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2011/02/19

書評 『《呪肉》の徴 グウィノール年代記1』だぞ

「トリナさまは私を助けて下さいました。ですから、今度は私がトリナさまをお助けする番です」メルグリナ・ディオレイド

『《呪肉》の徴 グウィノール年代記1』縞田理理(中央公論新社 Cノベルズファンタジア2010年11月25日発行 900円+税)

 人を初めとする動物、野菜等の植物など、ありとあらゆる生き物に「呪肉」と呼ばれる表皮の突然変異が多発しているダルモリカ公国は、二脚竜に乗る剣士達が守る中世の国だ。そして、中世期にありがちなこととして謎の奇病呪肉は忌み嫌われ、畸端検査官が呪肉を宿した作物・家畜を検査し、必要に応じて焼却を命じている。さらに不幸にして呪肉を宿した人に対しては畸端審問官が調べを行い、腕に呪肉があれば腕ごとの、足にあれば足ごとの切除などを厳しく行っていた。
 シャナキャスケルの都に住む下町の娘メルは、自らの身に憶えた違和感が呪肉ではないかという疑いを誰にも話せずに困っているところを、大公弟殿下の息女、うつけ姫と街で噂になっているアラストリナ・ハイマナシー公姫(トリナ)に救われた。恩義を感じたメルは、アラストリナのために身を捧げると決め、彼女の読み書きの師でもある街に住む没落豪士トレガー・ディオレイドの養女となり、公姫専属の侍女として王城に伺候する。

 まだ物語は始まったばかりだ。呪肉という、癌と人面瘡と伝染病を合わせたような魔術的な宿痾が動物にも植物にも取り憑く中世世界。街中で奇行に奔る信長の女版のような「うつけ姫」。下町育ちのしっかりものの娘。かつて呪肉絡みのことで家が没落したらしい剛直な豪士。呪肉とはまた違うらしい太古の遺跡の呪を受け、日々命を擦り減らし続ける冒険者。そして公位簒奪を企む公姉。謎の吟遊詩人。
 舞台と登場人物達が見えて来た物語は、公姉オルウィナの企みによって大きな転機を迎える。一族の中で唯一人、王城を抜け出すことに成功したアラストリナはメルの力を借りて、国を取り戻す旅に出ることを決意する。だが、公姉オルウィナが遣う異国から来た魔法師の手は、彼らのすぐ傍に迫っている。
 世界観がまずきっぱりと見通しがよいのは、縞田さんが根っこの分でSFモノだからであろうか。平明でストーリーを邪魔したりはしないが、かなりな量の我々の世界とは違う動植物があり、魔法や呪法が跳梁跋扈する。この世界観がきわめて豊穣、かつ心地よい。よい物語の舞台となる予感がする。トリナとメルの行く先々にまだまだ歴史やら習俗やら地理やら、生物やら技術やら、見知らぬ物がたくさん出てきそうで、楽しみだ。

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コメント

もう見ました、面白いですね

投稿: 武装錬金同人誌 | 2011/03/30 15:20

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