んで帰るレネは、村の入口で歳若い行き倒れの少女を見つける。
 謎の女と行き倒れの少女。この二人の登場が、自分とバイヨン帝国、そしてこの世界の運命を大きく変えることになろうとは、その時のレネはまだ思いもしなかった。

 面白い。レネが持つバーンエルラの大剣を巡り、バイヨン王国の王子達が暗躍する中、常にマイペースの少年と、いろいろな経緯からその周りに集まる少女達。大ボケ天然主人公を取り囲むツンデレ・ヤンデレ・ドジッ娘・タカビー……、キャラクターのバリエーションは型通りだが、お話はかなり大きなものを感じさせる。
 中核メンバー紹介編となる村でのドタバタ、やみくもに旅立った主人公が己の出自を知り旅の大目標を定める最初の中ボス戦、物語を深めるためのヒロイン達の背負って来た人生や輪郭を徐々に見せてゆく第二の中ボス戦までが、この巻では描かれている。なんとも良く練られた構成であり、輪を描くようにして一つ一つの物語が大きなループとなり、テンポ良く流れてゆく。

 抑揚と抑制、会話と描写、静と動。言葉が、文章が、ストーリーが、とてもよいバランスで組み立てられており、どんどん読んで行ける。穂村元(ほむらはじめ)の筆、なかなかどうして、見事なものである。恐ろしき、注目に値する新人と言わざるを得まい。

 是非、読んでみていただきたい。ちゅうか、読め! 買え! ファンレターを書け! これは、書き継がれるべき物語だ。

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コメント

もう見ました、とても好きです

投稿: 同人誌 | 2011/02/18 11:00

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