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2011/02/19

書評『博物戦艦アンヴェイル2 ケーマの白骨宮殿』だぞ

「おれはウルサールの道化だもの。なんでもしていい代わりに、何も持てないことになっている。お金も、家も、名誉もね」金鈴道化師ジェイミー・ティンクティキ

『博物戦艦アンヴェイル2 ケーマの白骨宮殿』小川一水(朝日新聞出版 朝日ノベルズ2010年11月30日発行 1000円+税)

 ラングラフ王ウルサールの命により、太古の博覧王メギオスの伝説を追って1万アクリートの彼方まで航海し、誰も知らなかった未知の土地を踏査し、伝説に語られたメギオス驚異「金毛氈」を王港レステルシーへと持ち帰った戦艦アンヴェイル。しかし、宿敵オノキア王国の軍艦ドレシェンガーとの相次ぐ戦闘の結果、ぼろぼろになったこの船は、帰還祝賀の祭にすら出せぬ酷い状態になっていた。
 冒険を成し遂げた艦長アルセーノ・ヘラルディーノ(アル)と、少女騎士ティセル・グンドラフ(テス)そしてジェイミー(ジャム)に国王ウルサールから次に与えられた命は、この艦の再建と、新たなるメギオス驚異を探し求める探検の旅だった。
 しかし、その再建は一筋縄ではいかず……。

 「博物戦艦アンヴェイル」シリーズの2巻目。実は、前作は「どうしても夏休み帰還に読みたくて」昨年8月まで待って読んだ。とても気持ちの良い、少年少女が周りと力を合わせて艱難辛苦を乗り越える冒険譚だった。
 しかし、続く2巻目はすぐには冒険の話へとは続かなかった。まずはお妃さまの命でテスとジャムが異国アンドゥーダナーの図書船テンユウ号におつかいに行き、続いてアルがヘラルディーノ家のドッグで艦を再建する。もちろんそれはそれぞれ一筋縄では行かず、彼らは安全な故郷の港町レステルシーの中で、それぞれ命がけの冒険をさせられる。
 この冒険を通じて、少しずつ小出しにされるこの世界の有り様がなかなか面白い。著者の頭の中には、もっと様々なこの世界では当たり前の生物や文化、そしてこの世界の人々にとっても常識の外にあるようなメギオス驚異が、まだまだ潤沢に詰まっているのだろう。じわじわと楽しんで行きたいシリーズだ。

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